ストレートは野球の投手において基本であり、キャッチボールの基本でもあります。
しかし、意外とストレートの握り方を深く考え、投げ方まで論理的に考えたことがある方は少ないのではないでしょうか。
野球の場合、ストレートの質が高ければ、投球のほとんどをストレートが占めていても相手打線をしっかり抑えることが出来ます。
プロ野球の阪神タイガースやメジャーリーグでも活躍した、藤川球児投手のような、ノビがあってホップするようなストレートを投げるにはどうしたら良いのでしょうか?
今回は野球のピッチャーの原点に立ち返り、ストレートの握り方や威力をアップさせる投げ方について紹介していきます。
ストレートの握り方
ここまでご説明してきたような、相手バッターにとって脅威となるような理想的なストレートを投げるには、どのような握り方をすればいいのでしょうか?
基本的なストレートの握り方をご紹介していきます。
- 人差し指と中指の間隔は少し開ける
- 人差し指も中指も縫い目にかける
- ボールは浅めに握る
- 親指は縫い目にかけなくてもOK
これが最もオーソドックスで、バックスピンをかけやすいストレートの握り方です。
縫い目にかけるのは人差し指と中指で、2本の指の間は、だいたい指1本から2本分開けます。
縫い目にかける位置によって、フォーシームかツーシームかに分けられるのも特徴です。
フォーシームは縫い目が広くなっている部分を横にして、同じ縫い目に2本の指をかけます。
対してツーシームは、縫い目が狭くなっている部分を縦にして、別々の縫い目に指をかけます。
ボール自体は全体的に浅めに握り、手のひらがボールに触れないくらいで握ると、ストレートの回転数を上げやすいです。
ストレートの投げ方
野球の試合におけるピッチングと、練習中のキャッチボールでは投げ方のコツが違います。
マウンドから質の良いストレートを投げるには、どのような投げ方が適しているのでしょうか。
- 腕を強く振る
- 指先で押し込むように、手首のスナップを使う
- 指先まで鞭のようにしなるイメージ
- グローブを付けている方の肩が開かないように
強くで重いストレートを投げる大前提として、「強く腕を振る」ということが挙げられます。
「投げっぷりが良い」と表現されることもありますが、全力で力強い腕の振りからリリースされるストレートは、実際の数字以上に速く見えますし迫力が増すわけです。
少々のボール球でも、空振りストライクが取れます。
また、ストレートはリリースの瞬間がかなり大切です。
人差し指と中指の指先でしっかりボールに回転を与え、手首のスナップも使います。
肩から指先までが一本の鞭(ムチ)になったように、腕全体のしなりでボールが弾きだされるような感じです。
そして、速いストレートを投げようと意識すると陥りがちな現象に、「身体の開きが早くなる」というものがあります。
投球フォームの中で、グローブを装着している方の肩が早くバッターの方に行きすぎ、胸がキャッチャー方向に正対するタイミングが早すぎるという状況です。
いわゆる「タメ」が無い投球フォームになってしまい、これだとストレートのスピードも体感的な威力も半減します。
最後までグローブ側の身体で壁を作り、リリースの瞬間まで胸を相手に見せないくらいのイメージの方が、力強いストレートが投げられるでしょう。
そもそもストレートとは?
