野球のレフト守備は、少年野球の段階では重要視されるポジションと言えます。
少年野球の段階では右打者が多い傾向がありますし、流し打ちの技術もあまり無いので必然的にレフトへの打球が増えるわけです。
しかし、プロ野球などでは打撃重視の選手がレフトを守ることも少なくありません。
野球のレベルが上がっていくにつれて、レフトの役割や動き方が変わってくるということなのでしょうか?
今回は、野球のレフトというポジションに求められる能力や、基本的なコツなどについて紹介していきます。
レフトの守備位置
レフトのポジションは、ホームベースから見て左側の外野エリアになります。
三遊間を結ぶラインよりも後ろ、三塁線のファールライン、そして左中間までの範囲がレフトの守備範囲です。
レフトの守備位置を表す番号は「7番」で、日本語では「左翼手」と表現されます。
英語では、「LF」(Left fielder)と表記されます。
少年野球では、ライトよりもレフトの守備能力が重視されることが多いです。
右打者が多いことや、狙って流し打つ技術が身につかない年代ということもあり、強打者の打球がレフトに飛ぶことが多いという理由があります。
高校や大学、プロ野球とレベルが上がっていくにつれて、左打者の増加や流し打ちスキルの上達によってライトとレフトの守備機会の差は少なくなるでしょう。
特にDH制度の無いセリーグでは、打撃に期待されて入団した助っ人外国人選手がレフトを守るケースも増えます。
これは、得点圏と言われる3塁や2塁との距離が近いことが理由でしょう。
ライトの場合は、3塁から最も遠いポジションになるので、肩の弱さや緩慢な打球処理をしているとシングルヒットで一気にチャンスを広げられてしまいます。
従って、レフトにも守備の良い選手を置けるチームは自然と外野陣の守備能力が高い布陣が出来上がります。
バッターによって守備位置を変える
レフトの定位置は、三遊間を結んだラインとフェンス際の中間点よりやや後方と考えてください。
しかし、バッターの特徴やスイングの傾向によって守備位置をその都度調整する必要があります。
例えば非力な左バッターの場合は、大飛球がレフトの頭上に飛ぶ確率は少ないです。
そのため、定位置よりも前方にシフトします。
逆に右の強打者であれば、フェンスに寄って長打に備えることになるでしょう。
ランナー2塁で僅差の場面では、シングルヒットでランナーが生還してしまうかもしれません。
バックホームに備えてレフトも前進守備をするのが通例です。
レフトの役割と特徴
レフトは、ライトやセンターとはまた少し違う特性を持った守備位置でもあります。
- 右バッターの強い打球が多い
- 左バッターの切れていく打球が多い
- サードやショートの打球処理のカバー
- 三塁牽制や三塁への送球のカバー
- 二塁牽制や二塁への送球のカバー
- センターフライやセンターライナーが行ったときのカバー
打席で打球の質が違う
レフト守備の場合、右打者なのか左打者なのかによって打球の質が全く異なります。
右バッターが引っ張った打球は、比較的真っすぐ伸びてくることが多いです。
しかし左バッターがレフト線に流し打った打球は、どんどんファールグラウンド側に切れていきます。
そのため、高いフライだった場合には落下地点の目測に注意しなければなりません。
逆に切れることを意識しすぎると、フライの落下地点を追い越してしまうこともよくあります。
カバーリングが重要
打球処理以外では、内野手のプレーに対するカバーリングが主な役割になります。
実際に自分で打球を処理する機会よりも、カバーリングに走る回数の方が圧倒的に多くなるでしょう。
例えばショートゴロやサードゴロが飛んできた場合に、トンネルなどのエラーに備えてしっかり前に詰めてカバーしておきます。
2塁ベースや3塁ベースへの内野からの送球に関しても、後ろに回ってカバーしていくことが重要です。
また、ランナー1塁で左中間にヒットが飛んできた場合、なるべくならセンターが捕った方が送球の都合がよくなります。
レフトが左中間深くまで追ってキャッチすると、そこから反転してサードに投げなければなりません。
際どいエリアであれば、センターに任せてしまうのも戦略のうちです。
レフトに適した能力とは?
外野手の中でも足の速い選手や肩の強い選手は、やはりセンターやライトに配置されることが多くなります。
レフトに求められる能力とは、一体どういったものなのでしょうか?
