野球でピッチャーを任されるとなったら、変化球は必須です。
しかし、野球経験者だからといって、全ての選手が得意な変化球を持っているわけではありません。
投手経験が少ない方や、まだまだ投手になったばかりという方は、変化球の持ち球を増やさなくてはなりませんよね。
ピッチャー初心者にオススメの変化球や、簡単に投げられる変化球をまずは知りたくないですか?
この記事では、変化球全般の投げ方や、有効な使い方を紹介していきます。
変化球の握り方と投げ方
変化球は、正確な握り方と投げ方のコツさえつかめば、ちゃんと投げられます。
投球フォームや指の長さ、腕の振りの強さによって投げやすい変化球とそうでない変化球がありますから、自分の特徴に合わせた変化球を選びましょう。
スライダー系
スライダー系統の変化球は、スライダーとカットボールの2種類です。
どちらも利き腕とは逆方向に曲がります。
変化球の中でも、比較的スピードが速い方の球種です。
そのため、ストレートのスピードが速い投手や、腕の振りが勢いよく投げっぷりの良いピッチャーに適している変化球でもあります。
スライダーの場合は変化の幅が大きくなれば、空振りを奪う決め球に使うこともできるでしょう。
カットボールは限りなくストレートに近い速度で、バッターの手元でキレよく少しだけ変化します。
それによって、バットの芯を外して凡打を打たせることが最大の目的です。
カーブ系
カーブ系統の変化球は、カーブとスローカーブの2種類があります。
どちらも利き腕方向とは逆に曲がりつつ、縦方向にも沈んでいくのが特徴です。
どちらも比較的緩いスピードの変化球であり、決め球にも使えますし、タイミングを外してファールを打たせる目的にも使えます。
ストレートとの球速差が大きいので、緩急を使った配球が有効でしょう。
ストレートのスピードがそんなに出なくても、ブレーキの利いたカーブを駆使することで、ストレートが実際のスピード以上の体感速度に感じられます。
スローカーブはカーブよりも一層スピードが遅く、曲がり幅も大きいのが特徴です。
フォーク系
フォーク系統の変化球は、フォーク、スプリット(SFF)、チェンジアップの3種類です。
どれも縦方向に落ちるのが特徴の変化球ですが、3種類で軌道や投げる目的が大きく異なります。
フォークは、ストレートに近い軌道から打者の手元に近づくにつれてストンと縦方向に落ちていく変化球です。
サイドスローやアンダースローでは、投げるのが難しいでしょう。
基本的には決め球として投げる変化球であり、ボールを挟んで投げるためコントロールが難しい球でもあります。
スプリット(SFF)はフォークよりも球速が直球に近く、落ち幅はフォークより少ないのが特徴です。
これも決め球として使いますが、フォークより鋭く小さく落ちるため、低めに投げてゴロを打たせる役割も果たすことが出来ます。
フォークとスプリットの握り方や投げ方は似ているので、各記事で確認してみてください。
チェンジアップは、リリースの瞬間はストレートに近いですが、キャッチャー方向に向かうにつれて徐々に空気抵抗によって減速していきます。
推進力を失いつつ重力によって徐々に落ちていく感じです。
肘や肩の負担が少なく、チェンジアップの握り方さえ覚えれば後はストレートと同じように腕を振ることで投げられるので、比較的初心者にも投げられる変化球と言えるでしょう。
