野球界でたまに使われる単語に「クラッチヒッター」というものがあります。
草野球や高校野球で多く用いられる単語ではありませんが、クラッチヒッターというキーワードは野球を深く知る上では重要です。
そこで今回は、「クラッチヒッター」とはどんな意味があるのか紹介していきます。
クラッチヒッターとはどんな意味?
クラッチヒッターの意味を簡単に表すと、「チャンスの場面で頼りになるバッター」ということになります。
Clutch(クラッチ)という英単語は元々、「ぐっとつかむ」という意味があり、特にスポーツの場面で「プレッシャーのかかる場面で最高の働きをする」ことを表現する単語です。
それが野球ではクラッチヒッターという言葉で用いられ、得点圏で打席が回ってきたときに安打を放つ活躍が多い打者を指します。
クラッチヒットと言えば「適時打」(タイムリーヒット)のことで、単に「クラッチ」と表現するケースもあるでしょう。
クラッチヒッターをそのまま日本語に置き換えるとしたら、「勝負強い打者」とか「チャンスに強い打者」ということになります。
元々はバスケットボールの「クラッチシューター」(ここぞの場面で何本もシュートを決める選手)から転じた表現であるようです。
クラッチヒッターになる基準
クラッチヒッターかそうでないかは、明確に数値で基準があるわけではありません。
打率で言えば3割打てば一流と言われますが、クラッチヒッターを数字で判断するとしたら得点圏打率ということになるでしょう。
得点圏打率とは、チャンスの場面(ランナーが2塁または3塁のいずれかにいる状況)でどれだけヒットを打てるかの確立です。
ただ、単に得点圏打率だけではなく「勝利打点」が多い選手がクラッチヒッターと呼ばれることもあります。
勝利打点は、最終的にチームが勝ったとして、その試合最後の勝ち越しになる打点のことです。
もし0対1で終わった試合であれば、その1打点を挙げた選手に勝利打点が記録されます。
6回表まで3対3で試合が進み、7回にタイムリーヒット3本で3点を加え、最終的に6対3で勝利したのであれば、4点目を挙げた選手に勝利打点が付くという仕組みです。
この勝利打点という考え方は、単純に得点圏打率と比例するわけではありません。
実際の活躍度合いだけでなく、印象度合いも関わってくるので、必ずしも得点圏打率の高い選手だけがクラッチヒッターというわけではないでしょう。
その代表的な例が、大阪近鉄バファローズ時代の北川博敏選手ではないでしょうか。
北川選手は、おそらく多くのプロ野球ファンの間で「クラッチヒッター」の印象を残しているはずです。
それが伝説級の、「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定ホームラン」の一打に理由があります。
これは2001年の出来事で、その試合に勝てば優勝が決まるという試合で、9回裏を迎えたときにチームが5対2でリードを許している状況でした。
そこからノーアウト満塁のチャンスを作り、代打で登場したのが北川選手です。
なんとその場面で北川選手がホームランを放ち、劇的な幕切れで近鉄のリーグ優勝を決めました。
この試合だけ見れば、北川選手は紛れもないクラッチヒッターと言えるでしょう。
しかしこの年、シーズンを通してみてみると、北川選手の打率は「.270」で、得点圏打率は「.200」でした。
要は、チャンスの場面で打席が回っても、ちょうど2割の確率でしか安打が期待できないバッターだったのです。
このデータで判断するならば、北川選手がクラッチヒッターとは言い難いのではないでしょうか?
しかし、この優勝決定戦での代打逆転サヨナラ満塁本塁打の印象があまりにも強烈で、「北川選手=チャンスに強い打者」という図式が出来上がっているのです。
そういったファン目線でのクラッチヒッターも存在しているので、一概に通算データだけではクラッチヒッターかどうか判断するのは難しそうですね。
プロ野球の代表的なクラッチヒッター
先に挙げた北川選手以外に、プロ野球選手の代表的なクラッチヒッターを挙げてみましょう。
まず絶対に外せないのが、3度の三冠王を獲得した落合博満氏の存在です。
落合さんは打撃そのものが突出しているので、チャンスにだけ強いという打者ではないのですが、シーズンの得点圏打率の日本記録である「.492」を記録したことがあります。
得点圏以外も含めたこの年の打率が「.367」だったので、得点圏ならさらに1割以上も安打の期待値がアップしていたということになりますね。
どちらにしろ驚異的ですが、チャンスの場面でより集中力が増すクラッチヒッターと言っていいでしょう。
もう一人、元阪神タイガースの今岡誠氏もクラッチヒッターと呼ぶべき選手の一人です。
今岡選手は、2005年にプロ野球歴代3位となる147打点を記録しました。
この年の今岡選手の打率は「.279」で、平凡な記録です。
しかし得点圏打率になると「.371」に跳ね上がり、驚異的なクラッチヒッターぶりを発揮しています。
前述の落合氏のように、いつどんな場面でも怖い打者というより、チャンスの場面では絶対に迎えたくないバッターが今岡氏というイメージでしょうか。
ランナー無しの場面とのギャップという意味で言えば、最高クラスのクラッチヒッターと言えます。
まとめ:クラッチヒッターになるには精神面も必要
バッターとして打席に立てば、いつでもヒットを打ちたいのがプレーヤーというものです。
そのためには、自分なりのバッティングフォームやスイングのやり方を確立しておくべきでしょう。
それをベースとして、チャンスの場面を確実にものにするには、気持ちの作り方も重要です。
チャンスの場面で気負って固くなるのではなく、集中力を増して自分のバッティングが出来るように、自信が持てるくらい練習を繰り返しておくことが大切ですね。