野球で一つ頭を悩ませることと言えば、打順の組み方です。
打順の決め方は日本では昔から、4番打者が最強で、1番打者は足が速いなどある程度セオリーがありました。
しかし近年では、メジャーリーグを中心に「2番打者最強説」が広がっており、打順の決め方にも大きな変化が訪れています。
そこで今回は、野球における打順の意味や役割、その決め方について解説していきましょう。
プロ野球やメジャーリーグと、少年野球や中学野球ではチーム状況が異なるので、打順の決め方も少し変えた方が良いかもしれませんね。
各打順の意味と役割
野球は「打線」と表現されるように、全員がホームランばかりを狙っていても勝てません。
なぜなら、一流の打者ですら打率は3割程度であり、残りの7割は凡退するということが前提だからです。
アウトになっても一つ先の塁にランナーを進めたり、チームとして少ないヒットでもいかに効率よく得点できるかが打順のカギになってきます。
まずは、各打順に与えられる大まかな意味や役割を確認していきましょう。
1番打者の役割
- ピッチャーに球数を投げさせる
- 出塁する
- チームに勢いをつける
1番打者は、その試合で最初に打席に入る選手です。
初回の先頭バッターとして必ず打順が来るので、まずは相手ピッチャーのその日の調子を確認するという役割があります。
そのためには、なるべく多くの球数を相手投手に投げさせ、なおかつ多くの変化球を投げてくるように粘ることができたら素晴らしいです。
そして最高の結果としては、ヒットでも四死球でも良いので出塁することでしょう。
また、何度も対戦している投手など、チーム状況によっては果敢に打っていく姿勢も求められます。
1番打者が鋭いスイングを見せると、相手バッテリーも打線全体を警戒して攻めなければなりません。
それだけ神経をすり減らすことになるので、スタミナの消耗も早くなるでしょう。
2番打者の役割
- ランナーを進塁させる
- チャンスメイクする
- 球数を多く投げさせる
昔からあるセオリーでは、2番打者は出たランナーを進塁させることが求められます。
足の速い1番打者が塁にいる場合、盗塁のアシストや進塁打などでチャンスメイクをするバッターが典型的な2番打者でした。
また、1番打者同様に、相手ピッチャーに球数を多く投げさせることも役割です。
多くの球種を引き出して、味方ベンチに投手の調子を伝えることが出来れば素晴らしいですよね。
ただ、近年ではメジャーリーグを中心に2番打者に強打者を置く風潮も出てきました。
セイバーメトリクスによって、得点効率が最も高い打順の組み方も変わってきているのですね。
3番打者の役割
- ランナーをホームに還す
- チャンスを広げる
3番打者に求められる大きな役割は、ポイントゲッターになることとチャンスを拡大することです。
セオリーでいえば、1,2番で作ったチャンスをものにする打撃力が求められます。
自信で得点を挙げられなかったとしても、後続の打者に確実にチャンスの状態で繋げるのが最低限の仕事です。
少し前から、3番打者最強論というのも定説の一つとして野球界にはありました。
4番打者の役割
- 打点を挙げる
- チャンスでの一打
4番に求められるのは、高い打率よりもチャンスでの勝負強さです。
三振が多くても、打率が低くても、打点が多ければ良いという風潮があるのが4番打者でもあります。
昔から野球界では4番打者はチームで最もパワーがある選手が務めるという相場があり、今でもその考え方は根強いです。
5番打者の役割
- チャンスでの一打
- 4番打者の援護
5番打者も、4番と同様にパワーがあり一発のあるバッターを置くことが多いです。
4番打者が返し切れなかったランナーを一掃するような長打力があると、そのチームの打線は強いでしょうね。
また、5番打者に長打力があることで、相手バッテリーはどうしても4番打者と勝負しなければなりません。
その結果、チームで最もパワーのある4番打者の勝負強さが活かせるわけですね。
6番打者の役割
- チャンスメイクをする
- 球数を多く投げさせる
3,4,5番のいわゆるクリーンナップが返し切れなかったランナーを生還させる役割と、自らチャンスメイクをする役割が求められます。
クリーンナップほどの長打力は無くとも、出塁すれば盗塁も警戒しなければならない程度の走力があると望ましいです。
チームによっては、「第二の1番打者」としての役割になります。
7番打者の役割
- 自由に打てると言われる打順でもある
- 犠打の上手さよりは打率が残せる方が良い
7番打者は、下位打線に入っていく打順です。
特にプロ野球では、これから主軸に成長していくことを期待したい若手などが7番に置かれることも多いでしょう。
比較的制約がなく、自由に打てる打順でもあります。
8番打者の役割
- ランナーを進塁させる
- 球数を多く投げさせる
8番打者は、プロ野球でも少年野球でも、打力があまり無いバッターが置かれることが多いです。
バッティングに比重をおいていないピッチャーや、守備面での貢献度と負担が大きいキャッチャーが務めることも多いでしょう。
ランナーがいれば、最低限ランナーを進塁させる打撃が求められます。
また、球数を多く投げさせて上位打線に回す前にスタミナを削る役割が担えたら、得点の期待値も上がるはずです。
9番打者の役割
- 上位打線にチャンスで回す
- 進塁打で繋ぐ
もちろんヒットが打てれば一番良いのですが、基本的には上位打線の方が打力がある並びになるはずです。
一流選手でも3割しかヒットが打てないと考えれば、いかにランナーを一つでも先の塁に進めて上位打線に繋ぐことができるかが9番打者の役割になります。
打順の決め方
各打順の役割に当てはめて、どういった選手を起用すればいいのでしょうか?
