野球の練習で代表的なメニューの一つである、ティーバッティング。
フリーバッティングやトスバッティングと並んで、多くの野球チームがティーバッティングを取り入れています。
少年野球や高校野球はもちろん、プロ野球選手もティーバッティングを重要な練習メニューとして採用していますよね。
しかし、一部では、「ティーバッティングは意味やそのやり方をしっかり把握できていないと効果が無い」と言われているのも事実です。
プロ野球でも三度の三冠王に輝いた落合博満氏も、何となく行うティーバッティングは意味がないと言っています。
そこで今回は、多くのチームが取り入れているティーバッティングという打撃練習について、その意味や正しいやり方をご紹介していきます。
ティーバッティングの練習効果をアップさせる方法も公開していきますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
ティーバッティングとは
ティーバッティングは、斜め前から下手投げでトスしてもらったボールを打つ練習です。
多くのティーバッティングでは、至近距離においたネットに向かって全力でボールを打ち込みます。
このやり方が基本です。
応用として、「ロングティー」という練習もあります。
通常のティーバッティングでは至近距離にネットを設置しますが、ロングティーではネットを置きません。
ホームベースやフェアとファールを分けるライン上から、外野に向かって打ち込みます。
ロングティーでは打球の飛距離などが把握できるので、スイングの力強さの確認としても取り入れられていますね。
ただ、多くの野球チームでは、多くのメンバーが一度に練習しなければならないという都合もあります。
その点、限られた場所でも練習できる、至近距離での通常のティーバッティングを行うことが多いでしょう。
ティーバッティングとトスバッティングの違い
野球を始めたばかりの方などでよく混同されるのが、ティーバッティングとトスバッティングです。
ティーバッティングは前述のように、下からトスされたボールを全力でスイングして打ち込みます。
一方でトスバッティングは、ティーバッティングよりも離れた距離でピッチャー役が軽めに投球したボールを打ち返します。
打ち返すときも、ワンバウンドでピッチャーに返るような弱い打球を打つのです。
ティーバッティングのメリットや意味についてはこの後の章で解説しますが、トスバッティングとは全く異なる目的があります。
トスバッティングは、軽いミートでバットがボールに当たる感覚を養うのが目的です。
バットの芯でボールを確実に捉えることや、狙ったところにボールを打ち返すバットコントロールの向上が主な目的になります。
また、トスバッティングは軽い守備練習という側面もあるので、練習の序盤のウォーミングアップも兼ねて行うチームが多いでしょう。
ティーバッティングの意味と目的
ティーバッティングは野球チームのほとんどが取り入れている練習だけあって、打撃力向上に大きなメリットがいくつかあります。
ティーバッティングを行う意味について、まずは整理しておきましょう。
- 自分のポイントを確認する
- バッティングフォームを固める
- スイングスピードを上昇させる
- スイングの軌道を修正する
- 打球の弾道を上げる
打撃のポイント確認
ティーバッティングはただ単にスイング数を重ねるだけでなく、自分が最もパワーが出せるポイントを確認する意味があります。
打撃の「ポイント」とは、バットとボールが当たる位置のことです。
ポイントは主に前後の位置で確認するもので、ピッチャー寄りの位置かキャッチャー寄りの位置かで打球の質が変わります。
打撃フォームや投球のコースによって、最も力が伝わりやすいポイントは変わるものです。
その最適なポイントを、ティーバッティングを通して調節しながら確認していきましょう。
フォーム固め
バッティングで打率を向上させるには、自分の意図したところにバットを出せる技術が必要になります。
自分がイメージした通りにバットを出すことが出来れば、ボールをジャストミート出来る確率が上がるからです。
そのためには、同じバッティングフォームを毎打席再現できることが大切になります。
そこで、ティーバッティングで何度も自分のフォームを確認して、定着させるという意図を持って行いましょう。
スイングスピードアップ
ティーバッティングでスイング数を重ねることによって、スイングスピードをアップさせることにも繋がります。
