少年野球で最も人気があり、試合の勝敗を大きく左右してしまうポジションと言えばピッチャーです。
世代に限らず、ピッチャーの力量は勝敗に大きな影響を与えますが、少年野球ならなおさらその傾向が顕著に出ます。
しかし実際には、少年野球の各チームにしっかりとした理論で投手を教えられる指導者が少ないのも現状です。
少年野球の投手の球速は、小学5年生で80㎞程度、小学6年生で90㎞程度出ていたら優秀と言っていいでしょう。
トップレベルの子だと、小学生でも100キロを超えてきます。
そのスピードで、少年野球は16メートル、リトルリーグは14.02メートルのマウンドの距離で投げるわけですから、大人で当てはめると体感速度はもっと速いですよね。(中学生以上のマウンドとホームベース間は18.44メートル)
そんな少年野球のピッチャーは、どのような練習方法でコントロールや球速をアップしていけばいいのでしょうか?
正しい投球フォームのポイントや、練習メニューについても紹介していきます。
少年野球のピッチャーに求められる能力
少年野球のピッチャーは、野球を始めたばかりの多くの子供たちが憧れる花形的なポジションでもあります。
その分、特に少年野球ではピッチャーの出来によって試合展開が大きく異なってくることがあるのです。
そんな少年野球のピッチャーに求められる能力としては
- ストライクゾーンに投げられるコントロール
- 気持ちの切り替えの早さ
主にこの2つではないでしょうか。
どうしてもピッチャーを務めるとなると、速い球を投げようと努力したくなるはずです。
しかし少年野球の場合、ただ単に速球を投げられるだけでは意味がありません。
試合に負けたり、試合展開をぶち壊してしまうのは、ピッチャーがストライクを取れなくて四死球を連発してしまうことが原因です。
ですから、少年野球の段階で重要なのはずば抜けた速球を投げられることよりも、ストライクゾーンに投げられる制球力というスキルになります。
また、少年野球では内野ゴロのエラーや平凡な外野フライの落球など、ピッチャーとしては精神的に削られるようなプレーも多く発生するはずです。
その度にふてくされていては、野球の楽しみも半減してしまいます。
気持ちをすぐに切り替え、目の前の投球に集中できる選手が、少年野球のピッチャーとして求められる能力なのではないでしょうか。
少年野球のピッチャーの練習法
少年野球のピッチャーは、昔のように、とにかくたくさん投げ込んで育てるという時代では無くなっています。
成長期真っただ中にある小学生年代での投げ過ぎは、中学高校と進んだあとの故障の原因となってしまうのです。
全日本軟式野球連盟によれば、
- 小学生の全力投球は1日50球
- 週の球数が200球以内
というガイドラインを設定しています。
それを踏まえて、少年野球のピッチャーの練習メニューを考えていきましょう。
最も有効なのは
- シャドーピッチング
という練習です。
シャドーピッチングは、鏡の前などで自分の投球フォームを確認しながら、実際にはボールを持たずに投げる動作を繰り返すことです。
バドミントンのラケットを持ったり、タオルを持ったりしてシャドーピッチングを行うと、より効果的な練習になります。
少年野球の段階でのシャドーピッチングの目的は
- ケガをしにくい投球フォーム作り
- 身体の使い方を安定させる
この2つです。
例えば腕の力だけで投げるような投球フォームでは、肩や肘の負担も増えます。
踏み込んだときにグローブ側の肩が内側に入りすぎていると、肩の故障も増えるでしょう。
その上で自分が投げやすい投球フォームを見つけて、何十球投げても同じ投げ方が再現できるように、体に染み込ませるための練習なのです。
投球フォームが安定すれば、コントロールも球速もアップします。
フォームが安定せず、「投げてみないとわからない」という状態だと、球数も増えて身体の負担も大きくなってしまうのです。
少年野球ピッチャーのフォームのポイント
少年野球のピッチャーに多い悪い投球フォームは
一本足で立ったときに、身体が反りすぎる
という悪い癖です。
これは腹筋を中心とした体幹の筋肉が上手く使えていないことが原因で起こるフォームで、これだと腕の負担が増える上にコントロールが定まりません。
理にかなった身体の使い方ではないので、一生懸命力を入れても、さほど球のスピードが出ないのです。
そこで意識したいのは
軸足だけで立ったときに、少し前かがみになる意識
これです。
例えば、高校時代の斎藤佑樹投手の投球フォームを見てみましょう。
軸足をかなり曲げた独特な投球フォームではありますが、腹筋をしっかり使って体感がブレないようになっています。
この1点を意識するだけで、球威や制球が全く違ってくるはずです。
少年野球でコントロールを改善するには?