打順の決め方について、基本的な考え方をご紹介していきます。
足の速い選手
足の速い選手は、1番や2番といった上位打線に配置するのが適しているでしょう。
出塁することで盗塁も狙えますし、綺麗なクリーンヒットだけでなく内野安打で出塁できる可能性も高いという特徴を持った選手です。
このような足が使える選手は、上位打線に置いてチャンスの拡大を狙うのが良いです。
ランナー2塁で浅い位置に飛んだヒットでも、足の速い選手だったらそのヒット一本でホームまで帰ってこられます。
塁に出てくれれば攻撃の幅も広がるので、相手守備陣を混乱させることができるでしょう。
打率(出塁率)が高い選手
打率が高い選手というのは、簡単に言えば打力のある選手です。
このような選手は、1,2,3番の上位打線において打席が回る機会を少しでも多くした方が良いでしょう。
野球は高くても3割しかヒットが打てないのですから、いかに出塁する回数を増やせるかが得点増のカギです。
チーム内でもトップクラスの打撃技術を持った選手には、たくさんバッターボックスに立ってもらいましょう。
その中でも、長打力のある選手は3番もしくは4番などいわゆるクリーンナップと呼ばれる打順が適しています。
パワー(長打力)のある選手
チームで最もパワーのある選手は、4番や5番といった打順が適しているでしょう。
この打順は、塁上のランナーを一つでも先に進めるというよりも、打点を挙げることが最も求められる仕事です。
上位打線で作ったチャンスを、勝負強さで物に出来る選手が4番や5番を打ってほしいですよね。
パワーもあって打率も高い選手は、3番もしくは2番が適しています。
パワーがあるけど三振も多くて打率があまり高く無いという選手は、5番や6番あたりも良いでしょう。
守備の負担が大きい選手
野球は9人が長所や短所を補いつつ、チームとして最終的に得点が多い方が勝つスポーツです。
その特性上、打率を求められているわけではなく、堅実な守備の方を比重高く求められている選手もいます。
ポジションでいえば、キャッチャーは守備の負担が大きい代表ですね。
プロ野球でも、キャッチャーは8番や9番など下位打線に座っていることが多い傾向があります。
後はセンターラインと呼ばれる、ショートやセカンド、センターのポジションも守備の負担が大きいです。
ただ、センターラインはいわゆる「野球の上手いヤツ」が守ることが多いポジションでもあるので、打撃にも秀でている選手も多いかもしれません。
その場合は、上位打線を打ってもらいましょう。
ただ、キャッチャーだけは守備の負担が段違いなので、攻撃よりも守備での貢献を優先して7番以降の下位打線に配置した方が良い場合が多いです。
自由に打たせたい選手
バッティングセンスがあって、経験を積めばレベルの高いバッターになっていきそうだと感じさせる選手には、現状の力によっては6番や7番あたりが良いかもしれません。
1番や2番と違って、打順として求められる人物像に制約が無いので自由に打てる打順でもあります。
プロ野球では、若い選手でまだあまり経験が無いが、バッティングについて非凡な才能を持っているという選手が務めることが多い打順です。
もちろんランナーの状況によっては、ただ大振りするだけでなく最低でも進塁打が必要な場面もあるでしょう。
ただ基本的には小技を求めるのではなく、どんどん振っていってほしいという選手には6番や7番は良い打順です。
小技が上手い選手
バントや流し打ち、狙って打つ進塁打など小技が上手い選手に適した打順というのもあります。
それは、1,2番といった上位打線や、8,9番といった打線の終盤です。
基本的にはチャンスの拡大という役割を担う選手なので、後ろに打力のあるバッターがいる打順が望ましいと考えられます。
アウトカウントが増えても、得点圏にランナーを置いた状態で主軸に回すことができるバッターは重要です。
クリーンナップの調子が良い時などは、1,2番でチャンスメイクの役割を任せた方が良いでしょう。
打順のセオリーとは?
