野球の「ショート」と言えば、投手以外に8つある守備位置の中で花形のポジションと言われます。
少年野球でも、野球が上手くて運動能力が高い児童はショートを任されることが多いです。
実際にプロ野球やメジャーリーグでも、全身にバネがあって足の速さや守備の上手さが際立つ選手が多いでしょう。
そんなショートというポジションは、どのような役割を担っているのでしょうか。
今回は、野球のショートに必要な能力や守備のコツについて紹介していきます。
ショートの守備位置
野球のショートは「センターライン」という言葉で表現されることがあり、各守備位置の中でも重要度が高いポジションとなっています。
ちなみにセンターラインとは、ショートのほかに、セカンドやセンター、キャッチャーを含めて表現されることが多いです。
日本語では「遊撃手」という表記で、英語では「shortstop」(ショートストップ)、数字では「6」となります。
高校野球までは、ショートのレギュラー選手に背番号6が与えられるのが一般的です。
ショートの定位置は、セカンドベースとサードベースを結んだ線よりも少し後ろ側で、レフトとの間になります。
打球が飛んでくる頻度が高いポジションとされ、自分で打球を処理しなければならない場面が多いのも特徴です。
さらに、二塁も三塁もベースカバーに入らなければいけない上に、ランナーの状況によってはキャッチャーから返球がある度にピッチャーの後ろでカバーリングまでします。
直接ショートが関わるプレー以外にも、動かなければいけない場面が多いのもショートの宿命ですね。
内野のまとめ役を任されることもあり、技術面だけでなく精神面でもチームの支柱となる選手が多いです。
ショートの役割
ショートは内野の中心的存在ですが、その役割も多いです。
一つずつ確認していきましょう。
- 三遊間の打球処理
- 外野からの送球の中継
- 2塁や3塁のベースカバー
- 三塁手、二塁手、投手のプレーのカバーリング
打球処理
ショートの定位置がセカンドベースとサードベースの間あたりにありますから、その付近に飛んだ打球に関しては遊撃手が処理します。
また、多くの場合は三塁手よりも遊撃手の方が守備範囲が広いので、サード寄りの打球も深く追わなければなりません。
打者との距離も内野手の中では遠い方ですから、三塁後方に打ちあがったファールフライもショートが捕球するケースが多いです。
セカンドベース付近に転がったゴロについても、ショートがキャッチした方が勢いそのままに一塁へと投げやすいため、二塁手が捕るよりも遊撃手が捕った方が良いでしょう。
外野陣の中では、レフトがあまり守備に重きを置かない選手となっているオーダーが多いはずです。
そうなると、必然的にショートの守備的な負担は増します。
外野からの中継
外野に打球が飛んだときには、それを内野へと繋ぐカットマンの役割も担います。
例えばランナー1塁で左中間に長打を打たれたときには、1塁ランナーが本塁突入を狙う可能性がありますよね?
