アンダースローでは、オーバースローやスリークォーターとは違った軌道の変化球を投げることが出来ます。
そもそもアンダースローは、普通のストレートの軌道が浮き上がるので、ちょっと独特です。
そこに変化球を精度よく織り交ぜられたら、剛速球が無くても十分に打者を抑えられるでしょう。
しかし、アンダースローで変化球を投げるなんて、やったことが無い人には想像が出来ません。
そこで今回は、アンダースローで投げられる変化球の種類についてご紹介していきます。
各球種のアンダースローでの詳しい投げ方や、変化球を活かす投球術についても一緒に確認していきましょう。
アンダースローで投げられる変化球の種類
アンダースローはオーバースローやスリークォーターと比較しても、腕の出方が全く違いますよね。
オーバースローやスリークォーターが上から腕を振り下ろすのに対して、アンダースローは下から上に腕を振り上げる形になります。
そのため、アンダースローで投げる変化球には向き不向きがあるのです。
例えば、アンダースローの場合は縦にストンと落ちるタイプの変化球が投げにくいと言えます。
例えばフォークボールや、スプリット(SFF)などです。
決してアンダースローでは投げられない変化球というわけではありませんが、難易度が高いと言えるでしょう。
一方で、カーブやシュートなど、横に滑る変化球や斜めに曲がりながら沈んでいく変化球はアンダースローの方が投げやすいです。
実際に、アンダースロー投手のほとんどが、横にスライドするような変化球を持ち球としています。
特に、一般的なオーバースローやスリークォーターのピッチャーが投げにくいとされている、シンカーという変化球はアンダースローの方が投げやすいです。
シンカーは利き腕と同じ方向に沈んでいく変化球ですが、使い手が少ないのでバッターも打ちにくい変化球です。
また、アンダースローの変化球は緩急を自在に操りやすいという特徴もあります。
アンダースローの方がスピードの調節がしやすいので、同じ変化球でも場面によってスピードや回転数を使い分けるピッチャーもいるのです。
アンダースローにオススメな変化球の投げ方
アンダースローには、適した変化球がいくつかります。
ここではアンダースローと相性の良い変化球を5つご紹介していきましょう。
- カーブ
- スライダー
- シンカー
- チェンジアップ
- フォーク
それぞれの変化球の投げ方を、詳しく解説していきます。
アンダースローのカーブ
カーブは利き腕とは逆方向に曲がりながら沈んでいく変化球です。
アンダースローでのカーブは投げやすい変化球の部類ですが、縦方向の変化も必要なため、コツを掴まないと意外と難しいかもしれません。
- 縫い目の狭い部分に人差し指と中指をかける
- 親指はボールの真下の中心部分に置く
- 親指は縫い目にはかけない
- リリースの際に手首を立てておく
- 手のひらを上に向けて、2本の指でボールを滑らせる
アンダースローのカーブの握り方は簡単です。
ほとんどストレートに近い形かもしれません。
アンダースローのカーブで最も重要なポイントは、手首を立てて手のひらを上に向けてリリースするということです。
リリースの際に人差し指と中指でボールを滑らせるイメージで、抜いていきます。
アンダースローのカーブはかなり緩いボールになるので、ストレートの威力がある人ほど緩急が使えるでしょう。
腕の振りを緩めないことがコツです。
アンダースローのスライダー
スライダーは、利き腕とは逆方向に滑るように曲がっていく変化球です。
- 縫い目に中指と人差し指をかける
- 親指は縫い目にはかけない
- 手首を少しだけ立ててリリースする
- 手のひらを上に向けた状態
- ボールの下を強くなでるようにリリースする
アンダースローの場合、スライダーとカーブの投げ方に大きな差はありません。
最も違う点と言えば、手首の角度です。
手首を立てて投げるほど、カーブに近くなります。
手首をストレートに近い形で投げると、スライダーに近い軌道になります。
ここにカーブとスライダーの明確な線引きがあるわけではありません。
自分がアンダースローで投げたときに、どのような変化をするのが理想なのかによって変わってくるわけです。
また、アンダースローのスライダーは横変化があまり大きくなく、ジャイロボールに近い回転になります。
アンダースローのシンカー
シンカーは利き腕の方向に曲がりながら沈んでいく変化球です。
- 人差し指と中指を縫い目の狭いところにかける
- 薬指を中指と離して下の方に置く
- 親指はボールの真横あたりに置く
- リリースの際に手のひらが下に向く
- 中指と薬指の間からボールが抜けるように
- リストのスナップは使わない
アンダースローでは、時に「魔球」と表現されることもあるシンカーが比較的簡単に投げられます。
