野球におけるライトの守備は、少年野球では軽視される風潮があるのも事実です。
しかし、プロ野球の世界では、イチロー選手を始めライトを主戦場とする名手が多いですよね?
野球のレベルが上がるにつれて、ライト守備の重要性も高まるということでもあります。
そこで今回は、ライトの役割やレフトとの違いについて詳しく解説していきましょう。
ライトの守備位置
野球のライトは、一塁と二塁を結んだ線から後ろ、そして1塁線のライン、センターまでの間が主な守備範囲です。
ライトは「ここにいなければならない」という明確な規定は無く、ファールグラウンドに入っていなければどこでもルール上はOKになります。
ライトは日本語では「右翼手」と表現され、英語では「RF」と表現されることがありますが、これは「right fielder」が由来です。
ホームベースから見て右側がライトの守備位置になります。
一般的な守備位置としては、ホームベースを基準にして1,2塁間の中心を通った延長線上にポジショニングを取ることが多いでしょうか。
前後の距離感としては、1,2塁間と外野フェンスの中間よりもやや後ろ側になることが多いです。
そこを定位置として、バッターの力量やピッチャーの球質、バッテリーの配球によって細かく守備位置を移動していきます。
例えば非力な右打者の場合、ライトは前進することが多いです。
左の強打者の場合は、フェンス側によって後ろに下がることになるでしょう。
また、ランナー2塁で一点も与えられない状況の場合、バックホームに備えて前進守備になります。
点差やイニングによっても、ライトのポジショニングは微妙に変わってくるでしょう。
ライトの役割
ライトの主な役割としては
- センターから右寄りの打球処理
- ファーストやセカンドのカバー
これが大きなところです。
自分の右側にはセンターがいますが、左側には誰もいない状況になります。
そのため、ライト線に放たれた打球は全てライトが処理することになるはずです。
1塁後方へのフライやファールグラウンドへのフライなど、誰が捕るのか微妙な場合は、外野手が捕った方が良いかもしれません。
フライに対してバックしながら追うよりも、前進しながら追っていった方が距離感も掴みやすいですしボールが目で見やすいからです。
ただ、誰が捕るのか微妙な打球に対しては必ず声掛けをお互いに行いましょう。
野手同士が交錯して、大きな事故になることもあるのが外野手と内野手の接触プレーです。
そしてライトに求められるのは、打球処理以外にも内野手のカバーリングという重大な仕事があります。
一塁手や二塁手が打球を処理するときのカバーや、内野手がファーストに送球するときのカバーリングが主な仕事です。
万が一悪送球が来たときや、一塁手がキャッチミスをして後ろに反らしたときに、すぐライトがボールを拾って返球できるようにしておく必要があります。
ファーストにボールが送られる回数は多いので、その分ライトがカバーに走る回数も増えるでしょう。
自分で打球を処理するよりも、カバーに走る方が何倍も多いかもしれませんね。
基本的には内野手でプレーが完結するのですが、たまにやってくるカバーの機会で確実に仕事が出来ないと、ライトとしての信頼を失ってしまいます。
走り損になることの方が多いですが、ライトはそれが宿命なのです。
ライト守備での動き方
ライトを守っているとき、自分よりも左手側に来る打球は全て自分で処理するのは当たり前です。
そのとき、特に右バッターが放ったライト線の打球には注意してください。
打球にスライス回転がかかっていることが多く、フライの場合はどんどんファールエリア側に流れていきます。
そこから急激に失速して落ちていくことが多いので、真っすぐ横に走っていると落下点に追いつきません。
また、速い打球の場合は一直線に横に向かって走ると打球が抜けていってしまいます。
少し後ろ側から回り込むような形で打球の軌道に入ると、フェンスに到達する前に抑えることが出来るでしょう。
右中間はランナーの状況次第
難しいのは右中間の打球です。
もちろん、打球が飛んだ位置が近い野手が捕りに行くのが鉄則で、もう一方の野手は後から回り込んでカバーに入ります。
問題は、ライトでもセンターでもどちらでも追いつけそうな打球のときです。
