少年野球の指導環境というのは、日本全体の野球界の土台と言えます。
少年時代にどのような野球に触れてきたかによって、大人になってもずっと野球が好きでいられるかどうか決まると言っても過言ではありません。
しかし、アマチュア野球の中でも特に少年野球の指導は、周りの大人の経験をそのまま子供たちに押し付けるやり方になってしまいがちです。
小学生は大人の言うことをスポンジのように吸収する時期ですから、監督やコーチとして接する大人の野球観がそのまま少年野球の野球観になってしまいます。
それだけ大切な時期である少年野球の指導方法は、どのようなことに気を付けながら行えばいいのでしょうか?
この記事では、少年野球の指導方法や、心得について、誰もが知っておきたいことについてまとめていきます。
少年野球の指導方法の基本
少年野球の指導にあたることになったなら、自分の中で指導方針のような軸を定めておくことが大切です。
少年野球で子供たちと接する場合、ただ単に野球を教えれば良いだけの役割には留まりません。
小学生の子供たちにとっては、野球の上達以外にも、大人とのコミュニケーションを形成する大切な時間になります。
それを踏まえ、野球以外でも子供たちの将来に役立つようにするために、指導者が持つべき心得を整理しておきましょう。
- 指導者の勝手なこだわりは捨てる
- 褒めて伸ばすことを基本とする
- 基礎だけに固執しない
- 一緒に目標を立てる
- 野球以外でも模範となる
- 理由からきちんと説明する
- 子供たちに考える機会を与える
指導者の勝手なこだわりは捨てる
少年野球の場合、その年齢から野球を始める子ばかりです。
そのため、最初に触れる野球観がその子供にとっての将来に大きく影響します。
そこで指導者側が古い考えや、指導者自身の浅い経験に基づいた指導を行っていると、子供たちの可能性を潰してしまうかもしれません。
野球で言えば、「バッティングでは叩きつけるべきだ」など、ゴロを打つことを強制するような教えをしていると、ホームランバッターは生まれないでしょう。
その子が持っている潜在能力を潰さないために、まず自分自身のこだわりは捨ててから少年野球の指導に臨むべきです。
褒めて伸ばす
特に少年野球の場合、褒めて伸ばすことが基本になります。
足りないところを補うための練習ばかりしていて、もし上手くいったとしても平均的な選手が量産されるだけです。
第一、練習が楽しくなくなってしまう危険性もあります。
まずはその子の長所を見つけてあげて、出来る部分を褒めてさらに伸ばしてあげることを優先しましょう。
基礎に固執しない
例えば野球の守備で言えば「腰を落とせ」という昔からの基礎があります。
しかし、その基礎は本当に正しいものなのでしょうか?
自分で形をやってみたらわかると思いますが、腰を落としすぎるとかえって動きにくくなります。
しかも、どんな打球に対しても腰を落とした捕り方のみを強制していたら、手を伸ばせばギリギリ届くような打球に追いつくことが出来ません。
基礎に固執することなく、ある程度応用部分の余裕を残してあげることで、その選手の独創的なプレーが生まれるのではないでしょうか?
一緒に目標を立てる
少年野球だけでなく、勉強など実生活にも役立ちます。
まずは少年野球を通して達成したい大きな目標を選手と一緒に立てて、それを達成するための小さな日々の目標も設定していきましょう。
少年野球で成功体験を積み重ねることで、何でも自分で目標や計画を立てて頑張り抜けるような性格も形成されていきます。
プロ野球選手になるような人でも、何も考えずにただ野球をやっていたら上手くなってプロになれたという人はいないはずです。
「レギュラーを取りたい」
「甲子園に出て有名になりたい」
「プロ野球選手になって活躍したい」
という大きな目標を頭の中で描いているからこそ、毎日の練習を効率的に行おうとするわけです。
少年野球を指導することで、計画と達成の繰り返しを癖付けるように教えてあげましょう。
野球以外でも模範となる
少年野球をやる子供たちは、全員プロになるために野球をやっているのではありません。
家庭の親御さんの考え方によっては、
「身体を強くしたい」
「他の子どもとの関わりを作ってあげたい」
「礼儀や挨拶を身に付けさせたい」
という目的があるはずです。
ただ単に野球が上手くなるという目的のためだけに少年野球をやっているわけではないので、普段の言動なども気を付ける必要があります。
指導者が普段から人の欠点ばかりを指摘していたり、他人に対して横柄であったり、暴力に近い指導を行うような人柄だとしたら、子供たちはそれを見て
「大人ってこういうものなんだ」
「指導はこういう風にやるんだ」
と勘違いして育ってしまいます。
人として最低限のマナーを身に付けられるように、まずは指導者が模範となってお手本を示してあげることが何より大切です。
理由からきちんと説明する
人間は、目的の無いことに努力は出来ません。
練習メニュー一つとっても、「なぜそれをやるべきなのか?」という理由を説明できることが大切です。
子供のころから、全ての行動に対して自分の中で理由付けできるようになっていると、正しい努力が出来る人間に育つでしょう。
キャッチボール一つとっても、「肩を温めるため」に行うのか「守備練習の一環」として行うのかでは、上達の成長曲線が全く異なるものになります。
考える機会を与える
先ほど解説した「理由から説明する」という部分で、子供たちにすぐに答えを与えるよりは、少し自分でも考える機会を与えてあげた方が良いです。
その方が、「自分で考えて行動できる」人間になります。
逆に何でも答えを示してしまうと、「言われたことだけやる」いわゆる指示待ち人間になってしまうかもしれません。
子供自身にも考えてもらって、その上で指導者自身がしっかり理由付け出来ていることが大切なのです。