少年野球のピッチャーが技術的な部分で最も重視すべきは、やはりコントロールです。
コントロールが悪いと余計な球数が増えて、長いイニングを投げられません。
ピッチングでコントロールを向上させるには、何度やっても同じ投球動作が出来る再現性を高めることが必要です。
もし毎回全く同じ力の入れ具合や足の上げ具合、肘を上げる高さまでピッタリ揃えることが出来れば、後はリリースポイントを調節するだけで制球は上手くいきます。
しかし、投げる毎に筋力も疲れてきますし、全く同じ動作を何度も繰り返すのは至難の業と言えるでしょう。
そこで、投球フォームを安定させるために最も重要となるのが、下半身の安定です。
特にピッチングにおいては、軸足一本で立ったときの安定感が、コントロールを司どっていると言っても良いでしょう。
その上で有効な練習方法としては
軸足一本で、3~5秒静止して投げる練習
これが良いです。
特に少年野球の段階で、投球動作の中で軸足一本で立ったときに、5秒程度グラグラせずにしっかり立てるようになれば優秀ではないでしょうか。
自由な足を振り上げてからリリースするまでの動きが一定に近いほど、コントロールが定まりやすいと思ってください。
少年野球のピッチャーに向いている選手とは
ある程度の高いレベルにおいては、「速いボールを投げるのは才能」だから努力だけではどうにもならないという話があります。
要は、誰でも150㎞のボールを投げられるわけではないということですよね。
確かに、親からの遺伝によって、瞬発系の筋肉と持久系の筋肉の比率は生まれ持ったものがあると言われています。
しかし、少年野球に置き換えれば、必ずしも小学6年生の段階で100㎞越えの球速が出せなくても、十分活躍できるわけです。
そこであえて、少年野球のピッチャーをやる上で、アドバンテージになるような、いわゆる「向いている選手」の特徴を挙げていきましょう。
- 身長が高い
- コントロールがまとまっている
- 人の真似が上手い
- 肩が強い
少なくともこれらの条件に当てはまる選手は、少年野球のピッチャーに向いていると思っていいでしょう。
まず、身長が高いことは間違いなく有利に働きます。
使うボールは全員同じなわけですし、マウンドからの距離も同じです。
身長が高いということは、高い位置から投げ下ろすことで角度も付きます。
それだけ筋力も多く備わっているはずなので、球威のあるボールを投げやすいというわけです。
また、コントロールがまとまっている選手もピッチャー向きでしょう。
キャッチボールの段階から暴投が少ないなど、力任せに投げない選手は、少年野球のピッチャー向きです。
後は、他人のモノマネが上手い人も、コントロールが良い選手に育ちやすいでしょう。
人の動きを見てすぐ真似できるという人は、頭で考えていることが動作として再現しやすい人なので、投球フォームもすぐに安定しやすいと言えます。
もちろん肩の強さも持って生まれた才能ですから、ぜひともピッチャーとして育ててみたい人材ではありますよね。
まとめ:少年野球のピッチャーはコントロールが大切
少年野球の段階では、練習量を増やすというよりも、根本的な身体の使い方を学ぶことが大切です。
それが再現性の高い動作に繋がり、試合の勝敗にも直結しやすいコントロールの向上に繋がります。
体幹など重要な筋肉の使い方が学べるように、練習メニューを工夫して作ってみてくださいね。