メジャーリーグの中継を見ていると、バックネット裏やセンター方向に大きなカウントダウンの数字が表示されていることに気づきます。これがピッチクロックです。
2023年にMLBで導入されてから試合のテンポは大きく変わり、2026年のWBCでも採用されました。さらに日本のプロ野球(NPB)でも、2026年8月に将来の導入が決まっています。
この記事では、ピッチクロックの基本ルール(秒数・違反したときのペナルティ)から、牽制の回数制限、導入でどう野球が変わったか、そしてNPBでの導入状況までをまとめて解説します。
ピッチクロックとは?
ピッチクロックとは、投手が投球するまでの時間を時計で計り、制限時間を過ぎたら罰則を科すルールです。英語では「Pitch Timer(ピッチタイマー)」とも呼ばれます。
もともと公認野球規則にも、走者がいないときは投手がボールを受け取ってから12秒以内に投球しなければならない、という決まりがあります(公認野球規則5.07(c))。ただ、実際の試合では厳密に計測されることが少なく、投球間隔の長さが試合時間を延ばす大きな原因になっていました。
そこでMLBは、球場に時計を設置して誰の目にも見える形で秒数を計る仕組みを2023年シーズンから導入しました。マイナーリーグで数年かけて試験を重ねたうえでの本格導入です。
ピッチクロックの基本ルール

ここからは、MLBで運用されているルールを中心に解説します(2026年10月現在)。
投球までの秒数
投手は、ボールを受け取ってから次の秒数以内に投球動作を始めなければなりません。
| 場面 | 制限時間 |
|---|---|
| 走者なし | 15秒 |
| 走者あり | 18秒(2023年は20秒、2024年から短縮) |
| 打者が交代するとき(打者間) | 30秒 |
走者ありの秒数は、導入1年目の2023年は20秒でしたが、2024年から18秒に短くなりました。古い解説記事では20秒と書かれていることがあるので注意してください。
打者にも「8秒ルール」がある
ピッチクロックは投手だけのルールではありません。打者は、時計が残り8秒になるまでに打席に入り、投手に注意を向けて打てる状態になっていなければなりません。
打席を外して長くバッティンググローブを直す、といった間の取り方はできなくなりました。また、打者が試合中にタイムを要求できるのは1打席につき1回までです。
違反したときのペナルティ
違反したときの罰則はシンプルです。
- 投手が時間内に投球動作を始めなかった → 自動的に1ボール
- 打者が残り8秒までに準備できていなかった → 自動的に1ストライク
3ボールの場面で投手が違反すれば、そのまま四球になります。逆に2ストライクで打者が違反すれば、1球も投げずに三振です。実際にMLBでは、ピッチクロック違反による「投球なしの三振」が話題になったこともあります。
牽制・プレートを外す回数の制限
ピッチクロックと同時に導入されたのが、ディスエンゲージメント(投手板を外す行為)の回数制限です。
ディスエンゲージメントとは、次のような行為をまとめた呼び方です。
- 走者がいる塁への牽制球
- 投手が投手板から足を外す
- 投手板から外したように見せる動き
これらは1打席につき2回までしか認められません。そして3回目に牽制をした場合、走者をアウトにできなければボークとなり、走者は1つずつ進塁します。
ただし、打席の途中で走者が進塁した場合は、この回数がリセットされます。
牽制を何度も繰り返して時間をかけることができなくなったため、走者は大きなリードを取りやすくなりました。ボークそのもののルールについては、野球のピッチャーのボークとは?その種類や意味、牽制のルールを解説で詳しく解説しています。
ピッチクロック導入で野球はどう変わった?
試合時間が大幅に短くなった
最も大きな変化は試合時間です。MLBでは導入前の2022年に平均3時間を超えていた9イニングの試合時間が、2023年には2時間40分前後まで短くなりました。20分以上の短縮です。
プレーそのものが減ったわけではなく、「投球と投球の間の待ち時間」が削られた結果です。
盗塁が増えた
2023年のMLBでは、牽制の回数制限とベースの大型化(1辺15インチから18インチへ)が同時に行われたこともあり、盗塁の数が大きく増えました。足の速い選手の価値が上がり、試合の中で走者が動く場面が増えたのも、ピッチクロック時代の特徴です。
投手は「間」で勝負しにくくなった
一方で、投手にとっては負担が増えたという声もあります。間合いを取って打者のタイミングを外す、一球ごとに呼吸を整える、といった駆け引きがしにくくなったからです。
捕手とのサイン交換を素早く行うために、MLBでは電子機器でサインを伝えるピッチコムも広く使われるようになりました。
WBCとNPBでの導入状況(2026年10月現在)
WBC 2026では採用された
2026年3月に行われたWBCでは、MLBと同じ走者なし15秒・走者あり18秒のピッチクロックが採用されました。打者に対する8秒ルールも同様です。
ふだんピッチクロックのない環境でプレーしている日本の選手にとっては、国際大会ならではの対応が求められる大会になりました。
NPBでは「将来の導入」が決定
日本のプロ野球では、2026年8月3日にNPBと12球団による実行委員会が、ピッチクロックの将来的な導入を全会一致で決めました。それに先立つ7月には、日本プロ野球選手会も導入を認める方針を固めています。
ただし、2026年10月現在、一軍での導入時期は決まっていません。球場への時計の設置や、機器を操作する担当者の確保に時間がかかるためです。秒数をMLBと同じにするかどうかも、今後の協議で決まります。
NPBは導入の目的について、試合時間の短縮よりも、国際大会などで使われているルールに合わせる「国際化」の流れだと説明しています。
まとめ
ピッチクロックのポイントを整理します。
- 投手は走者なし15秒・走者あり18秒以内に投球動作を始める(MLB)
- 投手が違反すると1ボール、打者が残り8秒までに準備できないと1ストライク
- 牽制やプレート外しは1打席2回まで。3回目で走者を刺せなければボーク
- MLBでは試合時間が20分以上短くなり、盗塁も増えた
- WBC 2026で採用。NPBは将来の導入が決まったが、時期は未定(2026年10月現在)
NPBで導入されれば、日本の野球観戦の体験も大きく変わるはずです。導入時期や秒数が正式に決まったら、この記事でも追記していきます。
ほかの野球用語やルールについては、野球用語集|打撃・守備・投球・走塁・ルールの用語をまとめて解説もあわせてご覧ください。





