野球の変化球は、現在15種類前後存在していると言われています。
ただ、それはあくまでも野球を伝えるメディアや研究者が変化球を分かりやすく区分しているだけで、実際にはもっと少ないかもしれません。
というのも、変化球の球種は、厳密に回転数や球速などでの区分されているわけではないからです。
投げる投手自身が、「これはカーブです」と言えば、全く違う変化球に見えてもそれはカーブと分類するしかありません。
重要なのは、投手や捕手、バッターがどんな変化をするのか把握出来ていることなのです。
そこで今回は、野球に存在する変化球の球種一覧をご紹介していきます。
ストレート系の球種
ストレート
ストレートはほぼ全てのピッチャーが投げる基本の球種と言えます。
変化球という括りでもないので、球種に数えられることもありません。
従って、変化球が投げられずストレートのみの投手がいた場合、その投手は「球種ゼロ」ということになりますね。
ツーシーム
ツーシームはストレートに近い軌道から、バッターの手元で少しだけ動くような球種となります。
ツーシームをストレートと分類するか変化球と分類するかは微妙なところですが、単純なストレートとは少し質が違うことは明らかです。
バットの芯を外して、ゴロを打たせることが主な目的となる球種でもあります。
ワンシーム
先ほどご紹介したツーシームよりも少し変化の軌道が大きい球種です。
あまり野球界でも浸透していない変化球であることも事実で、使い手はあまり多くありません。
ストレート並みの球威で、ツーシームよりも大きな変化をもたらすということから、一部では「魔球」と称されることもあるくらいです。
読売ジャイアンツでエースとして君臨している菅野投手が投げると言われています。
ジャイロボール
軌道はほぼ通常のストレートと同じで、弾丸のように回転軸が進行方向を向いていることが特徴の球種です。
ボールが受ける空気抵抗が少ないので、通常のバックスピンのストレートと比べて球威がアップすると言われています。
アンダースローの投手が投げるならまだしも、オーバースローの投手でジャイロボールを投げるのはかなり難しいでしょう。
縦方向の球種
- フォーク
- スプリット
- チェンジアップ
フォーク
フォークは縦に落ちる代表的な変化球で、ボールを人差し指と中指で挟んで投げる握り方と投げ方が有名です。
イメージとしては、バッターの手元でストンと下に落ちるような軌道になります。
投げるのに握力を必要とするため、先発投手でフォークを頻繁に投げる投手は少ない傾向です。
スプリット
スプリットは、東北楽天ゴールデンイーグルスからニューヨークヤンキースに移籍しても大活躍した、田中将大投手が持ち球としていることから脚光を浴びました。
フォークと同じような球筋で、フォークよりもスピードが出て落ち方が鋭いことが特徴です。
場合によっては、後述するシンカーのように利き腕方向にズレながら落ちていくこともあります。
チェンジアップ
落ちるという表現よりも、ストレートとの緩急を生み出す変化球という認識の方が正しいかもしれません。
ボールにかかる空気抵抗をあえて大きくするような握り方と回転で、キャッチャーのミットに迫る直前でブレーキがかかるイメージの軌道になります。
その分重力がかかりやすくなり、下に沈んでいくのです。
斜め方向の球種
- カーブ
- シンカー
- スラーブ
カーブ
カーブは変化球の元祖とも言える球種で、昔は多くのピッチャーが基本の持ち球としていました。
投手の手からリリースされたボールが、一度浮き上がってから利き腕とは逆方向にスライドしながら沈んでいく軌道になります。
通常のカーブに加えて、より球速を落として変化量を大きくした「スローカーブ」という球種を駆使しているピッチャーもいます。
この球種とストレートを組み合わせることにより、直球のスピードが速くない投手でも、緩急を使って勝負することが出来るのです。
シンカー
シンカーは多くの変化球の中でも、ほとんど使い手がいない球種とされています。
変化の軌道としては、利き腕の方向にスライドしながら沈んでいく球種です。
握り方が難しくリリースも難関となるので、上手くコントロールすることは至難の業になります。
もし持ち球にすることが出来れば、シンカーがあるだけで相手打者にとっては大きな脅威になることは間違いありません。
