ベースランニングは、少年野球でもそこまで深く練習するチームは少ないのではないでしょうか。
せいぜい知っていることと言えば「多少膨らんで塁を回る」ということくらいで、かくいう筆者も突き詰めていませんでした。
しかし、ベースランニングの上手い選手は絶対に良い選手です。
長打を打った時のベースの踏み方や走り方などで、ツーベースがシングルヒットの差になります。
一流選手でも打率が3割だということを考えれば、一つ先の塁に進めているかどうかは得点に大きく関わってくるのです。
そこで今回は、チームに絶対欠かせない選手になるための、ベースランニングの基本やコツを紹介していきます。
ベースランニングとは
ベースランニングとは、足の速さだけで評価が決まるものではありません。
直線的な50m走のスピードが速いからといって、野球のベースランニングが上手いとは限らないのです。
ファーストからホームまでの4つの塁は、「ダイヤモンド」とも呼ばれるように、四角形に配置されていますよね。
そのため、走る勢いを考えても直線的なベースランニングではタイムロスが必ず生じます。
いかにスピードを落とさず、1周するまでの間に3つあるコーナーを上手く回れるかがベースランニングの神髄なのです。
ベースランニングのスキルによって、シングルヒットをツーベースにすることも出来ますし、スクイズをツーランスクイズにすることも出来ます。
一流のバッターですら7割近く凡退するのが野球ですから、ランナーが一つでも先の塁に進んでいるというのは得点効率に多大な影響を及ぼすわけです。
また、ベースランニングのスペシャリストになれば、「ピンチランナー」として試合終盤の代走という出番でなくてはならない存在になります。
ベースランニングのコツ
ベースランニングを上達させるには、純粋な足の速さに加えて塁を回る際の技術が必要です。
どんなことを意識すれば良いのか、ベースランニングの基本的なコツを整理していきましょう。
- ベースを左足で踏む
- 「踏みつける」のではなく「触れる」イメージ
- 重心を低くしすぎない
- 左足でスタートを切る
一つずつ詳しく解説していきます。
左足でベースを踏む
これは主に、ベースを踏んでから先の塁を狙うときのコツです。
例えばバッターボックスから1塁を回って2塁を狙うとき、1塁ベースの内側の角を左足で踏んでいくというのが効率的なベースランニングのやり方になります。
一見すると、右足でベースの内側を踏んだ方がインコースを走れそうですが、そうするとカーブの際に急激にスピードが落ちます。
ブレーキを最小限にして回るためにも、左足でベースの内側の角を蹴って膨らみを小さくするのです。
軽く踏む
ベースを踏む際、1塁に駆け抜けるときは別として、基本的には角に軽く触れるようなイメージで踏みます。
ケガ防止という観点でも有効ですし、そういった意識で走った方が遠心力に負けない走り方が出来るのです。
強く踏みつけるような踏み方をすると、その分ベースを回るときにブレーキがかかってしまいます。
コンマ何秒でアウトかセーフが左右されるので、少しでも効率よくベースランニングをするための細かなポイントです。
重心を低くしすぎない
野球の練習をしていると、何かにつけて「腰を落とせ」と言われるはずです。
しかしこれは、厳密にいえば間違っている場面の方が多いと言わざるを得ません。
なぜなら、重心が低くなると身体の動作における自由度が低下するからです。
要は、重心が低いほど上半身の動きも固くなるということですね。
重心とは、全身の体重を1点で支えられるような「重さの中心」と言えます。
確かに重心が低い方が安定性は高いのですが、走る際には「移動」しなければなりません。
陸上の短距離走の選手を思い浮かべていただくと、重心を低くして走り続けている選手なんていません。
特にベースランニングの場合は、左方向に回旋するという力も加わりますから、自由に体を動かせないと効率的な走り方が出来ないのですね。
左足でスタート
これはすでにランナーとして塁に出た状態のときに当てはまります。
例えば自分が1塁ランナーで、バッターが外野を抜くような当たりを打った時。
スタートをいち早くスムーズに行うためには、左足で地面を蹴って右足の前にクロスさせてスタートした方が良いです。
これは先ほどの重心の話にも通ずるところで、右足を開いてスタートしてしまうと、足の幅が広くなって重心が低くなります。
これが余計な筋肉の緊張を招くので、スタートダッシュが出来ません。
ベースランニングでコンマ何秒を大切にするなら、左足からスタートする意識を持ちましょう。
状況別ベースランニングのやり方
ベースランニングやり方は、打球の状況によって全く異なります。
4つのシチュエーションに分けて、それぞれのポイントを解説していきましょう。
- 一塁への駆け抜け
- シングルヒットを打ったとき
- 長打コースの打球を放ったとき
- すでに自分がランナーのとき
一塁への駆け抜け
ベースランニングで最も機会が多いのは、1塁への駆け抜けだと思います。
内野ゴロ、または内野安打を打ったときは1塁を駆け抜けることになりますよね。
ポイントとしては
- 1塁でスピードを緩めない
- 踏む足は左右どちらでも良い
- 上手くできるならヘッドスライディングの方が速い
ということです。
まず基本的なことで、駆け抜ける際は1塁よりも少し先がゴールだと思って走った方が良いでしょう。
