野球のバッティングには、全ての人に共通する正解がありません。
その人の体格や筋力、プレースタイルによって、打撃フォームや理論が全くことなるのです。
様々なバッティング理論がある中で異質な存在と言えるのが、「ツイスト打法」という打ち方。
近年では、読売ジャイアンツの阿部慎之助選手や、広島東洋カープから巨人に移籍した丸佳浩選手などが代表的です。
ツイスト打法や一般的なバッティングフォームとは決定的に違う部分があるので、今回はその詳細について解説していきましょう。
ツイスト打法を習得するための練習方法なども併せてご覧ください。
ツイスト打法とは
ツイスト打法とは、「インパクトの瞬間に腰を逆に回転させる」というイメージで打つ方法です。
通常の一般的な打撃フォームの場合、スイングした方向にそのまま腰が一緒に回るはずです。
むしろ下半身や腰を一気に回転させることで、上半身も連動させてコマのように回転してバットをスイングしているはずなのです。
通常はこんな感じ
しかしツイスト打法は、振り出した方向に回転していった腰が、インパクトの瞬間にギュっと止まります。
イメージとしては、上半身と下半身を逆に回転させるような形です。
上半身と下半身が逆に動く筋肉の収縮力を利用して、力強いスイングに繋げていくのがツイスト打法の基本になります。
一見するだけで分かるように、素人がいきなり挑戦してすぐヒットやホームランを打てるような打法ではありません。
しかし通算406本塁打を放った阿部慎之助選手や、2年連続でセリーグMVPに輝く成績を残した丸佳浩選手などが取り入れていることで、実は理にかなった打撃理論であることが話題となりました。
自分の打撃技術をもう一段階アップさせたいという方は、もしかしたらツイスト打法が転機になるかもしれません。
ツイスト打法の練習方法
ツイスト打法を習得するには、まず動画などでそのイメージを固めておいた方が良いです。
その上で、実際にバットを持ってスイングすることでフォームを固めていきます。
ツイスト打法を習得するのに適した練習方法を3つご紹介していきましょう。
ティーバッティング
まずフォーム固めに最適なのが、ティーバッティングです。
下からトスしてもらったボールをネットに打ち込むのですが、この時に、打球の質はそれほど気にしなくて大丈夫です。
特にツイスト打法に初めて取り組む際は、まずイメージした通りに身体が動かせるかが大切になります。
近距離のネットに力強い打球を飛ばせるかどうかというのは、あまり重要ではありません。
しかも、ティーバッティング程度の距離だと、低い弾道のライナーで飛んだ打球を「良い打球」と勘違いしてしまう恐れもあります。
実際ティーのネットが無ければ、セカンドゴロやショートゴロになっているような打球でも、ティーバッティングではヒット性の当たりに思えてしまうのです。
むしろ少しフライを上げるくらいのイメージで、ツイスト打法の腰の動きを意識しながら繰り返しスイングしていきましょう。
ロングティー
ロングティーは、ティーバッティングのネットが無いバージョンだと思ってください。
上記の記事でも解説していますが、ロングティーの目的は「遠くに飛ばす感覚を養う」ということです。
まずはティーバッティングでツイスト打法のスイングを形作り、その上でロングティーを行えば、より強い打球を打つための実践的な取り組みが出来ます。
下からボールをトスされること以外は、実際のバッターボックスの感覚に近いので、理にかなった身体の使い方が出来ているのか確認ができるでしょう。
ツイスト打法とそうでない今まで通りの打ち方で飛距離を比べてみて、どちらの方が自分にしっくりくるのか体感する機会にもなりそうです。
体格が大きくなくても、しっかりバットに力が伝わっていれば、ホームベースからロングティーでもホームランが打てるようになりますよ!
ファール打ち練習
マシン打撃や、実際の投手に投げてもらうフリーバッティングなどで、捕手方向や流し方向へのファールを打つ練習も効果的です。
ツイスト打法は、スイングしたときに投手側の肩が早く開きすぎるのを抑えるためのフォームでもあります。
狙ってファールを打とうと思ったら、身体の開きが早すぎるとバットコントロールが上手くいきません。
あえてファールを打つ練習で、腰の開きを抑えて打つ感覚を養うのです。
数球ファールをあえて打ち、その後通常のフリーバッティングやマシン打撃に取り組むという流れになります。
これは、現役時代もツイスト打法を取り入れていた阿部慎之助選手が実際に行っていた練習方法として有名です。
ツイスト打法の理論
ツイスト打法でなぜ飛距離がアップしたり、逆方向の流し打ちで強い打球が飛ぶのでしょうか?