少年野球の優秀な指導者の共通点
少年野球では、子供とフレンドリーに接する指導者が良い指導者というわけではありません。
少年野球を卒業して子供たちが大きくなった後も、本人が野球をずっと好きでいられるような関わり方が出来ていれば、良い指導者と言えるでしょう。
また、少年だったその子が、大人になって自分自身が優秀な指導者になっていたら、最高の形かもしれません。
少年野球の良い指導者とは、どのような共通点があるでしょうか。
- 選手に共感出来ている
- 理由から説明出来ている
- 褒めて伸ばす教育が出来ている
- オンとオフのスイッチが切り替えられている
まず普段の接し方として、選手である子供たちの声を頭ごなしに否定するのではなく、ちゃんと共感出来ていることが大切です。
指導者である立場の大人が子供の声に共感してくれる人柄だったら、子供たちはちゃんと自分の意見が言える人間になります。
これが少年野球の段階から、頭ごなしに否定される日々を送っていたら、大人になっても何も自分の気持ちを表現できない人間になってしまうのです。
また、全ての練習メニューやルールを理由からしっかり説明してあげられることで、選手本人も納得した上で頑張ることが出来ます。
なぜ?という部分から、しっかり説明できるようにしておいた方がいいですね。
褒めて伸ばす接し方が出来ていれば、キツイ練習でも自分に負けずに頑張ることが出来るでしょう。
さらに重要なのが、オンとオフのメリハリがしっかりしていることです。
練習中は真剣に、練習が終わったらフランクに接することが出来るようなメリハリを見せてあげれば、子供たちもそれを見習います。
真面目にやるべき時と、肩の力を抜いて良い時というのは、野球だけでなく日常生活にも様々な場面で当てはまるはずです。
少年野球のダメな指導者の特徴
少年野球はまだまだ古い世界や風習が残っていることもあり、未だにダメな指導者だと言わざるを得ない人間もいるのが事実です。
自分がダメな指導者にならないために、その特徴も押さえておきましょう。
- 恐怖で従わせる
- 自分の経験でしか判断が出来ない
主にこの2つです。
未だに多いのが、古い時代から抜け出せない少年野球の指導者でしょうか。
何かミスをすると大きな声で罵声を浴びせたり、グラウンド全体を常に恐怖感で支配するような指導者がいます。
これでは子供たちも、常に指導者の顔色ばかり窺ったプレーになってしまうでしょう。
野球も楽しくないですし、中学生になっても野球を続けたいと思えるような子がいなくなってしまいます。
また、最新の野球の理論や指導法を学ぼうとせず、昔の自分の経験でしか教えられない指導者は悪でしかありません。
分かりやすいところで言えば
「練習中は水を飲まない」
「ミスをするとすぐに罰走」
といった意味不明な指導方法です。
自分がそのような指導者にならないことはもちろん、もし自分の子供を入れようと思っているチームがこのような風習を取り入れていたら、少し考えた方が良いかもしれません。
少年野球に罵声はもう古い
昔から野球と言えば、グラウンドに罵声が飛び交い、ミスをした選手を全員で攻めて奮い立たせるような習慣があります。
ハッキリ言って、少年野球に罵声はもう古いです。
時代的に、けなして反骨心を煽るような指導法はもう受け入れられない時代になってきています。
それを見て入団したいと思う子供や親が、果たしてどのくらいいるでしょうか?
長所を褒めてどんどん伸ばす時代なので、いかに選手に自信をつけてプレーさせるかがカギになります。
そう考えると、おのずとどのような声掛けが必要なのか分かってくるはずです。
「罵声ナシ」
を、あえて掲げる少年野球チームも増えてきたので、それが時代が変わってきた証拠ではないでしょうか。
少年野球には民間の指導者資格もある
基本的に少年野球を指導するのに特別な資格は必要ありませんが、やはりちゃんと勉強することも大切です。
そうでなければ、自分が経験してきた野球観でしか指導が出来ないので、非常に偏った指導になってしまいます。
少年野球で言えば「公益社団法人全日本軟式野球連盟」
などが、指導者講習を行っています。
受講して一定の基準をクリアすれば、公認の学童野球資格を得ることも可能です。
資格があることがアドバンテージになるというよりは、間違った指導をしないように、関わる指導者が知っておくべきことが分かるということですね。
指導者にオススメの本
野球の指導を行う際に、関連書籍を読むこともオススメです。
自分が少年野球をやっていた時代とは、指導方法や理屈が随分変わってきています。
最新の指導法や、本当に結果が出る指導法を学ぶには、本が一つのヒントになるのです。
数ある書籍の中からあえてオススメしたいのは
「立花龍司さん」の関連書籍です。
この方は、日本人初のメジャーリーグのコーチとしてアメリカに渡った実績があります。
本人がプロ野球選手だったわけではありませんが、コンディショニングの理論が認められて、身体の理にかなった指導法を行うことで有名です。
また、近年では有料級の情報もYouTubeなどで多くみられるようになっています。
元プロ野球選手を始め、甲子園経験者など様々な方がYouTubeで野球理論を配信しています。
それも一つの教材として、活用してみてはいかがでしょうか?
まとめ:少年野球の指導ではトラブルも付き物
少年野球の指導では、どんなに良い指導を行っていると思ってもトラブルが付きまといます。
保護者の考えとの不一致や、他のコーチとの意見の食い違いなどです。
それを少しでも回避するためには、やはり子供を主体に置いた考え方が出来るチーム作りが最も大切になります。
少年野球の主役は子供たちですから、子供たちに野球を好きになってもらえるような指導者になりたいものですね。