素振りを繰り返すこともスイングスピードの向上に繋がりますが、ティーバッティングではボールの衝撃も加わりますよね。
その分使われる筋肉や負荷が違うので、スイングの速度を上げることに繋がるのです。
スイングの軌道修正
スイングの軌道は、一般的にダウンスイングとレベルスイング、アッパースイングの3つに分けられます。
昔はダウンスイングが推奨されていましたが、今は打撃の解析が進み、レベルスイングから微妙なアッパースイングに近いスイング軌道が最も安打が出やすいとされています。
ヒットが出やすいスイング軌道を定着させるには、実際にボールを打ちながら飛び方をチェックするのが効率的です。
その点、ティーバッティングで実際にボールを打ちながら行うことに意味があります。
弾道のアップ
弾道とは、打球が上がる角度のことです。
当然ですが、速い打球で高い弾道の方が長打になりやすいですよね。
弾道が低くてゴロが多いバッターは、守備側も守りやすいですしバッテリーも攻めやすいバッターだと言えます。
ポップフライになってしまっては意味がないですが、ある程度弾道が高い方がヒットの確率も高いことが最近のデータで判明しているのです。
その弾道をアップさせるためには、ティーバッティングでボールにコンタクトする位置を確認することが有効な方法になります。
ティーバッティングから高い弾道の打球が飛ぶようにスイングすることで、自然とヒットが出やすいスイングが身につくわけですね。
ティーバッティングは意味がない?
ティーバッティングはバッティング能力アップに非常に大きな意味を持っている練習方法ですが、意図を持って行わないと練習効果も半減します。
ティーバッティングでよく言われる、デメリットの部分も把握しておきましょう。
- ボールが来る角度が実践と違う
- ボールの上を叩くバッティングになってしまう
- 実践的なバッティングとは遠い
ボールの角度が違う
ティーバッティングは、斜め前からボールをトスしてもらうのが基本です。
しかも、下からトスしてもらうので、浮き上がってきたボールを捉えることになります。
これは、野球の試合の中でピッチャーが投げるボールとは全く違う角度ですよね。
このことから、ティーバッティングの打撃練習を行う意味を疑問視する声があるのも事実です。
確かに、ティーバッティングの角度に適したバッティングフォームを作っても意味がありません。
これを解決するには、バッターが構える角度を斜めにしないことが重要です。
ティーバッティングを繰り返していると、だんだんと構えの角度が「投げ手」に向かって踏み込むようになってしまいます。
これでは野球の試合と遠ざかってしまうので、あくまで踏み込むのは打ち込むネットの方向です。
試合の打席の中で行うバッティングフォームを意識して、手元に来たボールをしっかり引き付けて打つことで練習効果はアップします。
ボールの上を叩く癖がつく
ティーバッティングで投げられるボールは、下から上へと向かう軌道です。
このボールを叩いて強い打球をネットに飛ばすには、やはり軌道に対して正対するように、ボールの上から叩くことになるでしょう。
これでは確かに、ボールの上を叩くバッティングが悪い癖としてついてしまいます。
ですから、ティーバッティングで良い当たりを連発しても意味がありません。
それよりも、少し擦ったような感じでネットの上の方にボールを当てるイメージでスイングした方が良いでしょう。
実際の野球の試合では、ボールの少しだけ下を叩くイメージの方が大きい打球が打てます。
それをティーバッティングに置き換えると、少し擦ったような当たりになるのです。
ネットを超えるくらいの意識で打った方が、ティーバッティングの意味もあるでしょう。
実践的ではない
ティーバッティングは、トスしてくれる人もバッターのタイミングに合わせてくれます。
ところが、実際に野球の試合ではピッチャーやキャッチャーが、いかにバッターのタイミングを崩すかということを考えているわけです。
しかもボールの軌道も実践とは全く違うわけで、実践とは程遠いですよね。
打席でのタイミングの取り方などは、フリーバッティングやトスバッティングで練習します。
ティーバッティングは、スイング力やミートポイントを確認する練習として分けておきましょう。
ティーバッティングの種類
ティーバッティングを繰り返すことは、バッティングのスキルをアップさせることに有効です。
