野球のサードは、一般的に鋭い打球が多いポジションと言われています。
そのためサードの守備位置が「ホットコーナー」と呼ばれることもあり、ショートに次ぐ内野手の花形と言えるでしょう。
プロ野球の歴史を見ても、三塁手のスター選手は多いです。
そこで今回は、野球のサードに求められる役割や守備の動き方について紹介していきます。
野球のサードの守備位置とは?
野球のサードは、3塁ベース付近を守る野手のことです。
サードの定位置は、3塁と2塁ベースを結んだ線より少し後ろ側で、3塁線のファールラインよりも2,3メートル内側に入ったところになります。
前進守備や中間守備、バントシフトでは3塁ベースよりも打者寄りの位置にポジション取りをしますが、基本的にはベースより後ろがスタンダードです。
サードの漢字表記は「三塁手」となり、英語では「third baseman」と表現されます。
ポジションごとの番号は「5」で、少年野球や高校野球ではサードのレギュラー選手に背番号5番が与えられることが多いです。
特に年代が下がるほど、右バッターが多い傾向もあり、サードには強い打球が飛びやすい守備位置であると認識されています。
そのため、守備機会は多いです。
サードの役割
内野手であるサードの役割は多岐にわたりますので、しっかり整理しておきましょう。
- 打球処理
- 3塁ベースカバー
- 牽制球に備える
- 他者のプレーのカバーリング
- 外野からの中継
打球処理
サードの打球処理は、基本的に3塁ベース近辺ということになります。
ショートやセカンドほど広い守備範囲は求められていません。
というのも、センターラインのポジションに比べて打者からの距離が近いので、速い打球に対して広い守備範囲を守るのは難しいからです。
その分、右バッターが思いっきり引っ張った痛烈な強い打球が来ることが多いでしょう。
特に3塁線側はサードが捕るしかないので、どちらかというと自分の右手側に意識を置いた方がいいかもしれません。
バントシフトなどでバントの打球を処理する場合は、ランナー1塁ならダッシュで前進します。
ランナー2塁のケースでの送りバントは、打球方向が判断できたら瞬時に3塁ベースに戻ることも必要です。
3塁ベースカバー
遊撃手や二塁手と違い、三塁手は基本的に3塁ベースカバーしかしません。
ホームにはキャッチャーがいますし、場合によってはピッチャーが入ります。
そのため、他のポジションよりは動き方の選択肢が狭いのでやりやすいと言えるでしょう。
ランナー2塁、または3塁の状態で内野ゴロが飛んだ場合、ランナー3塁で外野フライが飛んだ場合など、3塁ベースカバーに入らなければならないケースも限定されます。
牽制球の備え
ランナーが3塁にいれば牽制もあるのですが、1塁や2塁に比べると頻度は少ないです。
ホームスチールはほとんど発生しないので、あまり3塁ランナーに牽制球を投げることはありませんからね。
その上、牽制が悪送球になったりエラーが起こったりすると即座に失点に繋がるので、牽制のリスクが他の塁に比べて大きいのです。
特にツーアウトの場面であれば、ランナーが3塁にいてもサードがベースに付かないこともあるでしょう。
ランナーのリードもそれほど大きくはならないので、牽制の必要性は低いです。
カバーリング
通常、全ての野手は他の選手が打球処理などをプレーしているときに、その後ろなどでバックアップを行います。
悪送球やキャッチミスなどに備えるためです。
サードに関しては、あまりカバーリングの出番は多くありません。
あるとすれば、ライト方向の外野から2塁ベースに送球が来るときくらいでしょうか。
そこでボールが反れてきたら、カバーリングを行います。
その際3塁ベースが空きますが、そこにはピッチャーも入れますから連携が出来ていれば問題ありません。
外野からの中継
外野にボールが飛んだときにバックホームをする際に、中継が必要になります。
レフト方向の打球は、多くの場合でショートがカットマンになりますからサードはベースに付くことになるのが通例です。
しかし、レフトの送球が浮いて高くなったり横に反れてしまったりして遊撃手が捕れないときには、サードがベースを離れてキャッチします。
とはいえ、機会はそれほど多くありません。
サードの特徴
サードは守備能力の高さで抜擢されるというよりは、打撃力ありきで起用されるケースも多いポジションです。
サードの具体的な特徴とは、どういったものなのでしょうか?
