防御率とは、投手成績の一つで、大まかに見てそのピッチャーがどれだけ優れているかを評価するときに使います。
特にひと昔前のプロ野球では、投手の能力は防御率が絶対的な値として見られていた時代でした。
しかし近年では、セイバーメトリクスなどで様々な指標が誕生し、単純に防御率だけでは純粋な投手の力量を計ることは出来ないとされています。
それでも今なお重要視されている防御率について、その計算方法や評価の目安についても解説していきましょう。
防御率とは
防御率を簡単に言うと「その投手が9イニングを投げたときに、何点取られるか?」というのを表した数値です。
防御率の計算式は
自責点×9÷投球回数=防御率
という形に数字を当てはめることで求められます。
ただし、これは防御率の言葉が表す定義を忠実に数式に直した場合であり、現在はより実用的な評価ができる計算式に改定され、
防御率 = (自責点 × 9 × 3) ÷ (投球回 × 3)
で計算して公式記録が発表されています。
従って、もしそのピッチャーがまだ9イニングを投げていなかったとしても、1つのアウトでも取得していれば防御率を求めることが可能です。
1つのアウトは3分の1と表現するので、もし先発ピッチャーが6回ツーアウトまで投げたとしたら、投球回数は「6回2/3」ということになります。
防御率が「高い」とか「低い」と言い表すことがありますが、数字が低いほど優秀な防御率ということです。
ただ、アマチュア野球の場合は9イニング制ではなく7イニング制のところもあります。
例えば少年野球は、1試合が7イニングです。
この場合、防御率としては自責点に9をかけてから投球回数を割って導きだしますが、より正確な値を調べるには9ではなく7をかけた方が良いかもしれません。
また、アウトを一つも取れずに失点してしまった投手の防御率は求められないため、「無限大∞」で表記することになっています。
実際の数値は、小数点以下第二位まで表記するのが通例です。
防御率の目安
防御率はどのくらいの数値であれば、一流とみなすことができるのでしょうか?
実際には、先発投手とリリーフピッチャーでは少し評価基準が違います。
先発投手の防御率
先発投手の場合、最低でも3点台前半の防御率は欲しいところ。
ちなみに、各防御率のイメージを整理してみると
- 1点台 → 難攻不落のスーパーエース
- 2点台前半 → かなり優秀なエースピッチャー
- 2点台後半 → エース格を名乗れる十分な成績
- 3点台前半 → 先発投手としては優秀な部類
- 3点台後半 → このくらいは最低でも期待したい数字
- 4点台 → プロであれば、1軍と2軍の境目
- 5点台 → プロ野球選手であれば2軍レベル
という形になります。
防御率が1点台の投手というのは、イメージ的にほとんど点を取られない印象になります。
プロ球団でも、その時代の球界を代表するような投手が防御率1点台を記録しているはずです。
ちなみに高校野球でも、夏の甲子園に出場するようなチームは、地方予選を通して防御率2点台以内でまとめられている投手陣が多くなっています。
リリーフピッチャーの防御率
中継ぎ投手の場合は、先発ピッチャーよりも優秀な防御率が求められます。
3点台では少し心もとなく、2点台であるのが望ましいでしょう。
しかし、防御率を求める計算式に「失点」ではなく「自責点」を用いる関係上、印象と実際の防御率が全くことなることがあるのです。
失点とは、単純に相手チームのランナーをホームインさせてしまった数ですが、自責点は「投手の責任による失点」という定義になります。
(詳しくは、上記の記事も参考にしてみてください。)
そのため、例えば先発ピッチャーがツーアウト2,3塁のピンチを招いて降板し、変わった二番手ピッチャーが2点タイムリーヒットを打たれたとしましょう。
この場合、自責点はランナーを出してしまった先発ピッチャーにつきます。
二番手投手の防御率には全く影響しないので、救援失敗と思われたとしても、防御率は0.00のままなのです。(一部で、防御率詐欺と揶揄されることも)
その点、試合の最終イニングを任される「クローザー」はもっとシビアに評価されます。
「守護神」と言われたり、最後の1イニング限定で投げることが多いので、基本的に0点で抑えることが普通と思われている役割です。
防御率でいえば、2点台だと守護神としては安定感に欠ける印象になってしまいます。
最低でも1点台で、その時期の最強クラスの守護神は0点台を記録するほどです。
防御率から何がわかる?
防御率を計算することでわかることはいくつかあります。
- 相手からどのくらいの点数が取れそうか
- 相手投手のそこまでの調子はどうか
- 守備陣全体のスキルの高さ
防御率はその投手が1試合完投した場合に、どのくらいの自責点を許すと仮定できるかを表しています。
ですからもし相手投手の防御率が3.51なら、1試合を通してだいたい3点から4点くらいは取れそうだと見込むことが可能です。
もし防御率が1点台なら、(確率的な話で)ほとんど点が取れない緊迫したゲームになることが予想されます。
また、防御率の値に影響するのは「自責点」のみです。
もし投手の防御率が優秀だったとしても、他の野手ならキャッチできていた打球を何本かヒットにしてしまっているケースがあるかもしれません。
完全なる安打だったとしても、外野手の動きが緩慢だったせいでシングルヒットからツーベースになっているケースだって考えられます。
そのため、内野手や外野手の守備能力も、投手の防御率に多大な影響を与えるのです。
どんなに投手の能力が高かったとしても、野手陣の守備が下手で、記録に残らないようなミスやエラーがあれば防御率の悪化に繋がってしまいます。
単純に防御率を比較するだけで、投手の優劣を計ることはできないというわけですね。
プロ野球の防御率歴代記録は?
防御率の概念が理解できたところで、プロ野球の歴代記録を見てみましょう。
通算記録
1位 | 藤本英雄 | 1.90 |
2位 | 野口二郎 | 1.96 |
3位 | 稲尾和久 | 1.98 |
4位 | 若林忠志 | 1.99 |
5位 | V.スタルヒン | 2.08 |
シーズン記録
1位 | 村山実 | 0.98 |
2位 | 稲尾和久 | 1.06 |
3位 | 村山実 | 1.19 |
4位 | 村山実 | 1.20 |
5位 | 田中将大 | 1.27 |
ほとんどが、1900年代前半に活躍した選手たちで占められています。
これは、ボールの質が影響しているとも言われていて、今よりも反発係数が低い「飛ばないボール」が採用されていたことも影響しているはずです。
しかしその中でも、シーズン記録の5位にランクインしている2011年の田中将大(当時:東北楽天ゴールデンイーグルス所属)選手の1.27という驚異的な防御率が光ります。
他にも、ダルビッシュ有投手(当時:北海道日本ハムファイターズ所属)が5年連続防御率1点台を記録するなど、無双状態だった年もありました。
この2人がいずれもアメリカのメジャーリーグでエース各として活躍しているところを見ると、日本プロ野球で防御率1点台を記録できるような選手は、アメリカでも活躍が期待できるということですね。
まとめ:防御率は投手の一つの指標
防御率は、あくまでも投手を評価するための参考でしかありません。
野手陣の動きにも左右されますし、救援投手の出来によっても数値が大きく動きます。
チーム単位でいえば、リリーフ陣に優秀な投手が揃っていた方が先発投手の防御率が良くなる可能性が高く、一概に防御率だけで投手を比較することは出来ません。
あくまでも参考として、防御率の捉え方を知っておきましょう。