その大きな理由は、「力のロスが軽減できる」というポイントにあります。
通常のバッティングフォームでは、例えば左打者の場合、
腰や下半身を右方向に回転させつつ、それについていく形で上半身も連動させてバットを振ります。
ところが、右腰の開きや右肩が開いてくるタイミングが早すぎると、バットが置いていかれてヘッドが走らないという事態に陥るわけです。
腰と下半身だけ回転して、上半身が全くついてこないイメージです。
しかしツイスト打法なら、右腰の開きを止めることで、筋肉の収縮力を利用して上半身を素早く回転させることが出来ます。
慣性の法則のようなもので、車に乗っていて急ブレーキがかかると、車は止まっても身体が前に引っ張られますよね?
それと同じで、右回転方向に進んでいた腰が急に止まるこで、その上に載っている上半身が自然と一気に引っ張り出されてくる感覚です。
そのため、腕力だけに頼らなくてもタイミングよくツイストが出来ていれば、力強く鋭いスイングが出来るということですね。
ツイスト打法のメリットデメリット
ツイスト打法を習得している阿部慎之助選手や丸佳浩は、プロ野球の中でもトップレベルの成績を残している二人です。
ツイスト打法をモノにできると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ツイスト打法のメリット
- ボールを長く見られる
- 緩急に崩されにくい
- 逆方向に強い打球が打てる
ツイスト打法がしっかり身についていると、身体を開かずに打てるのでピッチャーが投げたボールを長く見ることが出来ます。
必然的に打つポイントが近くなるので、手元に引き付けてバットとボールを合わせることになるのです。
ピッチャーのボールを見極める時間が長く取れれば、それだけボールにバットを当てられる確率も高まります。
また、ポイントを前で捉えなくていいので、ボール球をしっかり見極める選球眼の向上にも繋がるでしょう。
さらに、それは緩急への対応力向上にも直結します。
緩急とは、遅いボールと速いボールの組み合わせで攻める配球のことですが、バッターにとっては緩急を上手く使われるのが一番厄介です。
遅いボールの直後に速いボールを見せられると、140㎞も150㎞に感じてしまいます。
ツイスト打法が身についていれば、手元まで引き付けて打つことになるので、緩いボールに対して身体が崩されにくくなるのです。
逆方向にもしっかり力が伝わったスイング軌道になるので、流し打ちでもホームランを打てるような、ヒットゾーンの広い打者になるでしょうね。
ツイスト打法のデメリット
ツイスト打法はメリットが大きい反面、まだ多くの人が取り入れているわけではないという現状からも分かるように、デメリットもあります。
- 身体に負担がかかる
- スイングスピードが無いと成り立たない
普通にバットをスイングしようとすれば、右打者なら左回転、左打者なら右回転で腰が回るはずです。
ツイスト打法はその動きと異なるので、身体への負担が大きいです。
上半身が回ろうとする力を、腰の動きを止めることで加速させるわけですからね。
まだ身体が出来きっていない小学生や中学生の段階でツイスト打法を意識しすぎると、腰骨に負担が集中してしまう可能性もあります。
また、ツイスト打法を行うには、そもそもスイングスピードがある程度備わっていないと成り立ちません。
まずは素振りなども含めてバットを振る力を付け、その上で応用編としてツイスト打法を習得していくような流れが良いでしょう。
ツイスト打法を上手く使いこなせれば、身体が小さくでも大きな打球を打てるようになります
ツイスト打法の代表選手
実際にツイスト打法を意識的に取り入れて成功しているプロ野球選手を見てみましょう。
阿部慎之助
読売ジャイアンツ一筋で、通算400本のホームランと2000本安打を達成した大打者です。
守備の負担が格段に大きいキャッチャーというポジションでありながら、バッティングでも首位打者を獲得するなど突出した技術を持っていました。
この選手から、ツイスト打法が世に広く知れ渡ることになったといっても過言ではありません。
丸佳浩
2020年の現役選手でツイスト打法の一番の使い手と言えば、丸佳浩選手です。
顔と打球方向がまるで一致していない、ノールックのホームランはとても話題になりました。
シーズン中の不調も、ツイスト打法を取り入れることで脱却したという話もあります。
ツイスト打法の連続写真
ツイスト打法をより細かく知るために、写真でも確認しておきましょう。
この丸選手のスイングを見ると分かる通り、左の二つの部分で特にツイスト打法の動きが伝わってきます。
右回転していた腰が、バットを振り切った後に戻ってくるような動きになっているのです。
これがまさにツイスト打法で、その中でもかなり極端な例でしょう。
まずはこのくらい明らかに変化をつけてみて、身体にスイングのやり方を染み込ませることも大切ですね。
まとめ:ツイスト打法を練習してみよう
ツイスト打法は、真似してすぐに試合で使えるような打法ではありません。
ほとんどの人が今までとは違う打ち方になるはずなので、練習を重ねて習得することが大切です。
バッティングでスランプに陥る大きな原因である「身体の開き」を抑えるにはうってつけの打法なので、特に左バッターにはぜひオススメの打法となります。
素振りレベルから、一度試してみてくださいね。