進塁打とは、野球を少し詳しく知っている人でないと評価が難しい打撃ですよね。
素人目に見れば普通に凡打したような打席であっても、実は攻撃チームにとってとても大きな意味を持つアウトとなっていることがあるのです。
あえて進塁打を狙って打つ選手もいれば、ヒットを狙ったものの進塁打になって結果オーライというケースもあります。
実は、進塁打を確実に打てる選手は、レベルが高い野球であるほど評価が高いのです。
そこで今回は、進塁打の意味や犠打との違いについて解説していきます。
進塁打の意味とは
進塁打とは、ランナーがいる場面での打席で、自身は凡退したとしても走者を一つでも先の塁に進めることが出来た打撃のことを言います。
例えば、ノーアウトランナー2塁で、ボテボテのファーストゴロを打ったとしましょう。
結果的に打者走者が1塁で封殺されたとしても、セカンドランナーが3塁に進めていればそれは進塁打です。
野球において一流選手の基準は、打率3割ですよね。
3割ヒットを打てれば良い選手ですから、裏を返せばどんな選手でも7割近くは凡退してしまうわけです。
となると、一つでも先にランナーを進めて、少ないヒットでも効率よく得点を重ねることができる攻撃手段を選ぶ必要があるわけですね。
そこで、進塁打が重要になります。
特に連打が望めないようなエース級のピッチャーや、絶好調で味方打線が沈黙しているような試合展開では価値が高まると言えるでしょう。
フォアボールで出たランナーを進塁打で得点圏まで進めれば、ヒット1本のみで点が奪える可能性が出てきますからね。
進塁打を打つメリット
進塁打を確実に打てる選手は重宝されますが、犠打ではなく進塁打を作戦として選択するのにはどんなメリットがあるのでしょうか?
- ヒットの可能性も残る
- バッテリーに圧をかけられる
- フォアボールで出塁できる可能性もある
ヒットの可能性を残せる
進塁打は、基本的にヒッティングです。
多くの場合は1,2塁間を狙ったり、ライト方向を狙ったりするバッティングになります。
上手く鋭い打球が飛べば、野手の間を抜けてヒットになる可能性があるのです。
最初から送りバントを狙っている場合は、ほぼ打者自身が生きることを捨てています。
送りバントはアウト一つと引き換えに、確実に走者を進めようという作戦なのですね。
対して進塁打は、結果的に打者がアウトになっても走者が進んでいればOK
あわよくば、ヒットになったら最高という作戦です。
送りバントよりも、打者が走者として残れる可能性が上がるというわけですね。
バッテリーに圧力をかけられる
送りバントという作戦は、近年セイバーメトリクスなどで解析されているデータによれば、実は得点効率があまり良くない戦術だと言われています。
相手バッテリーからすれば、ひとまずアウトが一つもらえるということで安心感を与えてしまう場合もありますからね。
しかも、最初から送りバントだとわかっていれば、ピッチャーが初球からあえて送りバントしやすいボールを投げることもあります。
その方が、たった1球でワンアウトを稼げるので球数を節約できるのです。
相手守備陣からすれば、ランナーを進めようが、最終的にホームに生還させなければいいわけですからね。
形上はヒッティングを行う進塁打狙いなら、バッテリーも気を抜けません。
打つ前から進塁打だけを狙っている打者は少ないですし、基本的にはヒットを打つことを目標としています。
その中でライト方向に打つことで、最悪でも進塁打になるように心がけているだけなのです。
ということは、長打を打つ可能性も残されていますし、甘いボールであれば進塁打から強振に切り替えるかもしれません。
送りバントだとわかっているときと比べて、しっかり配球を考えて攻めなければならないのです。
四球での出塁の可能性
進塁打を狙うということは、普通に相手バッテリーとは真剣勝負です。
特に得点圏にランナーがいるときには、1本のヒットでも得点に結びつきます。
前の打席でヒットを打っているようなバッターなら、相手バッテリーもストライクゾーンとボールゾーンの際どいところを攻めることになるでしょう。
結果的にそれが四死球に繋がり、ランナーの進塁ではなく打者自身の出塁に繋がることもあるのです。
送りバントだと明らかな場面では、あえて無理に攻めることも少ないでしょう。
それよりも少ない球数でバントをさせて、アウトカウントを稼いだ方が守備側にメリットがあると考えられるのです。
進塁打を狙うデメリット
進塁打ではなく犠打の方が望ましい場面もありますが、進塁打にはどんなデメリットが隠されているのでしょうか?
