フライングエルボーとは、野球の中で最近よく言われるようになったキーワードです。
打者のバッティングフォームの特徴を指して、フライングエルボーと呼ばれます。
フライングエルボーには肯定派と否定派がいますが、比較的新しい考え方に柔軟に対応している指導者や選手にフライングエルボー肯定派が多い印象がありますね。
では具体的に、フライングエルボーとは何なのでしょうか?
今回は、フライングエルボーが表すバッティングフォームの形や、フライングエルボーのやり方についても紹介していきます。
野球のフライングエルボーとは
フライングエルボーは野球のバッティングフォームの一つで、構えたときに捕手側の手(右打者なら右腕、左打者なら左腕)の脇を大きく開けた構え方を指します。
近年では、メジャーリーグで活躍している大谷翔平選手などがフライングエルボーを採用していることで話題になりました。
フライングエルボーはそもそもメジャーリーグなど外国人選手に多い打ち方であり、昔は日本のプロ野球ではあまり見られなかった打ち方です。
昔の少年野球でも、「脇を閉めろ」という指導が多く、構えの段階からコンパクトなスイングをすることが良しとされてきた風潮もあります。
しかし近年では、フライングエルボーなど比較的新しい理屈が推奨されることも多く、パワーを生み出しやすいなどのメリットから賛成派も多くなってきました。
フライングエルボーの野球選手
フライングエルボーは日本の野球では比較的近代的な考え方になりますが、実際にフライングエルボーを取り入れている野球選手はどのような人物がいるのでしょうか。
大谷翔平
坂本勇人
内川聖一
中田翔
畠山和洋
これらが、代表的なフライングエルボーを採用している日本のプロ野球選手です。
もっと他にもいるはずですが、全体的にはホームランバッターが多い印象ですね。
大谷翔平選手はメジャーでもトップクラスのパワーを持っていますし、坂本勇人選手も2019年にシーズン40本塁打を記録しています。
内川聖一選手も5年連続二桁本塁打を達成するなど、打率だけでなくパンチ力がある選手です。
中田翔選手や畠山和洋選手も、ここ一番でのホームランが印象深い選手ですよね。
このように、フライングエルボーの打撃フォームには、長距離ヒッターに近づく素質が隠されているように思えます。
フライングエルボーのやり方
フライングエルボーのやり方には、いくつかのポイントがあります。
- キャッチャー側の肘を上げる
- あまり高く上げすぎない
- ピッチャー側の脇は自然に
フライングエルボーとは、構えたときにキャッチャー側(右バッターなら右肘、左バッターなら左肘)が上がって脇が開いている状態のことです。
ピッチャーが投球動作に入る前の状態では、脇を大きく開けた状態で待つことになります。
そのため、あまり肘を高く上げすぎると肩に力が入ってスムーズなスイングが出来ません。
フライングエルボーに、どこまで肘を上げなければならないという決まりは無いですから、自分がしっくりくる位置を探してみましょう。
そこから、スイングの際には上げている肘を一気にお腹の前に滑り込ませるイメージで振り込みます。
この動作のおかげで、スイングスピードをアップすることが出来るわけです。
改めて時系列でフライングエルボーの動きをまとめると
- 後ろ側(捕手側)の肘を上げて構える
- 肩の力を抜いてリラックスする
- スイングと同時に、肘をお腹の前に滑り込ませる
このような流れになります。
今までの自分のバッティングフォームと比べて、どちらが力強く振れるか確認してみましょう。
フライングエルボーのメリット
フライングエルボーがなぜ近年になって、多くの打者に取り入れられるようになったのか?
