結局、どっちがいいんやろうなってとこやな?
右打ちか左打ちか、野球を始めたときに一体どのような過程で自分の打席を決めたか覚えていますか?
今の日本では、右投げ左打ちの選手が増えています。
確かに今年(2020年)からメジャーリーグに挑戦した筒香選手や、秋山翔吾選手は右投げ左打ちです。
少しさかのぼると、松井秀喜選手やイチロー選手が日本球界でずば抜けた成績を残し、メジャーリーグでも大活躍したあたりから右投げ左打ちが増えたと言われています。
その結果、日本の野球界では右投げ左打ちの選手が飽和状態になっているというのです。
果たして、本当に右投げの選手が左打ちで野球を始めるのは理になかった選択なのでしょうか?
そこで今回は、
- 右打ちと左打ちの適正判断の仕方
- メリット・デメリット
- 右投げ左打ち
- 左打ちに転向するコツ
についてご紹介していきます。
右打者と左打者どちらが向いているか
- 振ってみて気持ち良くスイングできる打席
- 利き腕によって判断する
- 身体的な特徴で判断する
- 雑巾を絞ったときの手の位置で判断する
おそらく、左投げの選手はほとんどが左打ちで野球を始めると思いますし、そのまま左打ちで練習を継続するはずです。
実際に左投げ右打ちの選手もいますが、野球界全体で見ればかなり少数派になります。
問題は右投げの選手で、右打ちで取り組むか左打ちで取り組むか、特に野球を始めたばかりの子供に関してはかなり悩みどころになるでしょう。
気持ちよく振れる打席で始める
一番良いのは、本人がしっくりくる方の打席で野球を始めてみることでしょう。
右投げ右打ちで大成した元巨人の長嶋茂雄さんや、ホームラン王を獲得し横浜ベイスターズや巨人で活躍した村田修一さんなど、右打ちの強打者は歴代でもたくさんいます。
逆に、右投げ左打ちでは松井選手やイチロー選手を始め、現代でもソフトバンクホークスの柳田選手や西武ライオンズの森友哉選手など数多くの好打者がいるわけです。
右投げの選手の打席として、右打ちと左打ちどちらが絶対的な正解であるかというのは答えが出ません。
ですから、基本的には本人がスイングしてみて気持ち良く、しっくりくる方でまずは練習するのが良いのです。
利き腕や体の特徴で判断する
また、利き腕で判断することも出来ます。
右投げの選手は基本的に右利きであることが多いですから、バッティングの際に右手で強くボールを押し込める右打ちの方が一般的に飛距離が出やすいです。
稀に、普段の生活は左利きでもボールを投げるときだけ右手という選手もいます。
そういった人は、左打ちの方がボールを強く押し込めるかもしれません。
あとは、どういったプレースタイルをしたいかということにもよります。
利き腕である右手で強くボールを押し込み、強い打球やホームラン性の打球を狙っていきたい場合は右打ちの方が良いでしょう。
右投げの場合、ボールを投げるときの身体の回転と、右打ちでスイングするときの身体の回転は同一方向です。
そのため、スイングの筋力も強く鍛えられやすい傾向があるわけですね。
そうではなく、足の速さを最大限に活かしたいという選手は左打ちの方が適しています。
単純に、左打席の方が一塁ベースに近いですし、スイングの方向が左から右に回転するのですぐに走り出せますからね。
足の速さが周りより抜けていて、ちょこんと当ててとにかく出塁率を稼ぐというスタイルを目指すならば左打ちの方が良いです。
雑巾を絞ったときの手の位置
野球とは関係なさそうに思えるかもしれませんが、濡れた雑巾を絞るときの手の位置でも右打ちと左打ちの適正に関わることが判断できます。
絞る動作をするときに、右手が上に来るなら右打ち、左手が上に来るなら左打ちの素質があると見ても良いでしょう。
無意識のうちに、力が入りやすい握り方をしているということですから。
次の章では、そのあたりを整理していきましょう。
右打ちのメリットとデメリット
右投げの右打者は、一般的にパワーヒッター系の選手が育ちやすい傾向があります。
右打者のメリット
- 利き手(右手)でボールを強く押し込める
- 左打ちに比べて打撃フォームを崩されにくい
- 左投手を打ちやすい
右利きの選手が右打ちになる最大のメリットは、ミートの際に右手でバットを強く押し込めるということです。
これにより、ピッチャーが投げるボールの球威に負けずに強いインパクトをすることが出来ます。
