スライダーは、今の時代多くのピッチャーが習得している変化球です。
ひと昔、昭和の時代の投手は、変化球といえばカーブというイメージでした。
しかし近年では、スライダーを投げるのがもはや当たり前というくらいに浸透しています。
菊池雄星投手のような快速左腕が投げるスライダーが、右打者の膝元に決まる様は圧巻です。
今回は、そんなスライダーの投げ方や握り方、スライダーを投げる際の注意点などを紹介していきます。
スライダーとは
スライダーとは、「ストレートのような軌道から急激に斜めに変化する」という変化球です。
変化の方向は利き腕とは逆方向で、横に曲がるだけでなく、少し沈みながら斜めに曲がっていきます。
カーブやチェンジアップのように緩い変化球ではなく、よりストレートのスピードに近い変化球です。
ストレートを速球、緩いボールを遅球と表現するなら、スライダーは「半速球」とも言えますね。
キレの良い高速スライダーを投げる投手なら、途中までほぼストレートと見分けがつかないくらいの切れ味を見せます。
右ピッチャーなら左バッターの膝元に、左ピッチャーなら右バッターの膝元に食い込むような軌道です。
スライダーの目的
スライダーの目的は、その変化の性質によって大きく異なります。
大きな曲がりをするスライダーであれば、「空振りを狙う」ということになり、決め球として使われるでしょう。
小さな曲がり幅のスライダーであれば、「凡打を誘う」ということになり、相手のバットの芯を外したいときに使えます。
傾向としては、空振りを狙うウイニングショットとしてのスライダーの方が多いのではないでしょうか。
バットの芯を外す球種なら、スライダーとして投げるよりもカットボールやツーシームの方が主流になっているからです。
スライダーのクオリティが上がってくると、まるでピンポン玉を投げているかのような変化軌道を描く場合もあります。
ストレートとの球速差がほとんどない、いわゆる高速スライダーを投げることが出来れば、ストレートとの2球種のみでもある程度戦うことが出来るでしょう。
スライダーの種類
スライダーはどちからというと横方向に変化する球種としての認識が強いですが、実は大きく分けて2種類のスライダーが存在しています。
- 横スライダー
- 縦スライダー
横スライダーとは、通常のスライダーのことで、横方向へ滑りつつ斜め下に沈むような変化をします。
一方で縦スライダーは、その名の通り真下の方向に落ちていくスライダーです。
落ちるといってもフォークのような落ち方ではなく、強烈なドライブ回転によって下に引っ張られるように落ちていきます。
この二つのスライダーは性質が全くことなりますが、どちらもスライダーに分類されています。
ピッチャー自身の投球フォームや、相手バッターの得意なコースや不得意なコースによって、どちらのスライダーにもメリットがあるでしょう。
横スライダーは、サイドスローピッチャーの方が投げやすいです。
縦スライダーは、オーバースローのピッチャーの方が投げやすいです。
その選手の特徴に合わせて、どちらのスライダーが自分に合っているのか確かめながら、練習を積み重ねていく必要がありますね。
スライダーの握り方
スライダーの握り方にはいくつか種類があり、一つの正解があるわけではないです。
様々なスライダーの握り方を試してみて、自分にフィットする握り方を模索していきましょう。
ここでは、3つのスライダーの握り方をご紹介していきます。
- 縫い目が狭くなっている部分に指をかける
- 人差し指と中指をしっかりかける
- 親指はそのまま下に置く
最もシンプルなスライダーの握り方かもしれません。
ほとんどストレートと同じですが、縫い目が狭くなっている部分に2本の指を置くのが特徴です。
縫い目に対して指を平行に沿わせる形で、リリースのときの手首の向きや指の弾きでボールに回転をかけます。
もう一つのスライダーの握り方も紹介しましょう。
- ストレートの握りを少し外側にずらす
- 人差し指と中指を近づける
- 2本の指を、ボールの外側にずらす
- 中指を縫い目にかける
こちらは普通のストレートの握り方から、指を若干外に移動させたような握り方です。
中指を縫い目にかけているので、リリースの際には中指でしっかりスライダー回転をボールに与えることになります。
2本の指を外に移動させるほど、カーブに近い軌道になるでしょう。
スライダーのスピードと変化量のバランスを見ながら、握る位置を調節してみてください。
もう少し縦方向への変化が欲しいという方は、次の握り方も参考になります。
- 中指全体を縫い目にあてがう
- 親指の腹もしっかり縫い目にあてる
- 中指と親指が対角になるように
中指と親指を対角線上に位置させ、どちらもしっかりと縫い目にかけた握り方です。
ガッチリ縫い目にかけるので、スライダーを投げる際に、ボールにスピンを与えやすくなります。