- 併殺打のリスクも高い
- 三振になってしまうことも
- ライナーやフライのリスク
併殺打のリスク
進塁打で強攻策を取ることで、速い打球が飛んで併殺打になるリスクがあります。
ランナー1塁の場面であれば、鋭い打球を内野手に捕球されると余裕でゲッツーです。
ランナー2塁の場面でも、ショート付近に球足の速いゴロが飛び、ショートが捕球した後そのままランナーにタッチされるというリスクもあります。
犠打であれば、キャッチャーやピッチャーに捕球させるので、内野ゴロよりも併殺打のリスクは低いと言えるでしょう。
三振のリスク
バントの構えとヒッティングであれば、やはりヒッティングで通常通りスイングする方が三振のリスクが高いと言えます。
進塁打を狙うということは、相手バッテリーは本気で抑えに来るはずです。
際どいコースへのリードも増え、あからさまな送りバントのときと違って三振のリスクが増えるわけですね。
もちろん犠打にもスリーバント失敗のリスクがデメリットとしてありますが、スイングよりもコントロールしやすいのには変わりありません。
ライナーやフライのリスク
進塁打を狙ってヒッティングをすることで、痛烈なライナーや内野フライになってしまうというリスクもあります。
内野へのライナーになってしまえば、飛び出したランナーが戻り切れずに併殺打になってしまうというのがデメリットです。
また、内野フライになってしまうとただ単にワンアウト積み重なるだけの結果になってしまいます。
深い外野フライであれば、まだタッチアップによる進塁の可能性もあるでしょう。
バントは小フライになっても内野手の前に落ちる可能性があります。
やはり、確実性という点で犠打の方が優位な作戦だと言えるでしょう。
進塁打と犠打の違い
進塁打と犠打は、結果として出来上がる状況は同じでも、その内容や意味合いは大きく異なります。
進塁打は、記録上はあくまでも打者の凡退という扱いです。
打者がアウトになったものの、結果的に塁にいた走者は一つ先の塁に進むことができたという結果を進塁打と表現します。
一方で犠打(送りバント)は、スコアの上でも打者は凡退の扱いにはなりません。
犠打は打数にはカウントされないので、打者自身がアウトになったとしても走者が進んでいれば打率が下がることは無いのです。
やはり、記録上の扱いの違いが、進塁打と犠打の最も大きな違いと言えるでしょう。
進塁打と送りバントはどちらが良い?
進塁打と送りバントは、バッターの特徴やイニング、試合展開によってもどちらが適した選択になるのか変わってきます。
一般的に進塁打を選んだ方が良い場面と、送りバントを選んだ方が良い場面の条件を整理しておきましょう。
進塁打の方が良い場面
- バッターの打率が高い
- その日の調子が良い打者
- バントが下手な打者
- ランナーの足が遅い
- ピッチャーとキャッチャーのフィールディングが良い
特にバッターにヒットを期待できるケースでは、最低でも進塁打というつもりでヒッティングを選択した方が良いでしょう。
打率が高い選手や、長打が期待できる選手、その日前の打席までにヒットを打っている選手などはヒッティングの方が良いです。
あえてバントをさせて、楽々1アウトを与えてしまうことはありませんからね。
また、そもそもバントが下手な選手には打たせた方が進塁の確率も高いと言えます。
ランナーの足が遅いときも、ヒッティングでゴロを狙った方が打球判断がしやすいのでスタートが切りやすいです。
バントだと、わずかにフライが上がったときにスタートが遅れる可能性がありますからね。
あとは守備陣のスキルによっても状況は変わり、とくにピッチャーやキャッチャーのフィールディングや肩が良い場合はヒッティングの方が良いでしょう。
送りバントの方が良い場面
- 打者の打率が低い
- 相手ピッチャーの調子が良い
- ロースコアで均衡した試合の終盤
- サヨナラのチャンス
打者にヒットがあまり期待できない場面では、同じアウトになるなら送りバントでランナーを進めた方が良いという考え方になります。
打者の打率が低いときや、相手ピッチャーの調子が良くてほとんど味方がヒットを打てていないときなどです。
その試合でたった1本しかヒットが出なかったとしても、その一本がタイムリーヒットなら勝てる可能性が出てきますからね。
また、ロースコアで僅差のまま終盤に突入したときも同様です。
打順が上位に回るというときには、とにかくランナーを得点圏に進めてタイムリーに期待をかけた方が良いでしょう。
出たランナーがサヨナラのランナーの場合、何よりも確実に進塁させるために送りバントを選択するのもアリです。
まとめ:進塁打は評価が難しい
進塁打は、記録上はただの凡打と同じです。
そのため、野球にそこまで詳しくない方や、スコアだけを追っている方にとっては評価がしにくいところですよね。
しかし、チーム内で進塁打の価値が共有されていれば、その選手の評価は上がります。
レベルの高い野球になればなるほど、また、相手ピッチャーが優れていればいるほど進塁打の価値も上がるというものです。
野球を奥深く楽しむためには、進塁打の価値をチーム全体で共有することが大切ですね。