西武ライオンズの山川穂高選手や、日本ハムファイターズの中田翔選手など、大砲と呼ばれる右投げ右打ちの選手が多いのはこのためかもしれません。
また、バッティングにおいてスランプに陥る最大の原因は、投手側の肩の開きが早くなることです。
バッティングは回転動作なので、強く打とうという意識が強すぎると肩の開きが早すぎてバットが置いていかれてしまいます。
左打者の場合は打った後に走り出す方向とスイングの回転方向が同じなので、より肩の開きが早くなりやすい傾向があるわけです。
その点右バッターなら、スイングの方向と走り出す方向が逆なので、比較的悪い癖がつきにくいと言われています。
さらに、一般的には右打ちの場合は左投手と相性が良い傾向があります。
身体が正対した方向からピッチャーの腕が出てくるので、リリースポイントが見やすいことが要因の一つです。
右打者のデメリット
- ファーストベースから遠い
- 右投げサイドスローが打ちにくい
右打者が左打者と比べたときの最大のデメリットは、やはり1塁ベースからの距離です。
左打者と比べれば、走り出した時に1歩か2歩分は差が出ます。
このわずかな差が、内野安打か凡打かを分けるわけですね。
特に足の速いバッターなら、左打者に転向するだけで内野安打が急増するはずです。
右打ちのスイング方向(右から左)と1塁へ走り出す方向が逆なので、打った後に走り出すのがより遅れやすくなります。
また、サイドスローやアンダースローのピッチャーと対戦したときには、右打席の方が不利です。
数でいえば、左投げよりも右投げのサイドスローやアンダースローピッチャーの方が多い傾向があります。
右投げサイドスローに対して右打席に入ると、背中側からボールが来るような感覚なので非常に見にくいです。
このように、左打者とは決定的に違う部分があるわけですね。
左打ちのメリットとデメリット
左打ちは、一般的に俊足を活かすために転向する選手も多いです。
左打者のメリット
- 1塁ベースに近い
- 打った後にすぐ走り出せる
- 右投手と有利に対戦できる
やはり左打ち最大のメリットは、1塁ベースへの距離ですね。
具体的な数値でいうと、およそ70センチの差があると言われています。
もちろん打席内で立つ位置によって変わってくるわけですが、70センチ違えばギリギリの内野安打は急増するはずです。
さらに、左打者のスイングは左から右方向に向かって回転します。
その勢いのまま1塁に向かって走り出すことが出来るので、実際には右打席との距離以上に差が出るでしょう。
また、野球界では一般的に、「右投げ対左打ち」「左投げ対右打ち」というマッチアップでは、打者の方が有利であると言われています。
これは、自分の身体の正面側からボールを見られるからです。
やはり右投げ投手の方が左投げよりも多いですから、その点でも左打席は有利であると結び付けられます。
左打ちの方が、1塁に近いのは、絶対とくや!
左打者のデメリット
- 身体の開きが早くなりがち
- 利き腕で押し込めない
- プレースタイルが制限されることも
左打者の場合、無意識のうちに「打ってからすぐ走り出そう」という身体の動きになってしまいます。
そのため、スイングの際に身体の開きが早くなりすぎて、かえってバットのヘッドが出てこないという事態に陥ることがあるのです。
プロ野球で唯一、三度の三冠王を獲得した落合博満さんも、スランプに陥ったときに左打者の方が長引きやすいという趣旨の発言をしていたことがあります。
身体の開きが早いと、ボールを最後まで見られなくなりますからミートの精度も下がるわけです。
また、右投げ選手の左打ちでは、利き腕でインパクトの際にグッと押し込むことが出来ません。
日本に来る助っ人外国人選手で、パワーが売りの選手に右投げ右打ちが多いように、飛距離を出すためには捕手側の腕で押し込むことが大切なのです。
さらに、少年野球を始めとする学生野球の場では特に、ちょっと足が速い左打ちの選手はコツンと当ててゴロを転がすことを要求されます。
それが間違っているわけではありませんが、野球の醍醐味として遠くに飛ばすことや思いっきりスイングするという楽しさを味わうには、少しもったいない戦術です。
これらも相まって、右投げ左打ちの選手が増えすぎることに警笛を鳴らす風潮も出てきていますね。
右投げは変えきらんし、それなら左打ちはやめたがいいってこと?
