バレルゾーンという考え方が、比較的最近になって日本でも浸透され始めてきています。
プロ野球でも、様々なデータ機器を使って打球の速度やボールの回転数など、ありとあらゆる指標が細かくデータで見られるようになりました。
アマチュア野球の世界で、プロ並みに詳細なデータを取れるわけではありませんが、スキルアップに繋がるデータは覚えておいた方が絶対に役立ちます。
特にバッティングで超話題になっている、「フライボール革命」などは、全てのバッターに共通する考え方と言えるでしょう。
そのフライボール革命を語るうえで外せないのが、「バレルゾーン」というデータです。
そこで今回は、野球界を席巻しているバレルゾーンという考え方や、バレルゾーンに近い打球を打つために必要な条件などをまとめました。
バレルゾーンの意味とは
バレルゾーンとは、簡単に表現すると「最もヒットになりやすい打球角度と打球速度の組み合わせ」のことです。
メジャーリーグを中心に、セイバーメトリクスを活用したデータ解析が進んでいます。
これによって、野球の中のありとあらゆるプレーについて、数字を用いて評価することが可能になりました。
その中でバッティングにおいて、最も重要な指標の一つとされるようになったのが「打球速度」です。
セイバーメトリクス(野球のデータを統計学に当てはめて分析する手法)によれば、打球速度が上がるにつれてヒットになる割合が増えるというデータが出ています。
また、ヒットの中でも、打球速度が上がるほど長打の割合が増えていくことも明らかになりました。
単純に見れば、打率を向上させたければ、速いスピードの打球を打つことを心がけるべきだということですね。
バレルという指標の誕生
長年に渡って膨大なデータがさらに蓄積されていった結果、「打球速度」だけでなく、「打球が上がる角度」によっても打率や長打率が影響を受けることが明らかになってきました。
そこから導き出されたのが、「バレル」という新しい指標です。
今までは、とにかく打球速度が速い方がヒットになりやすいという認識でした。
それは間違いありません。
そのデータをさらに詳細に分析した結果、打球に角度が加わることでさらに打率や長打の数がアップしていることが分かったのです。
これは、打球角度が大きければ大きいほど良いという話ではありません。
ここでいう打球角度とは、左右ではなく上下の角度です。
真横に飛ぶライナーを0°として真上へのフライを90°と考え、その打球角度の中でヒットになりやすいゾーンがあるということです。
一定以上の打球速度になり、なおかつ最もヒットおよび長打が出やすい打球角度で打球が発射されるゾーンを「バレルゾーン」と呼ぶようになりました。
打球速度が速いほどヒットになりやすいという事実は変わらないので、打球速度が上がれば上がるほど、バレルに該当する打球角度の範囲は広がります。
バレルゾーンに必要な条件
バレルゾーンの打球を打つには、いくつか必要な条件があります。
そもそも、打球がバレルゾーンに入るには、最低でも打球速度が「158キロ」必要です。
158キロの打球を放てるだけの筋力も必要ですし、バレルゾーンに該当する打球角度にフライまたはライナーを打てるだけのミート力が必要になります。
ここでは、バレルの打球を打つための最低条件について整理していきましょう。
- 除脂肪体重65㎏
- スイングスピード128キロ
- 26°以上の打球角度
除脂肪体重65㎏以上
打球速度は、体重が重い方が速くなるというデータがあります。
ということは、バレルゾーンに該当する打球を打つためには、体重が重い方が有利だということですね。
バレルに必要な最低体重は、65㎏です。
ただこれは、「除脂肪体重」といって、読んで字のごとく身体から脂肪の分を抜いた体重です。
すなわち、体重70㎏の人で体脂肪率が10%の場合、除脂肪体重は63㎏ということになります。
これではバレルに該当する打球は打てません。
最低条件に当てはめるなら、体脂肪率が10%の場合、72.5㎏以上は無いと打てないということですね。
もし体脂肪率が15%なら、体重がおよそ77㎏ないとバレルの打球は打てません。
日本のプロ野球選手で当てはめると、決して無理な数字ではないですよね。
一般の方でも、太りすぎていなければ十分達成可能です。
スイングスピード128キロ
バレルに当てはまる打球を打つためには、打球速度が158キロを超える必要があります。
そのためには、スイングスピードの速さも当然ながら求められるわけです。
といっても、158キロのスイングスピードで捉える必要はありません。
それは、ピッチャーが投げるボールとバットの反発力を利用できるからです。
バレルに該当する158キロ以上の打球速度を実現するには、最低でも128キロのスイングスピードが必要になります。
高校球児のスイングスピードが、だいたい120キロから130キロと言われています。
そう考えると、野球経験者なら十分達成可能と言えるでしょう。
中学生でも、120キロ以上のスイングスピードを持っている子はいます。
大人なら練習すればホームランを打つことは十分可能だということですね。
26°以上の打球角度
バレルという指標を全てクリアするには、打球の角度にも着目しなければなりません。
バレルの最低条件である158キロの打球速度で放たれた場合、打球角度でいうと26°から30°の間がバレルゾーンです。
水平へのライナーが0°で、真上へのポップフライが90°と考えたとき、26°から30°の打球はフライと言うよりライナーに近いでしょう。
要は、打球速度が158キロを超えていても、0°より下のゴロであればそれはバレルではないということです。
これが、打球速度が上がるほどバレルに該当する打球角度の範囲は広くなります。
ある研究によれば、ボールの中心よりも0.6センチ下を叩くことで打球の飛距離が最大化するというデータもあるようです。