ストレートとの緩急によって、打者のタイミングをずらしてバッティングフォームを崩すのが目的です。
シンカー系
シンカーは、利き腕方向に曲がりつつ少し沈んでいく軌道を辿ります。
シンカーは握り方が独特で、リリースにもコツがいるため少し難易度が高い変化球です。
中指と薬指の間から抜くような形でリリースをするので、コントロールも難しいでしょう。
サイドスローの方が比較的投げやすいかもしれません。
シンカーを扱っている投手が少ない分、オーバースローやスリークォーターの投げ方からキレの良いシンカーが投げられたら、かなり大きな武器になります。
相手打線も決め球のシンカーに気を取られ、逆に他の球種で打ち取りやすくなるかもしれませんね。
時に「魔球」と称されることもあるくらいです。
シュート系
シュートは利き腕方向に、ほぼ水平に曲がるボールです。
ストレートと球速差が少なく、滑るように曲がるのが特徴の変化球でもあります。
投げ方や握り方は比較的簡単で、シュート方向への変化はすぐに再現しやすいです。
しかし、シュートを曲げようという意識が強すぎると、変に腕を捻ってリリースすることになってしまいます。
それが肘への負担になり、さらにストレートの球威も失うという最悪の悪循環になってしまうわけです。
シュートを投げるときには、特にストレートの質を落とさないように練習していく必要があります。
速度が近いストレートとシュートをコンビネーションで投げることで、バッターが打ち損じてくれる可能性が高まるのです。
バックドアやフロントドアといった、ボールゾーンとストライクゾーンの狭間に制球できたらかなり大きな武器になります。
見逃しストライクや、どん詰まりの当たりを打たせるのに役立つ変化球です。
特殊系
ナックルという特殊な変化球もあります。
かなり緩い変化球ですが、最大の特徴は「投げた本人も変化の仕方がわからない」という点です。
なるべくボールに伝わる回転を少なくする投げ方をして、空気抵抗によってふわふわと揺れたような軌道を描きながら進んでいきます。
そのため、キャッチャーの捕球スキルも高く無いと使えません。
その時の天候など周りの環境にも、ナックルの変化の仕方が左右されます。
変化の仕方が不規則なので、バッテリー間でバッターとの駆け引きをしなくても抑えられる場合もあります。
やはり使い手が少ない球種なので、ナックルを投げられたらかなり希少性の高いピッチャーになれるでしょう。
直球系
ほとんど大きな変化はせず、ほぼ直球に近い系統の球種もあります。
ジャイロボールは回転の軸が特殊で、弾丸のように前後の軸で回転しながら進んでいくのが特徴です。
そのため、上手く投げられれば初速と終速が少ないノビのあるボールになるでしょう。
ただ、ジャイロ回転で力強いストレートを投げるのはかなり難易度が高いです。
ジャイロボールを意図して投げられるなら、もう一つ変化球があればそれだけでだいぶ戦えるのではないでしょうか。
ツーシームは、利き腕の方向に少し変化しながら落ちるボールです。
変化の幅はかなり少ないのが一般的で、第三者の視点からみればほとんどストレートと同じに見えます。
打者の手元で微妙に変化することが持ち味なので、ストレートと思って打ちに来たバッターの芯を外してゴロを打たせるのが目的です。
変化球が曲がる理由
ところで、変化球はなぜ曲がるか考えたことがありますか?