ストレートはその名の通り、素直に真っすぐ進む球種です。
似ている球種としてフォーシームやツーシームなどがありますが、全て直球に分類されます。
特にストレートとフォーシームはほぼ同じ意味で使われることが多く、曲がる落ちるといった変化を意図的に加える球種ではありません。
受けるのはボールが前に進むときに発生する空気抵抗と、重力によって下に引っ張られる力です。
ツーシームは、若干変化球寄りと言えるかもしれません。
シンカーやシュートのように、少しだけ利き腕方向に変化して縦方向にも若干沈むという特徴があります。
ただ、その他の変化球のように第三者から見て明らかな変化があるわけではなく、バットの芯を少し外す程度の変化量です。
そのため、ツーシームも一般的には「ファストボール」いわゆる直球に分類されます。
ストレートと同じく、フォーシームやツーシームもバックスピンをボールに与えて投げる球種です。
何が違うかというと、ボールが回転したときの縫い目の向きが違います。
フォーシームは、ボールが1回転したときに縫い目が4本通るという意味で、ツーシームは同じく縫い目が2本通るという意味なのです。
ボールが回転したときに縫い目がたくさん空気に触れた方が、マグヌス効果という揚力も発生しやすくなります。
そのため、フォーシームの方がノビのある球になりやすいと言えますね。
ツーシームの方が揚力が少なくなるので、空気抵抗や重力によって微妙に下方向と横方向に変化するわけです。
考え方としては、
- ストレートは「直球」全般を広く指す言葉
- フォーシームはよりノビのあるストレート
- ツーシームはバッターの手元で動くストレート
というような認識で大丈夫だと思います。
ストレートの軌道
ストレートの軌道は基本的に真っすぐであり、左右や上下の変化はしないものと思われています。
ただ実際には、地球には重力があるわけですよね。
厳密に言えば、ピッチャーの手から放たれてキャッチャーミットに届くまで、少しも落ちずに一直線の軌道でストレートが行くということはありません。
僅かではありますが、マウンドからバッターボックスに向かっていく過程の中で、少しずつ下に落ちながらストレートは前進しているのです。
その中でもストレートにノビやキレがあり、藤川球児投手のように「火の玉ボール」と形容されるようなストレートは、縦方向への落ち方がより少ない状態です。
野球の一般的なストレートなら重力によって少しずつ下に引っ張られていくわけですが、このようなストレートを投げる投手は稀なので、打者目線で見るとホップしているような錯覚に陥ります。
素晴らしいノビと球威があるストレートは、本当に浮き上がっているわけではなく、そう錯覚させるほど重力による落ち方が少ないということなのです。
ストレートの回転
ストレートの回転は、基本的にバックスピンになっています。
ピッチャーからキャッチャーに向かう進行方向に対してバックスピンになることで、「マグヌス効果」という風の流れによる揚力を生み出します。
このバックスピンによって発生した揚力で、重力に対抗する力が出来て真っすぐ進むのです。
ですから、よりキレがよくノビの良いストレートを投げるには、バックスピンで回転数を増やすことが求められます。
ストレートの回転数が多いほど揚力もアップし、より重力に負けないようになるのです。
ストレートが進行方向に対してキレイなバックスピンであるほどボールは伸びますが、軸の向きがズレるとシュートしたりスライダー方向に若干曲がったりします。
特に日本のアマチュア野球界もプロ野球界も、よりキレイな軸でバックスピンがかかったストレートを理想的としている風潮もありますね。
しかしメジャーリーグでは、あえて回転の軸をズラしたストレートや、空気抵抗を増やしたストレートを投げることで、素直なストレートの軌道から変化させる投球が目立ちます。
俗にいう「手元で微妙に動く」というストレートで、国際大会などでは日本のバッターが外国人ピッチャーのストレートに苦しめられる場面が多いです。
ストレートの理想とは?
野球において「ストレート」と一言で表現しても、投げる投手によってそのボールの質は全く違います。
相手の打者からストレートで空振りを奪ったり、球威で押し込んで凡打を狙ったりするには、どういった質のストレートを投げられるのが理想的なのでしょうか。
- 初速と終速の差が小さい
- ボールが伸びていくように見える
- 体感速度が速く見える
上記3つの要素が合わさると、かなりクオリティの高いストレートと言えます。
まず初速とはピッチャーの手からボールが離れた瞬間の速度で、終速とはキャッチャーミットに収まる瞬間の速度です。
通常は空気抵抗を受けますから、当然初速と終速では差が出ます。
よりバッターにとって厄介なストレートとは、初速と終速の差が限りなく少ないストレートです。
データ上は初速と終速の差が無い状態だったとしても、バッターにとってそれはストレートが加速しながら向かってくるように見えます。
さらにボールがどこまでも伸びて、まるでキャッチャーがいなければバックネットまで突き刺さるのではないかと思わせるほどの軌道でストレートが投げられたら最高です。
普通のストレートは重力で徐々に下へと下がっていくわけですが、質の良いストレートは重力に負けることなく限りなく少ない落差で直進します。
むしろ浮き上がってホップしているように見えるかもしれません。
終速でスピードが落ちにくく、ノビのあるストレートとは、実際のスピードガンで測る数字よりも体感速度が速く感じられます。
これは、緩い変化球とのコンビネーションで、余計にストレートを速く感じさせることもできますね。
ストレート自体にキレがあるピッチャーの場合、球速が130㎞程度でも、150㎞オーバーに感じられることだってあるのです。
ストレートの回転数と軸の向きが重要
こんな理想のストレートを投げるには、具体的にストレートがどのような状態になっていればいいのでしょうか?