やはり、ゴロを打とうとするよりもライナーやフライに近い打球の方が長打やホームランになりやすいというデータが証明されているため、「フライボール革命」が広く浸透したのでしょう。
バレルゾーンの打球を打つための練習
バレルの打球を意識して、ヒットおよびホームランを量産したいなら、バレルの打球を打てるだけの筋力や技術を身に着けなければなりません。
そのために役立つ練習方法をいくつか紹介していきます。
- ティーバッティング
- ロングティー
- シャトル打ち
ティーバッティング
ティーバッティングは、近くからトスしてもらったボールを近距離のネットに向かって打ち込む練習です。
自分が最も力が入るミートポイントを体に染み込ませるとともに、スイング量を増やしてスイングスピードを向上させるための練習でもあります。
一球ごとにフォームを確認しながらティーバッティングを行うのも良いですし、一球ごとの間隔を短くするいわゆる「連ティー」も効果的です。
素振りもスイングスピードやバッティングフォームを固める大切な練習ですが、ティーバッティングは実際にボールをミートしたときのインパクトが加わります。
力強いスイングが出来ているか体感的に確認できるという点で、メリットがあるわけですね。
ロングティー
ロングティーは、先ほどのティーバッティングと同じ要領で、外野など広い場所に向かって打ち込む練習です。
打ち方などは同じですが、近くにネットが無い分打球の飛距離や角度がよりわかりやすくなります。
より遠くに飛ばすための打ち方が自然と身につきますし、ヒットや長打を打つための正しいスイング軌道を身に着けることが可能です。
バレルに該当する打球を打つためには、打球角度も求められます。
近距離のネットに打ち込むティーバッティングだけだと、どうしてもライナーやそれよりも低い打球も増えがちです。
ですから、自分の打球の質をハッキリ確認するためにも、ロングティーという練習も必要になります。
シャトル打ち
バドミントンで使用されるシャトルを使って、バッティング練習をする方法です。
ピッチャーが通常通り上からシャトルを投げ、それをしっかり手元に引き付けて強く叩くバッティング練習になります。
もちろん通常のフリーバッティングが出来れば一番良いのですが、フリーバッティングをするには広い場所や野球場が必要です。
それをバドミントンのシャトル打ちで代用することで、安全でかつ省スペースで練習が出来るわけですね。
ただ、バドミントンのシャトルは手元に来ると失速して落ちてきます。
それを迎えに行ってスイングするのではなく、ちゃんと自分のミートポイントまで引き付けて叩くのがポイントです。
野球ボールよりミートできる部分は小さいので、芯で捉える練習にもなります。
やはりバレルを意識するなら、シャトル打ちからライナー以上の打球を打つことを心がけるべきですね。
バレルバットという練習用バットも
バレルの打球を打つためには、スイングスピードやライナー以上の打球角度を再現できるスイング軌道が必要だとご紹介してきました。
練習が必要であることは当然理解できたと思いますが、バレルに近い打球の再現率を高めるために、画期的な練習用具も開発されています。
その名も「バレルバット」
バレルバットを使用した練習風景も動画がありますので、見てみてください。
バレルゾーンの打球を打つための理想的なスイング軌道や、スイングに必要な筋力が鍛えられるという秘密兵器のようなバットです。
試合で使うことは出来ませんが、バレルバットを使ってバレルゾーンの打球を打つためのスイングを身体に覚えこませるには良いかもしれません。
実際に、西武ライオンズでも活躍している外崎選手などが活用しているということで、実績も申し分ないです。
人気商品の為、購入後すぐに手元に届くわけではありませんが、興味がある方は「バレルバット」で検索してみてください。
形は通常のバットに比べていびつで、重さも重いということです。
バレルゾーンは軟式でも浸透しつつある
バレルゾーンという考え方は、メジャーリーグを中心とした「硬式野球」の理屈です。
軟式でもバレルゾーンという考え方は、通用するのでしょうか?
結論からいくと、「軟式でも同じ」ということになります。
昔の軟式球は、今よりも柔らかくゴムボールに近い材質でした。
そのため、ちゃんとボールの真ん中を捉えないと、ボールが潰れて高いフライやドライブ回転のゴロになるという特徴があったのです。
しかし、最新の軟式球(通称:M号)では、従来の軟式球と比べて固い形状に規格が変更されました。
これにより、以前の軟式球よりも硬式に近い形でバッティングをすることが可能になったのです。
もちろん硬式球と比べれば、バウンドの仕方などに大きな差があるのは否めません。
ただ、前ほど「打つとボールが潰れる」ということが無くなったので、フライボール革命をそのまま実践することが出来るようになったのです。
ですから、最新の理屈で当てはめれば、全ての野球を愛するプレーヤーにとって「バレルゾーン」や「フライボール革命」は一定の成果をもたらす可能性があるということですね。
まとめ:バレルを意識して打撃練習をしよう
- バレルゾーンとは、最もヒットや長打が出やすい打球帯
- 最低158キロ以上の打球速度が必要
- 打球速度が速いほど、バレルに該当する打球角度も増える
- 除脂肪体重65㎏以上が必要
- スイングスピードは120キロ以上
- ライナーやフライを打つ練習が必要
- バレルバットという商品も出ている
- 軟式野球でもバレルはある程度当てはまる
日本野球でも広く認識されるようになった、バレルゾーンという考え方についてご紹介してきました。
バレルという指標の条件を見てみると、決して一般人に出来ない項目ではありません。
ちゃんと練習すれば十分達成できる数字ばかりなので、あとは打席でバレルゾーンに当たる打球を打つ確率を上げることが大切です。
地道な練習の積み重ねこそが、バレルの打球を生み、ヒットやホームランを生むのですね。
ぜひバレルを意識して練習に取り組んでいきましょう。