さらに練習効果を引き出すために、ティーバッティングの少し変わった種類のやり方も覚えておくと役に立ちます。
- 置きティー
- 後ろから投げるティーバッティング
- 背中側から投げるティーバッティング
- 連続ティーバッティング
置きティー
置きティーとは、ティースタンドに置いたボールを打つ練習です。
スタンドティーとも言います。
置いたボールを打つのは一見簡単そうに見えますが、しっかりボールを真横または下から叩かないと、強い打球は飛びません。
しかも、下から投げられる通常のティーバッティングとは違い、投球の軌道は関係ないです。
そのため、より実践に近いスイング軌道でないと捉えられないのです。
インサイドアウトのスイングを身に着ける際にも、非常に役に立つ練習ですね。
後ろから投げるティーバッティング
真後ろから投げてもらうティーバッティングも、少し変わった練習ですが効果があります。
ティーバッティングでは、正面にあるネットに向かって打球を打ちますよね。
ネットの真正面に位置するところからトスしてもらい、ネットに向かっていくボールをバットで追いかけて打つ形になります。
バットを遠回りさせないで最短距離で出すことと、体重移動を身体に覚えこませる練習です。
背中側から投げるティーバッティング
通常のティーバッティングとは、逆の位置からトスしてもらう練習です。
普通は、身体が向いている方向から投げてもらいますが、あえて背中側に位置する方向からトスをしてもらいましょう。
このティーバッティングの目的は、ボールをしっかり引き付けて打つことです。
体重が前に突っ込んでしまっては、速球に差し込まれてしまいますし、変化球を引っ掛けて内野ゴロを打ってしまいます。
それを防止して、しっかり軸足に体重を残したスイングが出来るように、このティーバッティングを取り入れるのです。
連続ティーバッティング
通常のティーバッティングよりも、速いテンポでどんどん振り込む練習方法です。
連続で振るので、スイング数も増えて筋力アップに繋がります。
特に回数を振ってスイングスピードをアップさせたいときに、効率の良い練習です。
また、1回1回しっかりトップを作って振らないと意味が無いので、バッティングフォームをしっかり固めることにも繋がるでしょう。
10回連続でも良いですし、強豪校の野球部などは30回や50回といった連続ティーバッティングを行うこともあるようです。
ティーバッティングの事故を防ぐ投げ方
ティーバッティングは、近距離で投げ手と打者が接するので、特にケガなど事故に注意しなければなりません。
- トスする位置
- 投げ手の角度
ティーバッティングで特に注意しなければならないのが、上記の2点です。
トスする役の人は、バッターにしっかりストライクゾーンに投げなければいけません。
ボールゾーンにトスしたり、ピュッと速すぎるトスだとバッターもミートするのが難しくなります。
スイングが崩れて、思わぬ方向に打球が飛んでくるかもしれません。
バッターとリズムを合わせて、打ちやすいところに投げましょう。
また、投げる人がいる位置も重要です。
ティーバッティングは基本的に緩いボールを打つことになるので、流し方向よりも引っ張り方向の打球が多くなります。
練習意図をバッターと入念に確認しておき、絶対に打球方向に入らないようにしてください。
まとめ:ティーバッティングは目的意識が大切
- ミートポイントの確認が出来る
- スイングスピードがアップする
- 打撃フォームが固まる
- スイング軌道がチェックできる
- 弾道も上げられる
- しっかり手元まで引き付けることが大切
- ボールを打ち上げるイメージで打つ
- ティーバッティングでの「良い当たり」は意味がない
ティーバッティングを意味のある練習にするためには、このバッティング練習にどんな意味があるのかを考えながら行うことが大切です。
ただ回数をこなすだけでは、筋力は付くかもしれませんが、「打てるバッター」にはなりません。
ヒットを打つためには、バットとボールが当たるタイミングを計らないといけませんし、適切な位置にミートしなければダメです。
とはいえ、いきなりピッチャーが投げる速いストレートをジャストミートするのは難しいですよね。
まずはティーバッティングの緩いボールを、しっかり意図してアジャストできることが大切です。
バッティングのスキルをアップさせるためにも、ぜひティーバッティングを取り入れてみてくださいね。