野球で「リード」と言えば、塁に出たランナーが少しでも先の塁に行きやすくするために行う行為と、キャッチャーがピッチャーの配球を考える行為の2パターンの解釈があります。
ここでは、ランナーのリードについて深く考えていきましょう。
よほど走塁に力を入れているチームでない限り、走者のリードについて意思統一されていることは少ないはずです。
しかし、リードのやり方次第では、盗塁の成功率やバッターの打率を引き上げる強力な武器になります。
相手ピッチャーの調子が良かったり、連打が期待できなかったりすると、1度出たランナーをなんとしてでも生還させなければなりません。
そこでリードの重要性が高まるわけです。
今回は、リードで盗塁成功率をアップさせる方法や、リードの基本的な種類について紹介していきます。
野球のリードとは
野球の走塁におけるリードを考える上で、まずはリードの目的についてチームで共通認識を持っておく必要があります。
リードは個人の走塁技術の問題だけでなく、チームとして一気に攻撃を畳みかけるための重要なポイントになるからです。
- 盗塁を成功しやすくする
- ピッチャーのリズムを崩す
- バッテリーの打者への集中力を削ぐ
- 相手の守備時間を長くする
リードの目的は、主にこのような項目が挙げられます。
リードを大きく取れれば、次の塁までの距離が縮まるので盗塁の成功率は上がりますよね。
各塁間は27.431メートルと決められていますから、仮にリードで3メートル取れれば、盗塁で走る距離は24メートルに短縮できます。
タイムにしてコンマ何秒の世界ですが、これが盗塁のギリギリアウトかセーフかを分けるのです。
また、リードを大きく取って牽制球をもらうことで、ピッチャーの投球リズムを崩すことも出来ます。
ランナーを警戒しなければならない分、打者への集中力も削がれるでしょう。
盗塁を警戒して配球がストレートなど速いボールに偏れば、バッターも狙い球を絞りやすくなります。
リードを大きく取ってあえて盗塁せず、バッターにストレートを投げさせるという戦略もあるのです。
リードによる駆け引きによって相手守備の時間が長くなれば、試合の「流れ」を引き寄せられます。
野球はイニングごとの間や一球ごとの間がある分、「流れ」がとても大きく影響するスポーツです。
なるべく攻撃時間を長くして守備時間を短くした方が、味方に得点が入りやすいという不文律があるくらいですから。
リードの取り方
野球のランナーが行うリードは、特にルールがあるわけではありませんが、大きく2つに分けることが出来ます。
- 第一リード(一次リード)
- 第二リード(二次リード)
両方を上手く使いこなすと盗塁や進塁の可能性は大きく広がるので、どちらも練習しておくべきです。
それぞれ詳しくやり方などをご説明していきましょう。
第一リード(一次リード)の仕方
第一リードとは、ピッチャーがセットポジションに入るまでの間で行うリードのことです。
多くの場合、「リード」と言えばこのリードを指します。
この第一リードの大きさによって、牽制のもらいやすさが変わってくると言えるでしょう。
ピッチャーへのプレッシャーも、第一リードが大きいほど影響を与えられます。
この第一リードはさらに2つの種類に分けることができ
- ワンウェイリード(牽制されたらすぐに帰塁できるリード)
- ツーウェイリード(帰塁と進塁両方の意識を持ち合わせたリード)
というものがあります。
ワンウェイリードは気持ちの上で帰塁のことだけを考えているので、リードの幅が大きくなっても牽制で刺されることは少ないです。
セーフティリードという表現をすることもあるでしょう。
ツーウェイリードは盗塁を狙いつつ帰塁にも気を使わなければならないので、リード幅は若干小さくなります。
ただ、選手によっては全く同じ幅で、気持ちの中だけでワンウェイリードとツーウェイリードを使い分けている人もいます。
盗塁や打球判断に自信が持てるかどうかによっても、リードの幅が変わってくるでしょう。
第二リード(二次リード)の仕方
第二リードは、別名リードオフとも呼ばれます。
ピッチャーがホームに投球した直後に取るさらなるリードのことです。
この動画のように、軽く横に飛びながら進む「シャッフルスタート」という形で第二リードを取るのが一般的です。
シャッフルスタートで軽く飛びながら第二リードを取り、空中にいる間にバッターのミートが行われるイメージになります。
そこで打球判断をして、ゴーかバックを判断するのです。
また、フェイクスタートと言って、あたかも盗塁をするかのようなスタートを2,3歩切る第二リードのやり方もあります。