- 回転数が多い
- 回転軸の向きが真横に近い
主にこの2つの要素が重要です。
ストレートの回転についての条件で、ストレートの質が左右されます。
一つは回転数で、プロ選手の場合は回転数を測定する「スタットキャスト」と呼ばれるシステムで把握することが可能です。
ちなみに、メジャーリーグの平均は、1分間あたりの回転数が約2200回転となっています。
アマチュア球界でストレートの回転数を計測する機会はあまり無いかもしれませんが、回転数を上げようという意識はとても重要です。
さらに、ストレートをリリースしたときの回転軸の向きも重要になります。
ストレートにはバックスピンをかけるわけですが、その時の回転軸が真横に近い方が、ボールにかかる揚力も大きくなるわけです。
ストレートがナチュラルシュートする原因
日本では特に、ストレートがナチュラルにシュート回転することを、良しとしない傾向があります。
これは考え方によってメリットにもデメリットにもなることで、一概にダメなことだとは言えません。
ストレートがナチュラルにシュートしていた方が、インコースやアウトコースの出し入れが上手く使えるというメリットがあります。
確かに、綺麗な回転のストレートと比べると、シュート回転の方がノビは悪くなるかもしれません。
ストレートにそれほどスピードが無ければ、打ちごろの中途半端なシュートになってしまう可能性もあります。
特に真ん中に入っていくようなコースに投げてしまうと、大飛球を打たれるリスクは高まりますからね。
意図せずストレートがナチュラルシュートしてしまうのには、どういった原因が考えられるのでしょうか。
- サイドスローやアンダースローで投げている
- 身体の開きが早い
- リリース時に手の甲が内側を向いている
- 人差し指の押し込みが強すぎる
主にこの4つの原因が考えられます。
まずサイドスローやアンダースローの場合、オーバースローやスリークォーターのような軸でストレートを投げる方が難しいです。
その場合はナチュラルシュートを活かし、それを込みでの配球にした方が良いでしょう。
意外と多いのは「身体の開きが早い」という投球フォームの欠点ではないでしょうか。
いわゆる「投げ急いでいる」という状態でもあり、胸が打者側に向いてしまうのが早すぎるということです。
これではボールに力が伝わりにくいですし、リリースポイントが身体から離れてしまうのでシュート回転しやすくなります。
後はリリース時の問題で、「手首の向き(手の甲の向き)が内側になっている」か「人差し指での押し込みが強すぎる」といった修正点です。
やはり手首の向きで回転軸が決まりますから、キレイな回転のストレートを投げたい場合は手首を真っすぐ振り下ろす必要があります。
さらに、人差し指と中指を上手く均等に使うというのもポイントです。
これらを一つ一つ意識して練習を積み重ねていけば、着実にストレートの投げ方は上達します。
普段のキャッチボールから意識していきましょう。
まとめ:ストレートの握りを意識してみよう
ストレートは意外と気にせず投げているプレーヤーも多いと思いますが、実は奥が深い球種でもあるのです。
縫い目に指をかける位置や、身体の開き、手首の向きなどに気を配り、一級品のストレートを投げられるように鍛錬していきましょう。
ストレートのクオリティが高ければ高いほど、他の変化球も活きてきます。
まずは全ての投球の原点ともいえるストレートを磨いて、その他の変化球習得にも取り組んでみてくださいね。