人差し指と中指を縫い目の狭い部分に沿わせるのですが、縫い目が若干外側にはみ出るようにあてがうのがコツです。
薬指と中指の間隔を広めにして、リリースの際はそこからボールを抜くように投げます。
全変化球の中では難易度が高めですが、アンダースローの特徴を活かしてぜひ取り組みたい変化球です。
シンカーを上手く投げるには特にリリースの際の手首の使い方が重要で、スナップは使わないことがポイントになります。
手のひらを下に向けたままリリースするような感覚で、薬指と中指の間から抜くのです。
中指の外側でボールの上をなでるように放せると、上手くいくでしょう。
アンダースローのチェンジアップ
チェンジアップは、ストレートと同じような軌道で、打者の手前で減速しながら落ちていく変化球です。
アンダースローの場合、チェンジアップを投げる難易度が高いと言えます。
- 親指と中指を縫い目にかける
- 人差し指はOKサインを作るように握る
- 小指と中指は縫い目にかけずに等間隔に置く
- 手のひらを上にしてリリースする
- 親指と人差し指で押し出すようにリリース
ストレートと同じように腕を振るのがポイントです。
リリースの際に回転を与えすぎないように、親指と人差し指で押し出すような形になります。
ただ、アンダースローの性質上、ただの遅いボールになってしまうリスクも否めません。
腕の振りを弱めずに、思い切って投げるのが大切ですね。
アンダースローのフォーク
フォークはストレートに近い軌道で進み、打者の手前でストンと落ちる変化球です。
アンダースローの場合はフォークの難易度がかなり高いです。
下から上に向かって投げるという性質上、フォークの落差が小さくなります。
シュート回転してしまうリスクもあるので、精度の高いフォークは握力や指の力も必要なのです。
- 中指を縫い目に沿ってかける
- 人差し指は縫い目にはかけず開く
- 人差し指と中指でボールを挟む
- 親指は人差し指に近いところに置く
- リリースの際は中指に力を入れる
- 手首のスナップは使わずに腕を振る
アンダースローのフォークのポイントは、シュート回転を抑制する中指の使い方です。
リリースの際に、中指でシュート方向への回転を抑えるのです。
そのまま手首を固定しつつ、人差し指と中指の間から抜きます。
上手く抜けないと、中途半端な回転がかかって棒球になってしまうでしょう。
握力が必要な変化球なので、試合中に何度も投げられるわけではないかもしれませんね。
アンダースローの変化球練習方法
アンダースローで変化球が上手く投げられない場合、練習方法を少し意識してみましょう。
徐々に腕を下げてみる
最初は変化球を投げやすい腕の角度から投げてみて、ある程度リリースのコツなどを掴みます。
そこから少しずつ腕を下に下げていって、アンダースローの投げ方に近づけていけばいいのです。
変化球を投げるのに重要なポイントは、手首の向きや指の抜き方にあります。
いつも通りのアンダースローの投げ方でなくとも、変化球を投げるポイントには共通する部分があるのです。
まず変化球を投げられる腕の角度で感覚を覚えてから行った方が、スムーズに投げられる場合もあります。
投球フォームをゆっくり行う
アンダースローで変化球を投げるときには、身体のバランスやリリースのタイミングも大切です。
いきなりトップギアでアンダースローから変化球を投げようと思っても、なかなかタイミングが掴めないかもしれません。
まずは投球フォームをゆっくりと行い、緩いボールで変化球のリリースを体感していきましょう。
緩いボールなのでキレのある変化球が投げられなくて良いですから、かろうじてキャッチャーに届くくらいのスピードで大丈夫です。
アンダースローで変化球を投げようとしたときに、身体の軸がブレないようにすることと、ボールに変化球の回転をかけるタイミングを体に染み込ませていきます。
キャッチボール程度から始める
アンダースローで変化球を練習するときに、いきなりマウンドやブルペンで試合と同じように投げる必要はありません。
まずはキャッチボール程度の感覚で、アンダースローから変化球をなげてみましょう。
キャッチボールほどの強度で変化球を練習することで、ボールに加わる回転やリリースのタイミング、指の抜き方など細かい部分を確認しながら投げることが出来ます。
そこから少しずつ強度を上げていって、最終的にマウンドから、バッターボックスにバッターが立っている状態で変化球が投げられれば良いのです。
アンダースローの変化球を活かすなら
アンダースローの変化球は、他の投球フォームから繰り出される変化球と違い独特です。
一度浮き上がってから落ちるという軌道を描く変化球が多いので、上手く利用すれば同じ変化球でも威力が倍増します。
アンダースローで変化球を駆使するときに、効果をより大きくするにはどんなポイントを押さえれば良いのでしょうか?