この動画の川崎宗則選手はかなり大げさなフェイクスタートですが、これがピッチャーとキャッチャーのストレスになるわけです。
常に盗塁を警戒していなければなりませんから、打者への集中も出来ません。
ランナーとしても、実際に盗塁をする際のスタート練習やタイミングを計る練習になります。
リードの距離や幅の考え方
リードについて考えるときに、リードはどのくらいの距離を取ればいいのか疑問に思うでしょう。
もちろん大きいリードが取れた方が次の塁まで近くなるわけですが、牽制球への対応が難しくなります。
まずは自分がギリギリ戻れる距離のリード幅を見極め、その上で大きいリードと小さいリードの利点や欠点を整理していきましょう。
大きいリードのメリット
- 次の塁まで近くなる
- 牽制球を投げてもらいやすくなる
- バッテリーの打者への集中を邪魔できる
大きくリードを取るメリットは、やはり次の塁まで走る距離を稼げるという点です。
第一リードで大きく取り、さらに第二リードも取ることで大幅に次の塁に近づけます。
また、大きな第一リードはピッチャーやキャッチャーの警戒心を煽ることも可能です。
牽制球を何度ももらえれば、エラーの可能性も高まりますし投球のリズムも崩れます。
盗塁警戒からバッターへの配球が偏れば、狙い球も絞りやすくなるのです。
大きいリードのデメリット
- 牽制球への対応が難しい
- 戻ることに集中すると、スタートが遅れる
- キャッチャーからの牽制で刺されることもある
大きくリードを取ることで、素早い牽制で刺されてしまうリスクも大きくなります。
その分帰塁することに重心を置かなければならないので、逆に盗塁などのスタートが遅れてしまう可能性も出てくるわけです。
さらに、第二リードでも大きく出すぎると、投球後のキャッチャーからのピックオフプレーで刺されることもあります。
小さいリードのメリット
- 牽制球で刺されにくい
- 盗塁で思い切ってスタートできる
第一リードが小さい場合は、ピッチャーもあまりランナーを警戒しなくなります。
牽制が来たとしても、すぐに戻れるというメリットがありますよね。
また、すぐに戻れる分、スタートに重きを置くことも出来ます。
小さいリードの方が、かえって盗塁も思いっきりスタートすることが出来るのです。
小さいリードのデメリット
- 次の塁までの距離が長い
- スタートのタイミングが遅れると余裕でアウト
リードが小さい場合は、単純に次の塁までの距離が伸びます。
リードの幅が50㎝違えば、タッチプレイやフォースプレイでギリギリセーフが余裕でアウトに変わるのです。
また、リードが小さい分スタートを抜群のタイミングで切らないと、盗塁の成功率も低くなります。
どちらのリードもメリットデメリットが混在しているので、状況や自分の脚、相手守備陣の力量によってリード幅を変えていくのが望ましいですね。
走塁のリードの注意点
リードを取る際には、注意しなければならない点もあります。
特に走塁ミスは味方のモチベーション低下にも繋がるので、基本的な注意事項を確認しておきましょう。
- 足をクロスさせすぎない
- 帰塁の際に肩を痛めないように
- ピッチャーから目を離さない
この3つが大切です。
意外とやってしまいがちなのが、リードの幅を広げていく際に足をクロスさせすぎてしまうことです。
ベースから距離を取るために体重を若干だけ右側に寄せ、さらに足がクロスしてしまうとすぐに戻ることが出来ません。
牽制が上手いピッチャーは、そのようなランナーの一瞬の隙をついて投げてきます。
牽制アウトは相手守備陣の士気が大いに高まるので、リードを取る際には足がクロスしないように気を付けましょう。
また、帰塁のときにはほとんどの場合ヘッドスライディングで戻ります。
その方が素早い帰塁が出来るからです。
しかしこのときに、ベースに手をついた衝撃で肩を痛めてしまう危険性があります。
低い姿勢でスライディングして、ベースの上から手を置くようなイメージで帰塁しましょう。
後は基本的なところで、ピッチャーから目を離さないことです。
ピッチャー自身がランナーを見ていなくても、キャッチャーや他の野手からのサインで急に牽制球を投げてくることがあります。
投手の動きをしっかり捉えておきましょう。
まとめ:リードで投手にプレッシャーを
少年野球では、最近になって盗塁の是非を問う識者も出てきているので、あまりリードに関しては深く考えないかもしれません。
しかし、野球のレベルが上がるにつれてリードが持つ意味は大きくなってきます。
リードの仕方で得点効率が変わってくるので、少ない出塁でも効果的に得点するためにぜひ練習しておきましょう。