そこに備えて、外野からの返球をショートが受けます。
ランナー2塁のときも同様で、深めの左中間への打球の場合はショートが中継になることが多いでしょう。
強肩が必要になる場面が多いので、ショートにはピッチャー経験者など肩の強い選手が多いですね。
ベースカバー
ショートは、2塁のベースカバーに入ることもありますし、3塁のベースカバーに入ることもあります。
例えばランナー1塁でセカンドゴロが飛んだら、ゲッツーを狙うためにショートが2塁に入って送球を待つはずです。
同じランナー1塁でも、3塁手が前進しなければならないようなボテボテのサードゴロが飛んだ場合には、一塁送球後に備えてショートが3塁ベースカバーに入ります。
サードが打球を処理して1塁でアウトを狙う間に、1塁ランナーが2塁を蹴って3塁に進んでくる可能性があるからです。
このように、ランナーの状況に加えて打球方向によってもショートがベースカバーに入るべき位置が変わってくるということですね。
カバーリング
自分が直接的にボールに触れなくても、他人のプレーをバックアップしなければなりません。
三遊間寄りのサードゴロの際は、三塁手の後ろ側に回り込んでカバーします。
2塁ベース寄りのセカンドゴロが飛んだら、二塁手の後ろに走りこんでカバーです。
また、ランナーが3塁にいる場合、投球ごとにキャッチャーからピッチャーへと返球される際にカバーが必要になります。
万が一捕手が悪送球をしたり、投手がキャッチミスをしたときに3塁ランナーがホームに還らないようにするためです。
このように、ショートの役割は広範囲に渡りますから、野球を良く知っていて運動量も豊富にこなせる人材が必要ということですね。
ショートの動き方
ショートの動き方は少し複雑な部分があるので、ケース別に基本を見ておきましょう。
打球を追う場合
ショートが打球を追うのは、自分の守備範囲に飛んできたゴロやフライはもちろん、センターからレフト方向に飛んだ打球に対してもスタートを切ります。
外野までボールが転々としている場合は、一緒に打球を追って外野からの中継プレーに備えましょう。
その間のセカンドベースカバーは、二塁手が行います。
ベースカバーに入る場合
セカンドベースからライト側に打球が飛んだ場合は、基本的にショートはセカンドベースカバーに入ります。
打球を追うのは二塁手に任せて、ランナーの進塁に備えましょう。
また、ランナーが1塁や2塁にいるときにボテボテのサードゴロが飛んだら、三塁手のバックアップをしつつ3塁ベースカバーに入ります。
このように、打球方向によってショートが動くべき場所が決まってくるので、打者ごとに周囲の野手と動きを確認しておきましょう。
ショートの特徴
野球のショートは、他のポジションには無い特徴をいくつも持っています。
- 動き方が難しい
- カッコいいと憧れられるポジション
- 野手の花形的ポジション
- 積極的な性格の選手が多い
ショートの一般的なイメージと言えばこんなところでしょうか。
やはり内野の中でも、動き方が複雑で難しいというイメージも強いです。
打球処理だけでも三塁手、二塁手、投手と連携しなければならないですし、ベースカバーも同様です。
さらに、セカンド牽制の際も二塁手がベースに入るのか遊撃手が入るのかルールを決めておかないと、無用な進塁を与えてしまいます。
守備範囲や役割が多い分、内野の花形的なポジションでもあり、多くの野球少年の憧れの的になりやすいのも事実です。
現にプロ野球で長くショートのレギュラーを張っている選手は、人気も高い選手が多いですからね。
(例:巨人の坂本選手、元西武の松井稼頭央選手、元ホークスの川崎宗則選手など)
そして性格的にも、明るくて積極的なタイプが多いのもショートの特徴です。
ショートが消極的ではチームの守備も勢いづかないですし、リズムも生まれません。
フィールドの中心に近い部分にいる野手ですから、雰囲気でもチームメイトを盛り立てられるような性格も必然的になってくるわけですね。
ショートの適正と求められる能力
ショートは、チームの中で守備においても攻撃においても中心となる選手がつくことが多いです。
いわゆる「スター選手」が多いのもショートですが、一体どのような能力が求められるのでしょうか?