打順には、ある意味で正解がありません。
その時のバッターの調子や、相手ピッチャーとの兼ね合いで最適だと考えられる打順は変わってきます。
また、必ず1番打者から始まることが確約されているのは初回だけで、2回以降は何番から始まるのかもわかりません。
ですから、必ずしも打順の役割や意図通りに攻撃が出来るわけではないのです。
それも踏まえて、野球界に昔からある打順に関するセオリーをご紹介していきましょう。
- 1番は足の速い打者
- 2番打者最強説
- ジグザグ打線
- 打力のある選手から順番に並べる
一つずつ詳しく解説していきますので、打順を考える際の参考にしてみてください。
1番打者は俊足
これはどのチームにも共通して言えるセオリーではないでしょうか。
1番バッターは最も多く打順が回ってきます。
そのため、出塁するチャンスも多いわけですよね。
塁に出たら、俊足の選手なら盗塁が狙えます。
また、次打者が内野ゴロを打っても封殺されずに塁に残ることができるのも俊足選手の強みです。
たった一本のヒットでホームまで帰ってこられる可能性を広げるためには、やはり俊足な選手に数多く塁に出てもらった方が良いですからね。
これはいつの時代も、定説となっているかもしれません。
2番打者最強説
つい数年前までは、3番打者や4番打者にチームの最強バッターを置くのが当たり前でした。
今でもそれは変わりませんが、この数年でメジャーリーグを中心に「2番打者最強説」が浸透しています。
今までは、チームで最も打力のある選手を3,4,5番のクリーンナップに配置するのが打順のセオリーでした。
しかし、2番打者にチームで最も打力のある選手を配置することで、得点効率が最大化するというデータが出ているのです。
これは、2番打者なら打席が回る機会が多いということと、下位打線から1番バッターが作ったチャンスの場面で打席に入れるというメリットを生かした打順です。
最強のバッターに必ず初回の打順が回るというのもメリットで、相手バッテリーにとっては嫌なものですよね。
日本でも徐々に採用するチームが増えていますし、これからの打順の組み方としてはスタンダードな考え方になるかもしれません。
ジグザグ打線
打力や役割も当然加味しますが、右打ちと左打ちを交互に並べる打線を作戦として採用する監督もいます。
これは相手投手や捕手の配球、さらには相手守備陣のリズムを崩すことが目的です。
一般的には右投手対右バッター、左投手対左バッターというマッチアップは、ピッチャーが有利であると言われています。
そのため、打線を左右ジグザグに組むことで、相手にテンポの良い守備をさせないという狙いがあるわけですね。
打力のある選手から順に
これは、少年野球や中学野球などでたまに見られる打順の組み方です。
チーム全体のレベルがあまり高くない場合に、とにかく打力のある選手から順番に1番から9番まで並べるという組み方もあります。
この狙いは、打力の高い選手になるべく多くの打席を回すという意図です。
1番打者が最も警戒すべきバッターになるので、下位打線が出塁することができれば得点の期待も高まります。
まとめ:良いバッターは上位に
打順の決め方には様々な理論やセオリーがありますが、共通しているのは良いバッターほど上位打線に置くということです。
試合の中で多く打席が回ってくる打順に良いバッターを置けば、それだけ出塁数も増えますからね。
ただ、試合展開の中で状況に応じて求められるバッティングは変わってくるので、何番打者だから必ず「この働きをしなければならない」という決まりはありません。
いかにランナーを一つでも先の塁に進められるのか、考えながら攻撃していくことが大切ですね。