もしランナーがいる場合は、できればライトが捕球した方が良いでしょう。
というのも、送球の際にライトが捕った方が勢いをつけて投げやすいからです。
右中間寄りの打球をセンターが捕ると、打球を追って走った方向と逆方向に送球しなければならなくなります。
これだと一瞬投げるのが遅れるので、特に1塁ランナーがヒットで3塁を狙ったときなど、ライトが捕ってそのまま助走をつけてサードに投げた方が刺せる確率も高いでしょう。
カバーが大切
ライト自身が打球を捕ることよりも、ファーストに送球されるボールのカバーに走る回数の方が圧倒的に多いです。
カバーは毎回必ず走った方が良いでしょう。
実際に送球が反れて飛んでくる回数は少ないですが、それが失点に直結します。
カバーが間に合っていないと、送球エラーや捕球エラーをした内野手よりも怒られることもしばしばです。
ライトに必要な能力
ライトという守備位置は、少年野球では軽視される風潮があるのが事実です。
小学生なのでそもそも外野まで大きな当たりが飛ぶ回数も少なく、引っ張りの右打者の方が多い傾向があるので、ライトに打球が飛びにくいという判断ですね。
ですから、少年野球の段階では、超初心者が守るケースも多々あります。
しかし、中学高校、大学と野球のレベルが上がっていくと、ライトに良い選手を置くようになるものです。
プロ野球では、ライトを守るスター選手も多いことをご存知でしょうか。
ここでは、ライトを守る外野手に求められる能力についても整理しておきましょう。
- 強肩
- 足の速さ
- カバーに走る「マメさ」
- 打撃力
ライトに備わっていると最も相手にとって脅威になる能力が、肩の強さです。
得点圏と言われる、セカンドやサードベースに最も遠い守備位置であることから、肩が弱いとランナーの進塁を悠々と許してしまいます。
例えばランナー1塁でライト前ヒットを打たれたとき、ライトの肩が強ければ1塁ランナーはサードまで走ることは無いでしょう。
逆にライトの肩が弱ければ、そこを狙われて一気にサードを陥れられます。
ランナー1,2塁と、ランナー1,3塁では、野手の守りやすさが全く違うのです。
そして、広い守備範囲をカバーするために俊足も必要になります。
カバーに走るスピードにも関わってきますし、プロ野球では足の遅い選手がライトを守ることはほぼありません。
むしろレフトの方が、打撃に比重を置いた選手が守ることが多くなるでしょう。
そもそもサードベースが近いので、ランナー1塁でレフト前ヒットを打たれたとしても、3塁に進まれる危険性は少ないからですね。
そしてなんといっても、ライトには打撃力も兼ね備えた選手が相応しいです。
やはりキャッチャーや内野手に比べれば守備の負担は少ないですから、守備に特化した選手というよりも打撃で活躍できて身体能力の高い選手がライトを守るべきでしょう。
ライトを守る野球選手
野球のレベルが上がるほどライトの重要性も高まると述べましたが、実際にプロ野球でライトを守る主な選手を挙げていきましょう。
イチロー
ライトを守る史上最高の選手と言えば、やはりイチロー選手ではないでしょうか。
日本で7年連続首位打者を獲得した後、メジャーリーグでも首位打者や最多安打などヒットを量産しました。
そして、「レーザービーム」という言葉が定着したのもイチロー選手がライトからサードに送球する際の、その軌道を表現されたのがきっかけです。
イチロー選手の活躍により、「ライト=走攻守三拍子揃った選手」という図式が定着したのではないでしょうか。
高橋由伸
読売ジャイアンツ一筋でプレーした高橋由伸選手も、やはりライトでのイメージが強い選手です。
その当時、センターは松井秀喜さんで、ライトが高橋由伸さんというのが鉄板のスターティングオーダーでした。
イチロー選手同様、やはり天才的と称される打撃もさることながら、守備でも好プレーを連発していたのです。
稲葉篤紀
現役晩年は、ファーストでの出場やDHでの出場もありましたが、本来は守備の上手い選手です。
打撃はもちろん2000本安打を達成したほどですから、超一流なのは間違いありません。