- 足の速さ
- 肩の強さ
- 判断力
- 周囲への気配りと安心感
- 攻撃面での貢献
ショートにあると望ましいのはこれら5つの能力です。
足の速さ
ショートは単純に守備範囲が広いので、足が速くないと務まりません。
三遊間、二遊間、レフトやセンターとの間など広範囲に動く必要があります。
足が遅くてショートのレギュラーを張っている選手は、皆無であると思っておいた方が良いです。
横にも縦にも瞬発的な動きが求められます。
肩の強さ
ショートはファーストベースまでの距離が遠いですし、特に三遊間の深い位置での打球をキャッチした場合はノーステップで長い距離を投げなければなりません。
そのため、肩の強さが必要です。
プロ野球でも、元々学生時代に投手として活躍していた選手も少なくありません。
外野から中継を受けた際も、バックホームで強烈な送球が出来ないと相手チームはどんどん走ってきます。
抑止力にするためにも、ショートの肩の強さは必須と言えますね。
判断力
同じアウトカウントや同じランナーの状況でも、打球方向や質が違うだけでショートが動くべき方向は逆になります。
そのため、様々なパターンを頭の中で整理しておいて、とっさの判断で瞬時に動ける判断力が求められるのです。
ショートはチーム内でも1,2を争うほど野球を良く知っている人物が務めることが望ましいでしょう。
精神的な支柱
ショートは内野の中心となるポジションでもありますし、ピッチャーを含めて周囲に声をかけていくことも求められます。
チーム内でも最も守備が上手い選手がショートを任されることが多いので、エラーを連発してしまうと味方の士気低下を招くわけです。
例えエラーしても引きずることなく、前を向いてプレーできる精神的な強さも必要ですね。
攻撃面での貢献
本来ショートは守備の負担が大きいポジションですから、あまり打撃力が無くても許されるポジションのはずでした。
しかし、プロ野球でも元西武ライオンズの松井稼頭央選手や、元千葉ロッテマリーンズの西岡剛選手、元阪神タイガースの鳥谷敬選手などの出現により、ショートでもトップクラスの攻撃力を求められるようになった側面があります。
守備特化型のスキルというより、高い打率と長打も打てるパワーを秘めた、いわゆる5ツールプレイヤーがショートの理想像とされている風潮がありますね。
ショートの野球選手
ここまでショートの役割や特徴についてご紹介してきましたが、実際にどのような選手がショートして活躍したのか実際のプロ野球選手をみていきましょう。
宮本慎也
通算2000本安打を記録した名球会メンバーですが、なんといってもその守備力は歴代のプロ野球選手全体を見渡してもトップクラスと言われています。
遊撃手部門でゴールデングラブ賞を6回取り、三塁手部門でも4回受賞するというまさにゴールデングラブ賞の常連ともいえる選手です。
シーズン67犠打という日本記録保持者でもあります。
小坂誠
盗塁王を獲得したこともある俊足を活かした守備範囲と、打球判断の良さで「小坂ゾーン」と呼ばれるほど相手チームの脅威となっていた遊撃手です。
今でも、歴代最高の遊撃手は誰か?という話題になると、必ず名前が挙がる人物でもあります。
セイバーメトリクスの観点でも、歴代のショートの中でトップクラスの守備力を誇っていることが証明されました。
松井稼頭央
両打ちでありながらトリプルスリーを達成するほどの攻撃力と、盗塁王を獲得した俊足、高校時代PL学園のエースピッチャーだったという肩の強さまで兼ね備えていた選手です。
今のプロ野球選手は、内野手ならほとんどの選手が全盛期の松井稼頭央選手に憧れていたはずです。
今宮健太
広い守備範囲と、高校時代甲子園でMAX154キロを記録した異次元の肩の強さ、3年連続二桁本塁打を記録するパンチ力も兼ね備えた遊撃手です。
現役選手の中でも、球界ナンバーワンショートの呼び声があります。
源田壮亮
前述の今宮選手と並んで、現役ナンバーワンショートとして名前が挙がるのがこの源田選手です。
今宮選手のような派手なプレーではなく、堅実で確実性の高い守備が売りとなっています。
守備範囲も非常に広く、スローイングの正確性も群を抜いているのが特徴です。
西武ライオンズに入団後、それまで今宮選手の独壇場だったゴールデングラブ賞遊撃手部門でその座を奪い取った人物でもあります。
オジースミス
アメリカのメジャーリーグで、MLB史上最高のショートと評されることもあるのがこのオジースミスです。
なんと13年連続でゴールデングラブ賞を獲得した、守備の名手と言われています。
盗塁王と獲得したこともある脚力と跳躍力を活かし、ダイナミックなプレーでファンを沸かせました。
まとめ:ショートには俊足が求められる
ショートはとにかく動く範囲が広いですし、瞬時に的確な位置に移動しなければなりません。
そのため、強肩と俊足がどちらも求められる過酷な守備位置とも言えます。
実際にプロ野球でも、盗塁王獲得経験者はショートに多いので、やはり身体能力の高さがカギということですね。
野球の練習だけでなく、身体能力を高めるトレーニングも行い、レギュラーを獲得して守れるように頑張りましょう。