一部では「魔球シンカー」と称されることもあります。
スラーブ
スライダーとカーブの中間くらいの軌道で、利き腕とは逆の方向に斜めにスライドしていく球種となります。
スライダーともカーブとも分類しがたい球種に対して使われることもあり、明確な意図を持ってスラーブとして投げている選手は少ないでしょう。
サイドスローの投手が、スラーブになりやすい傾向もあります。
横方向の球種
- スライダー
- シュート
- カットボール
スライダー
カーブと並んで基本的な変化球の一つと言えます。
利き腕とは逆方向に急激に曲がり、変化量の多い投手ではストライクゾーンから一気にボールゾーンへと逃げていく(食い込んでいく)ボールとなるでしょう。
比較的容易に習得ができる変化球なので、高校生でもスライダーを投げている投手が多いです。
中には、スライダーの握りから縦方向の変化を大きくした「縦スライダー」を投げる投手もいます。
しかし近年では、数ある変化球の中でも肘への負担が大きな球種として懸念されていることも事実です。
シュート
シュートは利き腕の方向に、横方向にスライドしていく変化球となります。
利き腕方向に曲がる変化球は習得しているピッチャーが少なく、シュートを操る投手も比較的少ないです。
ただ、ストレートを投げようとして意図せずシュート回転して変化してしまう投手は多々いることでしょう。
バッターの芯を外して打ち損じを狙う球種として、メジャーリーグではシュート系のボールがよく投げられています。
カットボール
カットボールは前述したスライダーに似たような球種で、よりストレートに近い球速と軌道を描きます。
打者のミートポイント近くで急激に変化するのが特徴で、基本的には芯を外して凡打を狙う変化球です。
しかしカットボールの名手として名が挙がる川上憲伸(元中日ドラゴンズ他)や、マリアノリベラ(元ヤンキース)などは、急激かつ大きな変化で空振りを奪う決め球として使っていました。
特殊な軌道の球種
- ナックル
- ナックルカーブ
ナックル
ナックルは、ボールを無回転で押し出すように投げます。
空気抵抗を大きく受けるため、投げた本人でもどこに変化するのかわからないような変化の仕方をする球種です。
ボールに回転を与えないようにリリースするのは高等技術が必要なので、持ち球としている選手は圧倒的に少ないでしょう。
ナックルで勝負するピッチャーは、ストレートもほとんど投げずにナックル1球種だけで試合に臨むことも多いです。
そのため、その投手は「ナックルボーラー」と呼ばれます。
日本ではまずナックルボーラーは存在せず、アメリカメジャーリーグでもその時代に一人か二人いるくらいです。
ナックルカーブ
ナックルカーブは、普通のカーブよりも球速が速く変化量も大きな球種です。
指を立てて握るような握り方になるので、手が大きい外国人ピッチャーがよく持ち球としています。
日本人でナックルカーブを投げられる投手はかなり希少と言えるでしょう。
習得できればかなり強力な変化球なので、挑戦してみる価値はありそうです。
同じ変化球に見えても投手によって球種が違う
ここまで解説してきた変化球は、どれも一般論にすぎません。
実際は、投げている投手の認識によって球種は変わってきます。
スライダーやカーブなど、変化の方向や握り方が近い球種の場合、他人からはスライダーに見えたとしても本人はカーブのつもりで投げているかもしれません。
その場合、その球種はスライダーではなくカーブになるのです。
むしろ、ボールの回転数やストレートの球速差から変化球の分類を厳密に行うことは、あまり意味がありません。
大切なのは、投げているピッチャーや捕球するキャッチャーが、その球種の変化の仕方を把握していることなのです。
まとめ:野球の変化球はオリジナルのものもある
ここまで15種類の変化球をご紹介してきました。
それぞれ、基本的な投げ方や握り方を覚えれば、自分なりの変化球が投げられるようになるかもしれません。
かつてプロ野球選手の中には、小宮山悟(元千葉ロッテマリーンズ他)さんの「シェイク」などのように、オリジナルの変化球を編み出している選手もいました。
ここでご紹介してきた変化球の投げ方をベースとして、自分なりの投球術を磨いていきましょう。