- 投球のテンポを変えて投げる
- 腕の振りをストレートに近づける
- 球速差を利用する
- 肩の開きをギリギリまで抑える
- 踏み込み足の位置を揃える
少なくとも、上記5つのポイントが挙げられます。
アンダースローの変化球を上手く使うコツを、一つずつ詳しくみていきましょう。
投球のテンポを変える
特にアンダースローの場合、投球のテンポを変えることが非常に有効です。
セットしてから始動するまでの時間をその都度変えることで、バッターにとってはタイミングが取りにくくなります。
同じ変化球を投げるにしても、投球のテンポが変わるだけで全く違うボールと錯覚してしまうかもしれません。
バッター目線で言えば、変化球に対してもタイミングを取らなければいけないのに、投球テンポまで気にしないといけなくなったらかなり不利ですよね。
腕の振りをストレートと同じに
アンダースローの変化球は、ホームベース方向に近づくにつれ大きく曲がるものが多いです。
空気抵抗を受けてブレーキがかかることで緩急を使える変化球もあるので、腕の振りがとても重要になります。
アンダースローで腕を振ったときに、変化球のときだけ振りが緩くなるようではいけません。
腕の振り方でストレートか変化球か相手にバレてしまうので、どちらかに狙いを絞られてしまいます。
また、変化球を曲げようと腕の振りが緩くなると、かえってボールに伝わる回転が弱まってキレが無くなってしまうのです。
できるだけ、直球のモーションと近い形で投げられたら最高ですね。
球速差を利用する
アンダースローの変化球で特に効果的なのが、速いボールとの球速差を利用する攻め方です。
キャッチャーとリードの相談をして、いわゆる緩急を駆使して打者を翻弄する投球を目指しましょう。
ストレートを最も速いボールと位置づけ、そこから程遠い、スローカーブやチェンジアップなど遅い変化球を持っていると配球の幅も広がります。
肩の開きを抑える
アンダースローでキレが良い変化球を投げるためには、リリースのときにグローブ側の肩が早く開きすぎないように意識しましょう。
右投手なら左肩、左投手なら右肩です。
アンダースローは腰の回転も使って投げることになるので、良いボールを投げようとすると、無意識のうちに逆側の肩を開いてしまいます。
肩が早く開きすぎて胸が打者と正対するタイミングが早すぎると、ボールに力が上手く伝わりません。
変化球の精度に関わる回転数も上げられなくなるので、質の悪い変化球になってしまいます。
踏み込む足の位置を一定にする
アンダースローで変化球のコントロールを付けるためには、踏み込む足の位置を一定にすることが大切です。
右投手なら左足で、左投手なら右足になります。
体重を前に移動させて足を踏み込むわけですが、その位置によって重心の低さが変わります。
毎回踏み込む位置が違うとリリースポイントが一定に保てず、変化球の制球が乱れてしまうのです。
変化球のクオリティを高めようとすると、どうしても腕に意識が行ってしまいがちですが、実は下半身の安定が重要なのですね。
アンダースローはナチュラルシュート!?
実は、アンダースローではナチュラルに変化球の回転がかかってしまうことがあります。
特にオーバースローやスリークォーターのように、キレイなバックスピンのストレートを投げることが難しいです。
アンダースローで何も考えずに普通に投げると、シュート回転がかかる傾向があります。
ナチュラルなシュート回転なので、当然投球もシュートのように曲がるわけです。
これを悪癖と捉えるか、直球の個性と捉えるかは個人の価値観によるでしょう。
ただ、アンダースロー特有の変化球であることには変わりありません。
このナチュラルシュートを活かして、ボールゾーンとストライクゾーンで横方向の出し入れが出来たら厄介な投手になれるでしょう。
昔はこのアンダースローのナチュラルシュートは悪い物だとされてきましたが、今ではそれも上手く使えば武器になるという風潮になっています。
アンダースローの方は自分のストレートのクセをよく観察して、他にどのような変化球と組み合わせるべきか考えていきましょう。
アンダースローならジャイロボールも可能
これは変化球と少し違うかもしれませんが、多くの野球選手が憧れるボールに「ジャイロボール」があります。
ジャイロボールは、回転の軸が前後方向で、弾丸のように回転しながら突き進んでいくボールです。
通常のバックスピンのストレートと回転の軸が違い、前後方向なので、空気抵抗を受けにくいという特徴があります。
もしジャイロボールを投げられれば、球威があって初速と終速の差が少ない、スピードガンの数字よりも速く感じるボールとなるわけです。
オーバースローやスリークォーターの投げ方だと、ジャイロボールを投げるのは難しいとされています。
しかしアンダースローの場合、このジャイロボールが比較的簡単に投げられるのです。
意図してジャイロ回転を与えられたボールは、ノビがあって重い球になります。
このボールと緩い変化球を組み合わせれば、そのコンビネーションだけで十分通用するはずです。
アンダースローの投げ方に挑戦しているという方は、変化球と合わせてぜひジャイロボールにも取り組んでみてください。
まとめ
- アンダースローにはカーブやシンカーが適している
- フォークやチェンジアップは投げにくい
- 緩急を使って抑えることが目的
- リリース時の肩の開きに気を付ける
- 直球と同じ腕の振りで変化球を投げる
- アンダースローならジャイロボールが投げやすい
- シュート回転などストレートのクセを見極める
アンダースローの変化球は、他の投球フォームには無い独特な軌道が再現できます。
投げられる変化球と難しい変化球の差が激しいと思いますが、自分の手の長さや指の長さに合った投げやすい変化球を模索していきましょう。
鋭い変化で空振りを誘うというよりは、緩急を使って打者のタイミングを外す変化球が中心になると思います。
そういったピッチャーが一番打ち崩しにくいので、ちゃんと練習すれば防御率もかなり改善するはずです。
まずは基本的なアンダースローの投げ方を身に着けて、変化球の精度も高めていってくださいね。