変化球が曲がる理屈を知っておくと、より変化球を投げるのが上手くなります。
変化球が曲がるのには
- ボールの回転
- 空気抵抗
- 重力
この3つの要素が必要です。
スライダー系やカーブ系など、横方向の変化が大きい球種については、特にボールの回転が必要です。
ボールに回転が加わりながら直進すると、回転している方向に気圧の変化が生じて、「マグヌス効果」という揚力が発生します。
この揚力にボールが徐々に引っ張られることで、そちらの方向に曲がっていくのです。
ストレートの場合はバックスピンなので、上に引っ張られる力が働くというわけですね。
だからストレートの回転数が多いほど、ノビのある直球になるわけです。
フォーク系やナックルには、空気抵抗と重力をしっかり受けさせることがポイントになります。
フォーク系では基本的にボールに伝わる回転を少なくして、より空気抵抗を大きくするのです。
それによって、ピッチャーの手から押し出された推進力を徐々に減らしていき、重力に引っ張られる形で落ちます。
スピン量が少ないほど、キレの良い変化をする変化球もあるということですね。
変化球の名前は自分で決める
実は変化球には、ある一定の基準があるわけではありません。
例えば、ストレートとの球速差が何㎞以上でないとスローカーブと呼べないとか、変化の幅がボール何個分以上でないとシンカーと呼べないなど、明確な基準は無いのです。
投げるピッチャーが自分で「カーブ」と言えば、それはカーブになります。
ですから、厳密には、スライダーとカーブの境界線はありません。
人から見てスライダーに見えても、ピッチャー自身がカーブだと思って投げていればそれはカーブなのです。
大切なのは、どのような変化をする変化球を投げたいのか、意思をハッキリさせることです。
変化球にはそれぞれ、「空振りを奪う」「打者のタイミングを外す」「ゴロを打たせる」という目的が分かれているので、自分の意図に合った変化球を選びましょう。
その参考になるのが変化球の名前と大まかな分類なので、基本の変化球の投げ方や握り方を覚えたら、そこからアレンジしても良いのです。
変化球を投げるときの注意点
変化球の投げ方を学ぶ際には、注意点が3つあります。
- 変化球だけでは抑えられない
- ケガのリスクを軽減させる
- 活かすには配球が重要
それぞれ詳しく見ていきましょう。
変化球だけでは抑えられない
いくらキレの良い変化球だったとしても、続けて多投し続ければそのうち打たれます。
変化球は基本的にストレートより球速が遅くなるわけですから、その分バッターにとってもボールを見極める時間が増えるわけです。
何度も変化球を立て続けに投じていれば、そのうちタイミングも合ってきますからね。
まずはしっかり腕を振って投げるストレートがあって、そこからどのように打者を惑わせていきたいかによって変化球を使い分けます。
良いストレートがあるからこそ変化球が活きますし、良い変化球があるからストレートが威力を発揮するのです。
ケガのリスクを軽減させる
変化球は、肘や肩の負担が増えるとされています。
それは、変化球を曲げようという意識が強すぎると無理に腕を捻ってリリースしようとしてしまうからです。
また、肩の開きが早くなるなど投球フォームにズレを生む可能性もあります。
投球練習などでも、変化球ばかり投げるのではなく、フォームを修正するためにストレートを織り交ぜましょう。
横の変化球ばかり投げていると身体が横振りになってストレートが走らなくなることもあるので、縦の変化球もたまに投げると予防になります。
サイドスローやアンダースローの場合は、必要以上に腕を捻らなくても変化球は曲がります。
出来るだけストレートと同じようにリリースすることを心がけましょう。
変化球を活かすには配球が重要
変化球の効果をより一層発揮させるためには、配球が重要です。
例えばフォークボールの場合、高めに投げると上手く変化しないことが多くなります。
ただの力の無い直球になってしまうので、そうなると長打を打たれるリスクも上がるのです。
また、同じシュートを投げるにしても、インコースに投げるのとアウトコースに投げるのでは見え方が全く違います。
サイドスローなどベースの幅を使える投球フォームならなおさらで、ストライクゾーンとボールゾーンを上手く使って配球する必要があるのです。
緩急に加えてコースまでコントロールして投げることが出来れば、打者も多くのことを考えなければなりません。
投げる変化球の球種を増やすだけでなく、一つの球種でストレートと合わせてどれだけの攻め方ができるか捕手と話し合うことも大切ですね。
まとめ
- 変化球は「目的」を考えて選ぶ
- 投球フォームで変化球が限られる場合もある
- 変化球一辺倒ではダメ
- ストレートとのコンビネーション
- 一球種の中にも、配球のバリエーションがある
- 肘や肩の故障予防をしっかり行うべき
変化球の投げ方は、それぞれ異なるコツやポイントがあります。
握り方だけ見ていきなり試合で使えるレベルで投げられるわけではありませんが、練習すれば確実に上達するでしょう。
投球の幅が広がれば打者を抑えられる確率もアップして、よりピッチャーが楽しくなるはずです。
自分の投球フォームやスタイルを考えて、自分にフィットする変化球を模索していきましょう。