- 守備範囲は広くない
- 強い打球が飛んでくることが多い
- 左利きが少ない(ほぼいない)
- 打撃の良い選手が多い
サードは、他の守備位置に比べると守備範囲があまり広くありません。
3塁線は別として、自分の左側はショートが守ってくれますし、バントの際もピッチャーがフィールディングを行うことも多いです。
バントの打球をサードが処理しなければならないケースでは、その時点で内野安打の可能性が高くなっているでしょう。
その分、速い打球が飛んでくる回数が多いという特徴があります。
このことからもサードは「ホットコーナー」と呼ばれ、強打者の多い右バッターが真芯で捉えて引っ張った打球が来ます。
優先順位をつけるとすれば、やはりサードは自分の右手側の打球をしっかり止めることに比重を置いた方が良いでしょう。
そしてサードという守備位置の都合上、左利きの選手がほぼ存在していないというのも大きな特徴です。
サードゴロを捌いて一塁に投げることを考えると、左利きの場合は足を入れ替えて身体を反転させなければなりません。
これではコンマ何秒を争う内野ゴロが全てヒットになってしまいます。
それを防ぐためには、右利きの方が良いということですね。
打撃も重要
三塁守備の特徴に限らず、サードを守る選手は総じて打撃能力が高いということも挙げられます。
守備範囲が狭くても務まる分、パワーがあって打率も残せる高いレベルのバッティングが求められるというのも事実です。
歴代のプロ野球選手を見てみても、本塁打や打点を多く稼ぐような選手が多いことがわかります。
(例:元近鉄バファローズ中村紀洋選手、元ジャイアンツ小笠原道大選手、西武ライオンズ中村剛也選手)
打球に追いつける範囲の広さというよりも、グラブを持った手のハンドリングの柔らかさや、打撃での貢献度が重視されるポジションだと言えるでしょう。
サードに必要な能力
サードでレギュラーを獲得するには、どのような能力を磨いたら良いのでしょうか?
- 反射神経の良さ
- 前後のダッシュ力
- 肩の強さ
- ボールを怖がらない性格
- 打撃の良さ
反射神経の良さ
サードはホットコーナーと呼ばれるだけあって、ホームベースとの距離が近いので打球が来るまでの時間が短いです。
球足の速い打球に瞬時に反応できるようにするために、反射神経を磨いていく必要があります。
他の人がノックを受けているときでも一歩目のスタートを切るなど、日々の地道な努力で反射能力を高めておきましょう。
前後のダッシュ力
サードは左右に広く走ってボールを追うというよりは、前後の動きがメインになります。
バントやボテボテのあたりに猛然とチャージして、整わない体勢でもファーストへ正確に投げられる能力が必要です。
バットに当たってから打球が手元にやってくるまでの時間が短いので、バウンドを合わせるのが難しいポジションでもあります。
打球判断後に、瞬時に動ける瞬発力も必要ですね。
肩の強さ
ファーストまでの距離が遠いですから、肩が弱いと内野安打で出塁を許すケースが増えてしまいます。
3塁線の打球を逆シングルで捕ったあと、低い送球でファーストミットめがけて投げられる肩の強さが必要です。
必ずしもノーバウンドでなくても良いので、ワンバウンドでも低く鋭い送球が出来た方が確実性も増します。
ボールを怖がらない性格
サードは打球判断に与えられる時間が短いので、時には身体で止めるということも必要です。
ボールを怖がる選手では、股の間を抜かれてトンネルしてしまうなどエラーも増えてしまうでしょう。
最悪身体に当たればいいという割り切りと強気な性格が、サードには必須なのです。
打撃の良さ
サードはキャッチャーやセンターなどと違って、守備の上手さ一本でレギュラーを獲得するポジションではありません。