右投げ左打ちは止めた方がいい!?
ここまで解説してきたように、右投げ左打ちになることでデメリットが生まれてくることも事実です。
もし野球の中でバッティングに関する楽しさを、
- 遠くに飛ばす
- ホームランを狙う
- 豪快なフルスイング
であると定義するなら、右投げの選手があえて左打ちになることは避けた方が良いかもしれませんね。
身体の使い方でいえば、利き腕である右手で押し込むようなスイングをした方が力が伝わりやすいですから。
ただ、ヒットの確率ということでいえば、やはり左打ちの方が優位です。
野球は一流打者でも3割の打率と言われます。
その中でも、全てがキレイなクリーンヒットであるわけではありませんよね。
ボテボテの内野ゴロに打ち取られたような当たりを、俊足で内野安打にするケースだってあります。
内野安打が出やすいのは間違いなく左打ちです。
そして、どんな形でも「安打」という記録が残ることでバッターのモチベーションは上がります。
モチベーションがアップすることで、次の打席以降で好結果に繋がるというメンタル面のメリットも加味すれば、トータルで見て左打ちの方が良いという見方も出来ますよね。
ですから、自分の理想とするプレースタイルや、チーム状況を鑑みて決めるのが良いかもしれません。
例えば
- 俊足を活かすために左打者になる
- 豪快なホームランこそ正義だと考えるから右打者でいく
- チームに左打者がいないから、左打者になる
といったように、柔軟に右打ちと左打ちを考えてみても良いのではないでしょうか。
監督の立場で考えれば、チームに左打者がほとんどいない状況なら、左バッターの出現はスタメンへの近道でもあります。
野球をやる上で自分の中での優先事項を頭で整理し、右打ちと左打ちを選択できると良いですね。
何事も挑戦せずして諦めるべからずや!
左打ちに転向するコツ
ほとんどの場合、右投げの方は右打ちで野球を始めるはずです。
しかし、何らかの理由で後天的に左打ちに転向することはあるでしょう。
- 右打ちとは別人のプレースタイルで
- 日常生活で左腕も鍛えておく
- ダメなら右打ちに戻す
同一人物が右打ちから左打ちに転向した場合、そのプレースタイルは右打ちのときとは変化させるべきです。
わざわざ左打ちに転向するのですから、それ相応の理由があるはずですよね。
左打ちに転向した末に、右打ちのときの同じような特徴を持った選手が出来上がってしまうのなら、そもそも左打ちに転向する必要がありません。
流し打ちを増やして足の速さを活かすのか、引っ張り技術を活かして進塁打ならいつでも確実に打てる選手になるのか、左打ちに転向する目的をハッキリさせるのもコツの一つです。
その際、左打ちを上手くいかせるためには左手の強化も必要でしょう。
単なる筋力強化だけではなく、意図した通りに利き腕とは逆の左腕を動かせるようになるトレーニングが必要です。
お箸を左手で使ったり、ペンを左手で書いたり、日常生活の中で左手を使うという機会を増やすのも良いトレーニングになります。
自分が納得できるまで取り組んでみて、それでもしっくりこないなら右打ちに戻すのもアリです。
一時的に左打ちに取り組んだことで、意外と右打ちの打力が上がっているということもあります。
まとめ:右打ちも左打ちも目的を明確に
右打ちも左打ちも、どちらも全くことなるメリットデメリットがあることがわかりました。
自分がどんな選手になりたいのか、どちらの方がより試合に出やすいのか、そういった様々な環境を考慮して右打ちと左打ちを決めるのも良いでしょう。
ただ最も大切なのは、楽しく野球が出来るということです。
野球を始めたばかりの子供や初心者の方に、右打席か左打席どちらかを強要するのではなく、本人の意思を尊重することが最も大切かもしれませんね。