- 捕球の確実性
- 送球の安定性
- バッティングでの貢献
レフトの選手が広い守備範囲を持っていれば、もちろんチームにとってはかなり心強いです。
しかし、全ての選手が俊足で強肩を併せ持っているわけではありません。
レフトの選手に求められるのは、ずば抜けて広い守備範囲でなくとも、確実に取れるアウトをしっかりものにする能力です。
平凡なフライをしっかり捕り、セカンドやサード、中継手まで確実に投げ返せるコントロールがあれば守備は十分でしょう。
ピッチャーにとっては、ファインプレーで盛り立てることも嬉しいですが、打ち取った打球をエラーせずにしっかりアウトにしてもらうことの方が大切なのです。
そして何より、レフトの選手にはバッティング面での貢献が求められます。
プロ野球でも、3番4番5番というクリーンナップを打つような選手はレフトを守っていることも多いです。
守備での余計な負担を極力減らし、打撃に集中してもらうという意図もあるわけですね。
ディフェンス面を疎かにしていいというわけでは決してありませんが、守備よりも攻撃でチームに貢献してくれることを期待されているはずです。
レフトとライトの違い
レフトとライトは、よく同じようなポジションだと思われがちです。
しかし実際には、レフトとライトはその特徴や適した人材が全く異なります。
- サードまでの距離
- カバーの重要度
- ライン際の打球
特にこの3点については、ライトとレフトの大きな相違点です。
まず違うのは、レフトが3塁ベースまでの距離が近く、ライトは3塁ベースまでの距離が最も遠いという点でしょう。
例えばランナー1塁でレフト前ヒットを打たれた場合、そこから1塁ランナーが一気に3塁を陥れるのは難しいです。
しかしライト前ヒットだった場合、右翼手の肩の強さによっては、悠々と3塁を陥れられる可能性があります。
このあたりのリスクがレフトとライトで大きく違うポイントです。
反対に、カバーリングについてはレフトの方が責任が大きくなります。
レフトの場合、カバーするのは2塁や3塁への送球時です。
もしカバーが遅れた場合、即座に失点に繋がります。
ライトの場合は、ファーストベースへの送球カバーがメインなので、カバーが遅れてもチャンスを作られるまでに留まるのです。
いずれにせよカバーリングは重要ですが、より致命的なのはレフトのカバーの遅れということになりますね。
そして、ライン際の打球処理に関しては相手バッターの打席によって左右されます。
レフトの場合は、左打者が流し打った打球。
ライトの場合は、右打者が流し打った打球がファール方向に切れて飛んでいくので追い方に気を付けた方が良いでしょう。
レフトを守る野球選手
主にレフトを守る野球選手には、どのような方々がいらっしゃるのでしょうか?
2020年シーズンのセリーグで、主にレフトで出場している選手をまとめてみました。
巨人・ウィーラー
2020年シーズン途中に、東北楽天ゴールデンイーグルスから読売ジャイアンツにトレード移籍したウィーラー選手です。
センターが丸、ライトが松原選手と俊足&強肩を兼ね備えた選手であることを考えると、レフトのウィーラー選手の個性が目立ちます。
守備も決して下手な選手ではありませんが、どちらかというと打撃に比重を置いた選手であることは明らかです。
DeNA・佐野恵太
2019年オフに、それまで不動の4番打者だった筒香選手がメジャーリーグ(タンパベイレイズ)に移籍したことに伴い、4番に大抜擢された佐野選手。
やはり守備での飛びぬけた能力というよりも、首位打者を争うそのバッティング技術を買われての起用です。
阪神・サンズ
まさにプロ野球、セリーグのレフトというべきサンズ選手。
守備よりもバッティングでの大きな貢献を期待されています。
助っ人外国人選手として、ホームランや打点を量産することが役目です。
広島・ピレラ
メジャーリーグでの試合出場経験もあるピレラ選手は、2020年の広島東洋カープでレフトを守ることが多い選手でした。
決して鈍足で守備が緩慢というわけではありませんが、やはり他の外野手(西川選手や鈴木誠也選手)と比べると、打撃重視の選手であることがわかります。
中日・アルモンテ
中日のアルモンテ選手は、守備の上手さで起用されている選手ではありません。
それよりも、爆発的な攻撃力を期待してのスタメン起用です。
センターを守る大島選手が俊足と堅守を兼ね備えていますから、その分レフトには打撃重視の選手を置くことが出来ますね。
ヤクルト・青木宣親
日本でシーズン200安打を記録したこともあり、メジャーリーグを経て再びヤクルトスワローズに帰ってきた青木選手です。
この並びの中では、俊足と堅守を兼ね備えた選手なので少し異質かもしれません。
しかし30代後半という年齢も考え、守備の負担を少しでも減らすという意図が見える起用でもありますね。
決して衰えていないバッティング技術を活かすために、レフトでの起用なのでしょう。
レフト守備が上手くなるコツ
レフトの守備は、意外と難しい打球も飛んできます。
少しでも上達させるには、どのようなコツを押さえればいいのでしょうか。
- 横を抜ける打球は後ろから回り込む
- フライは切れていくことを見越して下がりすぎない
正面の打球などはそのまま確実にキャッチするとして、レフトで難しいのは特に3塁線側に飛んだ打球です。
低いライナーやゴロでレフト線に飛んできた場合は、一直線にラインの方に走ってはいけません。
自分の脚よりも打球の方が速いですから、一瞬で横を抜かれてしまいます。
そうではなく、少し後ろに膨らんで回り込むように押さえれば、ランナーの進塁は防げるでしょう。
また、左バッターのフライはファール側に流れていきます。
後ろに下がりすぎると、かえって前に落とすことになるので、下がりすぎないように注意です。
後はレフトで何度もノックなどで打球処理を経験し、場数を踏んでいくことが最も成長する方法になります。
まとめ:レフトはバッティングが重要
レフトは他のポジションに比べたら、守備の負担は少し少ないポジションだと言えます。
しかしその分、打撃での期待は他のポジションの選手よりも高いです。
イージーな打球は確実に処理できるだけの守備能力は持っておき、人よりも秀でた打撃力を身に着けなければレフトでのレギュラーは取れません。
中軸を打つつもりで、しっかり練習しておきましょう。