キャッチャーは、野球の中でも守備の負担が特に大きいポジションです。
キャッチングやスローイングの技術だけでなく、その構え方一つとってもピッチャーのピッチングに影響を与えます。
試合の行方を左右することもあるキャッチャーですが、実際には詳しくキャッチャーというポジションについて指導できる人は多くありません。
ですから、キャッチャーになった人はある程度自分で勉強しなくてはならない部分があります。
そこで今回は、キャッチャーとしての基本部分である「構え方」について解説していきましょう。
キャッチャーの構え方の基本
キャッチャーの構え方は、投手側からの見え方によって投球に大きく影響を与えます。
どっしりと大きく構えるキャッチャーなら、ピッチャーも投げやすくなってストライクもどんどん奪えるでしょう。
逆に自信なさげに小さく構えるキャッチャーだと、コントロールが定まりにくくなるかもしれません。
キャッチャーが座る位置
キャッチャーが構えるときに座る位置は、キャッチャースボックスと呼ばれるゾーンになります。
ホームベースと審判の間にある部分のことです。
野球の規則では、投球の際には両足がキャッチャースボックスの中に入っていないといけないというルールがあります。
それが最低限です。
あとはバッターが振ったバットにミットが当たらない距離感で構えましょう。
また、キャッチャーが配球をリードしている場合、要求したコースが身体の中心に来るようにしましょう。
少し場所を横に移動するという配慮をすることで、ピッチャーが投げやすくなります。
キャッチャーの足の位置
キャッチャーが構える際には、両足が平行に並んでいても問題ありません。
ただ、ランナーが出たときなどは、盗塁や進塁の警戒も兼ねて左足を若干だけ前に置いておくと良いでしょう。
その方が、スローイングに移行する際にスムーズです。
半身にならない程度に、少しだけ右足を後ろに引くことがコツになります。
右腕の位置
キャッチャーが構えるときには、右腕は右の太ももより後ろにしておくのが基本です。
これは、ファールチップなどが右手に当たってケガをすることの予防になります。
しかし、ランナーが盗塁しそうな場合などは右手を右ひざ付近に置いておくこともあります。
キャッチャーミットの真後ろに右腕がくるような位置取りで構えれば、万が一の怪我を防ぐこともできますからね。
左腕の位置
キャッチャーミットをつけている左腕の位置は、ミットが身体の中心に来るようなところで構えます。
左肘を曲げた状態で構えて、キャッチングの瞬間に軽く前に押し出すようなイメージになると理想的です。
また、肘を下げすぎるとピッチャーから見て的が小さく見えるので、少し肘を上げるイメージにするのも良いでしょう。
キャッチャーの構え方のコツ
キャッチャーとしての構え方をさらにワンランク上の状態にするには、細かい部分にも気を使った方が良いです。
上手く見えるコツを6つ紹介していきます。
- 大きく構える
- ピッチャーと正対する
- ミットの面を投手に向ける
- 人差し指を上に向ける
- 右手は後ろにしまう
- 左肘を下げない
一つずつ解説していきましょう。
大きく構える
キャッチャーとして構えたときにピッチャーがから大きく見えた方が、投げやすいですし思いっきり腕を振れます。
構えを大きく見せるには、胸をしっかり投手に向けることと、太ももが地面と平行になるくらいまでしゃがむということが大切です。
胸が投手に見えていると、狙うべき的が大きく見えて心理的に楽に投げられます。
また、地面にベタッとしゃがむよりは、太ももが地面と平行になるくらいまでのしゃがみ方の方が、身体が大きく感じられるのです。
投手と正対する
意外とやってしまいがちなのが、ランナーを警戒しすぎて半身になってしまうことです。
右足を後ろに引きすぎると、正面からでは身体が細く見えてしまい、かえってピッチャーは投げにくいです。
ワンバウンドなどを後ろに反らしてしまうのではないかという、不安感もよぎってきます。
身体をしっかりピッチャーに正対させて、ピッチャーに安心して投げてもらうことを第一に考えましょう。
しかも、難しいバウンドを体で止められる確率も高いので、守備力向上のためにもきちんと正対して構えた方が良いです。
ミットの面をピッチャーに
キャッチャーの構え方でピッチャーの投げる球の質に影響します。
キャッチャーミットの中をしっかりピッチャーに見せるように向け、狙うべきところを明確に示してあげましょう。
ピッチャーが投げるまでミットを下ろしていると、コントロールの悪化に繋がることもあるのです。
人差し指を上にする
キャッチャーミットを構えたときに、人差し指が真上に来るように構えると良い形になります。
その方が、キャッチャーミットが横にも縦にも広く見せられるのです。
ミットの構造が、人差し指が12時の方向を向いているときに真横になるように設計されています。
ミットの角度一つでも細かい制球に繋がるので、意識しておきましょう。
右手は後ろにする
基本的には、右手は右太ももの後ろや腰の後ろに隠しておいて大丈夫です。
お腹や胸、足にはプロテクターやレガースがありますが、右手だけは素肌なので打撲や骨折をしやすいと言えます。
ランナーがいてなおかつ盗塁の可能性が高いときだけ、キャッチャーミットの真後ろに右手が来るように構えれば良いのです。
左肘を下げない
ミットを装着している左手の脇を閉めすぎると、ピッチャー目線ではキャッチャーが小さく見えます。
軽く脇を空けて、堂々としている方が投げやすいのです。
肘を上げすぎる必要はないですが、肘がキャッチャーミットの真下にならないように、軽く脇を開けておきましょう。
ランナーがいるときのキャッチャーの構え方