俊足を活かした守備範囲よりも、打線の中軸を任せられるくらいのバッティング能力が求められます。
出塁率の高さというよりも、勝負強い打撃で得点圏打率が高い選手の方が適しているでしょう。
サードの動き方のポイント
サードの動き方としては、他のポジションに比べたらそこまで複雑な連携はありません。
ベースカバーに入るのは3塁ベースのみですし、基本的には外野からの中継もショートがやります。
少しトリッキーなのはバントシフトのときくらいで、そのときはピッチャーが投球モーションに入ったら前進してプレッシャーをかけましょう。
あえてポイントをまとめるなら
- 前の打球はショートではなくサードが捕る
- 3塁線は無理に脚を動かさずに逆シングルでOK
といったところでしょうか。
ボテボテの打球や高いバウンドの打球がショート寄りに飛んだときには、できればサードが前にでて捕ってしまった方が早く一塁に投げられます。
また、3塁線ギリギリを襲ってくる打球に関しては、無理に身体の正面を入れに行く必要はありません。
逆シングルで捕球しにいき、そこからステップを踏んでしっかり一塁に投げましょう。
サードを守る代表的な選手
ここまでサードの特徴や役割をご紹介してきましたが、実際にプロでも活躍した三塁手を見ていき、サードの理想的な選手像を確認しておきましょう。
かつては「ミスタープロ野球」と呼ばれた長嶋茂雄さんが三塁手の代表的存在でしたが、ここでは90年代以降の選手を見ていきます。
中村紀洋
大阪近鉄バファローズが存在していた時代に、シーズン40本塁打を記録するなど強打者として活躍しました。
打った後のバット投げの美しさが有名で、当時の野球少年はみんな真似をしたはずです。
圧倒的な打撃だけでなく、守備の確実性も高く、守備範囲の広さというよりは取れるアウトを確実に取る守備が光っていました。
中村剛也
ホームラン王を6度も獲得している、2020年現在最強のホームランバッターと言えます。
「おかわり君」という愛称でファンの人気も高く、チャンスに強い打撃が持ち味です。
太めの体型ですが足が遅いわけではなく、三塁守備も平均以上の能力を持っています。
岡本和真
久しぶりの読売ジャイアンツ生え抜きの4番打者ということで、着実に大打者への階段を上っている岡本選手。
3割30本100打点を記録するような攻撃力に加えて、「逆シングルの鬼」と形容されるほど守備にも定評があります。
岩村明憲
ヤクルトスワローズ時代に、シーズン40本塁打を達成し、メジャーリーグに移籍後もWBCで世界一に貢献したスター選手です。
ヤクルトスワローズの本拠地である神宮球場は打球が速いことでも有名で、守備の負担も大きかったでしょう。
その中で群を抜いたバッティング成績を残していたのは流石です。
村田修一
横浜ベイスターズ時代に、ホームラン王を獲得した経験もある村田選手。
高校時代にピッチャーをやっていただけあり、強肩とスローイングの正確性も評価されていました。
逆方向にも本塁打を打てる、まさに理想的なサードのスラッガーという選手でした。
松田宣浩
打率は高くないものの、5年連続20本塁打以上を記録し、30発以上を3度記録している強打者です。
それでいて、ゴールデングラブ賞を7度も獲得する実力者でもあります。
平均以上の攻撃力と守備力をどちらも兼ね備えた理想的なサードの一人と言えますね。
まとめ:サードは守備技術の高さとパワーが必要
サードを守る人の特徴を整理してみると、守備の上手さだけでなく打撃でのパワーが必要であるということがわかりました。
広大な守備範囲をカバーしなければいけないわけでななく、自分の手の届く範囲にくる強い打球をしっかり抑えられるかがカギになります。
打撃ではパワーヒッター系の選手が多いので、サードのレギュラーを獲得するにはスイング力も磨かなければなりませんね。