そうでないと、ファーストベースに到達する直前で少しスピードが緩くなる可能性があります。
1塁への駆け抜けは常にギリギリの勝負なので、塁間はフルに全力で走るべきですよね。
右打席と左打席で70センチ程度の差がありますから、ベースを踏む足は左右どちらでも構いません。
できれば左足でベースの外側を踏んで駆け抜けるのが良いですが、わざわざ足を合わせることは無いですね。
また、野球界でたまに論争がある「駆け抜けVSヘッドスライディング」どちらが早くベースに辿り着けるかという問題があります。
一つの説ではありますが、上手くできるなら「ヘッドスライディングの方が速い」とする検証結果が有力です。
ただこれは、ヘッドスライディングの恐怖心もなく、スピードを殺さない完璧なスライディングが出来たときの話ではあります。
実際には、ケガへの不安などから少し走るスピードが緩むことや、ヘッドスライディングのタイミングが速すぎるケースが出てくるでしょう。
骨折や脱臼などのリスクも考えると、できれば駆け抜けた方が良いかもしれませんね。
シングルヒット
内野手の間を抜くヒットや、外野手の前に落ちるようなシングルヒットの場合、ファーストベースを少し回ったところで止まります。
この時のポイントは
- 2塁を狙う姿勢を見せる
- 戻るときに油断しない
という2点が挙げられます。
シングルヒットでのオーバーランは、野手にプレッシャーをかける意味合いもあるのです。
そのため、1塁を少し回ったところで数歩加速し、打球の位置を見ながら止まるというのが良いでしょう。
最初から流すようなオーバーランをしていると、相手守備も安心してプレッシャーを全く感じません。
よくあるのが、シングルヒット後のオーバーランで1塁までゆっくり戻っているせいで、その間にタッチアウトになってしまうパターンです。
塁に戻る最後まで気を抜かず、ボールがどこにあるのか把握しながら行動する必要があります。
長打のとき
外野の間を抜けるような打球を打ったときや、外野フライを打ったときは、走り出しから1塁を回るための走路を取らなければなりません。
ファールライン上を直線的に走るのではなく、最初から少し右側に膨らんだ状態で走り出します。
ファーストベースを踏むときには、ベースに対して斜めに入っていくようなイメージです。
これが、最初は直線的に走り出して急に右側に膨らむと、かなりタイムロスになります。
スピードも落ちますから、打った後の瞬時の判断が大切です。
ランナーのとき
自分がすでに出塁してランナーとしてスタートする場合、ベースランニングで大切なのは「状況判断」です。
ツーアウトならどんな打球でも、バットに当たった瞬間ゴーですよね。
さらに、ツーアウトでカウントがフルカウント(3ボール2ストライク)だったら、盗塁のようにスタートを切ります。
借りにボールだったとしても、フォアボールでそのまま進塁できるからです。
難しいのはライナー性の打球判断で、第二リードで軽くジャンプして空中で打球を見る必要があります。
ベースランニングの距離はどのくらい?
野球はどの球場でも、各ベースの間の距離が決まっています。
中学生以上なら、プロ野球と同じ規格です。
それぞれの塁間は、27,431メートルと決まっています。
ですから、ダイヤモンドを一周したら約110メートルです。
逆に言えば、ベースランニングの最長距離が100メートルと少しなのですから、守備においてもそれ以上長い距離を全力で走ることはまずありません。
長距離走が苦手でも、短距離走が得意なら十分活躍できるということですね。
ベースランニングのタイム
ベースランニングのタイムは、俊足と呼ばれる基準がある程度決まっています。
- 1塁への駆け抜け・・・4秒以内
- ツーベース・・・8秒以内
- スリーベース・・・12秒以内
- ランニングホームラン・・・15秒以内
だいたいこれらのタイムをクリアしていると、俊足と呼べるでしょう。
さらにプロ野球界でもトップクラスの選手になると、1塁までの到達タイムで3秒50代になってきます。
遅い選手では4秒台後半になってくることを考えると、この短い距離で1秒の差が出るというのは驚異的なスピードです。
2塁到達タイムなら、俊足選手の場合は7秒台前半になります。
直線ではなく常に曲線を描きながら走っているのに、54メートルほどの距離を7秒前半で走るのは凄まじい身体能力と言えますね。
3塁到達タイムなら、超俊足の選手は11秒を切ってきます。
ベースを回るごとに、加速しているということですね。
そしてランニングホームラン、すなわちベース1周の到達タイムは、14秒台前半になる選手もいます。
試合でのランニングホームランではなく、単純なベース1周のタイムなら、元巨人の鈴木尚広さんや藤村大介さんが13秒台を記録していたそうです。
やはり足の速さを磨くだけでなく、ベースランニングの技術を磨くことで大幅にタイムは縮められるということですね。
まとめ:ベースランニングで得点アップ
そもそもベース間が27メートル程度しかないことを考えると、1秒の差というのは距離でいうととても大きな差です。
純粋な足の速さだけでなく、各ベースのコーナーをいかにロスなく回れるかがカギになります。
ベースランニングはやればやるほど上手くなるので、一流選手の映像などを見ながら練習しておきましょう。