2006年日本ハムファイターズが北海道移転後に初優勝したときに、「ライト稲葉・センター新庄・レフト森本」という並びは、史上最強の鉄壁外野陣に名を挙げられるほどです。
鈴木誠也
2020年現在、現役最強バッターの一人である鈴木誠也選手は、ライトが主戦場です。
高校時代までピッチャーをやっていたその強肩を活かし、レーザービームで何度もチームを救っています。
トリプルスリーも狙えると言われる身体能力を武器に、ライトが中心選手のポジションであるということの裏付けをさらに強くした選手と言えるでしょう。
吉田正尚
毎年のように打率10傑に顔を出す安定感に加えて、フルスイングでの規格外の飛距離を誇る吉田選手です。
バッティングでの貢献度は計り知れませんが、ライトで出場することもあります。
チームの状況によって、レフトでも指名打者でもありますが、ライトを任せても問題ないほどの守備力は備えています。
糸井嘉男
日本ハムファイターズに入団した当初は投手だったものの、日本人離れした身体能力を活かして野手に転向し、大成功を収めている選手です。
首位打者や盗塁を獲得するほどの攻撃力に加えて、なんといっても動画でもご紹介しているレーザービームはまさに脅威となっています。
いわゆる「5ツールプレイヤー」(打率・パワー・俊足・強肩・守備力)の全てを兼ね備えた選手の代表と言えるでしょう。
大田泰示
元々は読売ジャイアンツにドラフト1位で入団した選手でしたが、巨人ではなかなか目が出ず、日本ハムファイターズに移籍してから花開いた選手です。
前述の糸井選手に近い、破格の身体能力を活かしたプレーが持ち味となっています。
豪快なホームランはもちろん、ライトからの強肩で得点を幾度となく防いでいるのも見逃せません。
ここまでご紹介してきたように、やはりライトというポジションは、強肩と打撃力を兼ね備えたハイスペックな選手を置くべきポジションであるということですね。
ライトとレフトの大きな違い
ライトとレフトは、素人の方からすればどちらも大差ないポジションに思えるかもしれません。
しかし、実際には適する人材が全く異なります。
ライトとレフトの相違点についてもまとめていきましょう。
- 打球の質が全く逆になる
- カバーに走る回数がライトの方が多い
- レフトは打撃重視になる傾向
- ライトはハイレベルなバランス型の選手
まず、バッターによってライトとレフトでは飛ぶ打球の質が全く異なります。
左バッターを例にとると、左バッターが引っ張った打球はライト方向に伸びていく傾向が強いです。
逆に流し打ちでレフト方向に飛んだ打球は、どんどんファール方向に切れていきます。
右バッターならその逆で、飛んでくる打球の質が全く異なるのです。
そして、ファーストベースが近いという都合上、内野手のプレーに対するカバーに走らなければいけないのはライトが圧倒的な回数になります。
そのため、面倒くさがらずに守備行動を行える精神的な粘り強さもライトには必要となるでしょう。
そして特にプロ野球などレベルの高い野球になってくればくるほど、レフトには打撃重視の選手を置くことになります。
例えば指名打者制度の無いセリーグの助っ人外国人選手は、たいていの場合レフトかファーストを守っています。
逆にライトでは、足が速くて一発もあって、ある程度の打率が残せる上に守備も一流クラスというバランスに秀でた選手が多いです。
成績でいえば、レフトは打率2割5分でもホームランを40本打てる選手。
ライトは打率が3割近く、ホームランも二桁、守備の指標も平均以上というイメージでしょうか。
いずれにせよ、与えられた役割をしっかりこなすことが、チームの勝利に直結していくことは間違いありません。
まとめ:ライトの守備は大変
ライトは自分の打球処理に加えて何度もカバーに走るため、けっこうな運動量になります。
その上打撃での活躍も必須になるので、意外とライトに求められる条件は高いのです。
外野手で、まるで守備能力にステータスを全振りしているような選手はセンターを任されることが多いので、そのあたりもライトとの違いになるでしょう。
ライトの守備はとても地味な仕事も多いですが、良い選手をライトに配置できるチームは間違いなく強いです。
バッティングでもディフェンスでも、貢献できる選手になるためにしっかり練習していきましょう。