そこにはフライングエルボーに期待できる、絶大なメリットがあるからです。
- 強い打球を打ちやすい
- インコースに強くなれる
強い打球が打てる
フライングエルボーを取り入れる最大のメリットはやはり、「強い打球を打てる」ということでしょう。
これは物理的な問題でもあります。
例えば同じ重さの鉄球を落とすとして、高さ10センチのところから落とすのと、10メートルのところから落とすのでは、地面に伝わる衝撃が全く違いますよね。
これと同じで、フライングエルボーによって高く上げた肘を一気に手元に降ろしてくるときの位置エネルギーによって、スイングにパワーが伝わるようになるのです。
バットを加速させる距離を稼ぐことも出来るので、より速いスイングで鋭い打球を飛ばすことが可能になります。
当然飛距離も伸びることになるので、長打を狙いたいバッターはフライングエルボーを取り入れるべきと言えるでしょう。
インコースに強くなれる
フライングエルボーを採用しているプロ野球選手を見れば一目瞭然ですが、インコースに強いバッターが多いです。
というのも、フライングエルボーでは肘を大きく上げた位置から振り下ろすので、インサイドアウトのスイングがしやすいという利点があります。
インサイドアウトとはバットのグリップ側からピッチャー方向に出し、身体に近いところから前方に押し出すようなスイングのことです。
このインサイドアウトのスイングによって、身体に近いインコースにもバットの芯を合わせることが出来ます。
インコース打ちの理想的な形を作りやすいのが、フライングエルボーの打ち方なのです。
肘の動きで勢いをつけているため身体の回転もしやすいので、厳しいインコースにも対応できるでしょう。
フライングエルボーのデメリット
フライングエルボーの絶大なメリットについてご紹介しましたが、実は気を付けなければならないデメリットも存在します。
- ヘッドが下がりやすい
- 身体が開きやすい
ヘッドが下がりやすい
スイングの際に、バットのヘッドが下がってパワーが上手く伝わらなくなってしまう懸念があります。
ヘッドが下がるとは、インパクトの際に二の腕の延長線上よりもバットのヘッドが下にある状態です。
ヘッドが下がったままミートしようとすると、打球にスライス回転がかかってファールになりやすいです。
また、腕の延長線上にバットが来ないため、目線とのズレが大きくなって空振りも増えるでしょう。
そうならないためには、「コック」といって、手首をしっかり起こして親指側に倒すことを意識すると良いです。
身体が開きやすい
バッティングの際には、スイングしたときにピッチャー側の肩が早く開きすぎると打てません。
肩の開きが早いと、バットも出にくい上にパワーが上手く伝わらないからです。
バットのヘッドも走らず、弱い打球しか打てなくなるでしょう。
フライングエルボーを採用するときは、上半身だけでスイングする形になると体が開いてしまいます。
足の踏み込みや「割れ」もしっかり意識して、投手側の肩で壁を作ってミートすることを心がけて振りましょう。
フライングエルボーの注意点
フライングエルボーはメリットが大きく、デメリットもしっかり練習して意識付けすれば克服できます。
さらに、フライングエルボーを上手く身体に馴染ませるための注意点についてもご説明しておきましょう。
- 肘を上げたままスイングしない
- 肩に力を入れすぎない
肘を上げたままスイングしない
フライングエルボーといえども、肘を上げているのはいわゆる「トップ」の位置までです。
トップからスイングを始動する際には、上げていた肘をおへその前に潜り込ませるように下げてきます。
この肘の上下の動きの分だけ、スイングに加速が生まれるのです。
肘を上げたままスイングしようとしても、バットが身体から離れてドアスイングになってしまうでしょう。
肩に力を入れすぎない
フライングエルボーで構えていると、肘を上げることに意識が行き過ぎて肩に力が入ることがあります。
構えの段階で筋肉が緊張していると、そこからスムーズにバットを振りだすのは難しいです。
フライングエルボーなので肘を上げて脇を空けるのですが、あくまでも肩の力は抜いてリラックスすることがポイントになります。
スイングスピードを加速させるための動作なのに、余計な緊張を生んでしまっては本末転倒です。
もしフライングエルボーを取り入れようとすると、かえってガチガチになってしまうという方がいたら、おそらくフライングエルボーとは相性が悪いと思います。
一番は自分に合った打撃フォームでアプローチすることなので、必ずしもフライングエルボーにこだわることはないですからね。
フライングエルボーとヒッチコック
フライングエルボーの大きな目的はスイングの力強さですが、さらにある動作を加えることでより一層打撃のパワーを生み出せるケースもあります。
それが「ヒッチ&コック」という動作です。
「ヒッチ」とは、ピッチャーの投球モーションに合わせて、構えたときの両手を少し上下に動かす動作のことです。
この動画の丸選手のような動きが代表的な「ヒッチ」になります。
トップを作るときに、グリップの位置が一度下に下がってから再び上がっているのが確認できますでしょうか?
また、「コック」とは、手首を親指方向に倒してバットをピッチャー側に入れる動作のことです。
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この動画で、元プロ野球選手のポンセ氏が解説しています。
このヒッチとコックという打撃に重要な二つの動作は、フライングエルボーと組み合わせることでより大きな効果を生み出します。
人間は、ゼロの状態から一気にフルパワーで筋力発揮するのは難しいです。
そのため、ヒッチやコックのように予備動作があることでパワーを引き出しやすいのです。
また、フライングエルボーもヒッチ&コックも、共通する点がいくつかあります。
それは
- バットの加速する距離を稼ぐ
- スイングに勢いをつける
- インパクトで球威に負けない腕の形をつくる
という3点です。
フライングエルボーとヒッチ&コックを意識して普段から練習に取り組むことで、今よりも大幅に打撃成績がアップすることも考えられます。
どれも一瞬で簡単に身に着けられるものではありませんが、まずは一流選手の打撃フォームを真似することで、遊び感覚で覚えていきましょう。
まとめ:フライングエルボーで長距離ヒッターに
- キャッチャー側の腕を上げて構える
- スイングに勢いが付きやすい
- 打球速度や飛距離が向上する
- ヘッドが下がらないように注意
- 肩の開きが早くならないように注意
- インコースの苦手克服の一手としても
- ヒッチやコックも併せて意識すると良い
いかがでしたか?
フライングエルボーは、野球界でも小さな革命を起こしている技術だと言えます。
身体が小さくても、効率的なスイングをすればホームランは打てるようになるはずです。
少しでもパワーロスの少ないスイングを身に着けて、中軸を任される打者になりましょう!