リリース時の手首の向きや腕の捻り方で、スライダーの変化方向が決められます。
スライダーの投げ方
スライダーは握り方さえ覚えてしまえば、ある程度の変化はさせられます。
ただ、それが試合で相手バッターに効果的に使えるレベルにしていくためには、練習が必要です。
スライダーの質を高めるには、抑えるべきコツがいくつかあります。
- ストレートと同じように腕を振る
- 手首の向きを縦方向にする
- 人差し指か中指で切るように投げる
前提として、スライダーはストレートと似たような軌道を辿ります。
ピッチャーの手から離れた瞬間はストレートに見えて、キャッチャーミットに近づいてきたところで急激に変化するのがスライダーの理想なのです。
バッターの手元であればあるほど、対応が難しくなります。
ですから、なるべくストレート同じ投球フォームでリリースしたいのです。
スライダーを投げるときだけ腕の振りが緩んでしまっては、キレも悪いですし相手にもバレてしまいます。
また、スライダーを投げる際には無理に腕を捻る必要はありません。
腕全体を内側に捻るのではなく、手首の向きを変えて回転をかけます。
小指側を下に向けるようにして、軽く手首を回すだけで十分なのです。
そしてスライダーの回転数を大きく左右するのが、指先でのコントロールです。
握り方によりますが、スライダーのリリースの瞬間は、人差し指か中指で強烈な回転をかけます。
その際に、ボールを切るようなイメージでリリースすると、切れ味の鋭いスライダーになるのです。
プロ野球でこれらの条件を満たす理想的なスライダーと言えば、東北楽天ゴールデンイーグルスの松井裕樹投手のスライダーでしょう。
このスライダーを参考にして、少しでも近づけるようにピッチング練習を繰り返していきましょう。
初心者でもスライダーをマスターするコツ
スライダーの変化をより大きくして、バッターから空振りを奪う確率を上げるために、トレーニングすべきポイントは2つです。
- 手首のスナップ
- 握力(指で弾く力)
スライダーを投げるときに手首のスナップを使う選手と、そうでない選手がいます。
どちらが正解とは言えませんが、自分の投球フォームに合ったやり方で投げるべきです。
その際に手首のスナップを使ってスライダー回転をかけられる投手であれば、そこが変化の幅を大きくするカギになります。
また、握力が強い方がボールに与えられる回転の強さも変わりますし、よりスピードを活かしたスライダーを投げることが可能です。
手首のスナップ、すなわちリストの強さや指先の強さは、どちらも前腕(肘からしたの部分)にある筋肉で決まります。
前腕の筋力トレーニングも取り入れて、伝家の宝刀と言えるようなスライダーを身に付けましょう。
スライダーを投げる投手が多い理由
アマチュア野球界もプロ野球界も、スライダーを投げる投手は多い傾向にあります。
その理由は一体どこにあるのでしょうか?
- 握り方が簡単
- 比較的すぐに投げられる
- 便利な使い方ができる
おそらくこの3つの理由が関係していると思われます。
スライダーの握り方は、ストレートとほとんど同じような握り方です。
フォークボールやナックルなどのように、人差し指と中指を大幅に開いたり、爪を立てたりする特殊な握り方ではありません。
ストレートを投げれるピッチャーなら、スライダーの握りは容易いのです。
ですから、最初に習得に取り組む変化球として選ばれやすいということもあるでしょう。
そして、スライダーはリリースの仕方もほとんどストレートと同じです。
直球と同じ腕の振り方で、スライダーの握りをしていればある程度変化させられます。
野球で投手を任されることになったとしたら、とりあえず何か変化球を投げたいと思うのが心情です。
そこで手っ取り早く変化が再現できる、スライダーが選ばれるのではないでしょうか。
スライダーを習得出来たら、便利な使い方が出来るのも特徴です。
空振りを狙う大きな曲がりのスライダーを練習しても良いですし、あえて小さな幅で曲がるスライダーを投げて、バッターの打ち損じを誘うような変化球にしても良いです。
どちらにしろ、ストレートやその他の球種とのコンビネーションでいくらでも配球のパターンが広がります。
まとめ:スライダーは初心者でも投げられる変化球
スライダーは野球経験者なら意外とすぐに投げられる変化球でもあります。
上手く覚えられれば三振を狙うことも出来ますし、ストレートをより一層活かす布石にもできます。
リリースの仕方をあまり意識しなくても、ひとまずスライダーの握り方さえ知っておけばすぐに使えるかもしれません。
スライダーを覚えることの弊害にも注意して、ストレートの質を保ったままワンランク上のピッチャーを目指しましょう!
スライダーと相性の良い変化球を持っているとかなり優位に攻められるので、スライダーに加えてもう1球種練習できると良いですね。
ぜひ他の球種の投げ方も確認してみてください。