ランナーなしとランナーありの状態では、キャッチャーの構え方も微妙に違ってきます。
ランナーがいて盗塁の可能性があるときの構え方としては
- 右足を軽く後ろに引く
- お尻を完全に下に下げない
- すぐにスローイングに移れる心構えをしておく
これらのことが重要です。
現役時代の元ヤクルトスワローズ古田敦也さんの構え方を参考にしてみてください。
ランナーがいない状態との最も大きな差としては、右足が若干だけ後ろに引かれていることでしょう。
その方が、ボールを捕球してからすぐに送球体勢を作ることが出来ます。
また、普段はお尻を完全に下げて構えていても良いですが、ランナーがいるときは若干浮かせておいた方がいいです。
キャッチャーの体格や筋力にもよりますが、中腰のような状態で構える選手もいます。
心の準備も必要で、「盗塁するかもしれない」「少し弾いたらスタートするかもしれない」という気持ちの準備もしておくべきです。
古田と谷繁二人の名キャッチャーの構え方
キャッチャーとしての構え方を上達させるには、野球の最高峰であるプロ野球界の選手を真似することがオススメです。
特に、元ヤクルトスワローズの古田敦也さんと、元中日ドラゴンズの谷繫元信さんが良いでしょう。
この二人は2000本安打を記録した打力もさることながら、歴代のキャッチャーの中でも1,2を争う守備力の持ち主です。
二人の構え方には決定的な違いがあるので、それぞれ詳しくみていきましょう。
古田敦也の構え方
古田氏の構え方で特徴的な点は
- 左ひざを地面に着けている
- 背筋が伸びている
- ボールの軌道を先回りして、中心に寄せてキャッチングしている
このようなことが挙げられます。
他のキャッチャーには無い最大のポイントが、やはり左膝を地面に着けていることでしょう。
本人曰く、左膝を折っていた方が、左手を自由に動かせるスペースを作れるという話でした。
確かに、腕を動かしやすいので、フレーミングといって捕球したボールを上手くストライクに見せる技術が際立っています。
谷繫元信の構え方
谷繁氏の構えで特徴的な点は
- ミットの面を常に投手に向けている
- コースによっては、膝を付けずに構えている
この2つです。
古田氏の構え方との違いは、キャッチャーミットの中の面を常に投手側に向けているという部分が最大の相違点になります。
多くのキャッチャーは、捕球のリズムを取るためにピッチャーがボールをリリースする直前にミットを下に下げるものです。
例えばこんな感じ
これが決して悪いということはありませんし、この方がリラックスして捕球できるというメリットがあります。
しかし谷繁氏が現役の時は、キャッチャーミットを構えたら、面が常に投手に向いているのです。
これはピッチャーが制球しやすいように、狙い場所を明確に表示しているという点で優れています。
それでいてフレーミングが上手いので、まさにプロの技と言えるでしょう。
どちらも素晴らしいキャッチャーであることには変わりないので、自分がやりやすい方法で構えてみてください。
キャッチャーのフレーミング
キャッチャーの構え方が、フレーミングにも影響を及ぼします。
フレーミングとは、捕球した瞬間にいかにストライクに見せるかという技術のことです。
極端に言えば、ギリギリボール球になってしまったコースを、捕球の技術によってストライクに見えるようにするというスキルになります。
審判も人間ですから、キャッチャーのフレーミングが上手ければ多少のボール球をストライクとコールしてくれるかもしれません。
構え方とフレーミングの関係で、大切なポイントを3つご紹介していきます。
- 身体の正面で捕る
- 肘を上げる
- ミットを動かしすぎない
左右の位置で、自分の身体の中心線に当たる部分で捕球できればストライクに見えます。
ですからピッチャーにサインを出した後に、要求したコースに身体をしっかり寄せることが大切です。
腕だけで捕球するような形になると、ホームベースから遠く見えてしまうかもしれません。
また、左の肘を横にして捕ることも有効です。
肘の位置が下がりすぎると、審判目線では低めに外れているように見えてしまうかもしれません。
フレーミングを意識する際は、ミットを動かしすぎないように注意しましょう。
明らかなボール球を、捕球の直後にグッと中心に寄せて動かすと、審判への心証を悪くします。
そういったあからさまなフレーミングばかりやっていると、ストライクもボール球に見えてしまうものです。
審判を騙そうとするのではなく、キャッチしたところでビタッと止めるイメージで行いましょう。
もっとも悪いのは、球威に負けてミットが流れてしまうことです。
キャッチャーの構え方を練習するやり方
キャッチャーとしての構え方を上達させるには、反復練習しかありません。
お尻や下半身の筋力も必要とするので、筋トレを兼ねた反復練習で動き方を体に染み込ませていくのが一番です。
西武ライオンズで行われていたこんな練習も参考にしてみてください。
中腰でフットワークを行う練習や、ワンバウンドのボールを体で止める練習など、繰り返し行うことで身についてくるものもあります。
キャッチャーは野球の中でも最も経験値がモノを言うポジションなので、たくさん練習すればするほど上手くなるでしょう。
まとめ:キャッチャーの構え方は投手目線で考えよう
自分が投手だったら、どんなキャッチャーの構えが投げやすいか考えてから取り組んだ方が、良い構え方が出来るはずです。
小さい的よりは大きい的の方が投げやすいですし、ワンバウンドなど多少の暴投をしっかり止めてくれそうな安心感が求められます。
キャッチャーは打撃よりも守備のスキルが重要なので、とにかく繰り返し練習したり、上手いキャッチャーを見て真似したりすることが上達の近道になるでしょう。