ジャイロボールとは、かつてメジャーリーグのボストンレッドソックス時代の松坂大輔投手が、投げているのではないかと噂されていたボールです。
その他、アニメや漫画だ大人気の「MAJOR」の中でも、主人公の茂野吾郎がジャイロボールを投げていました。
ジャイロボールを狙って投げることは難しいですが、意図的にジャイロボールを投げられたら非常に強力です。
今回は、ジャイロボールの投げ方や、ジャイロボールの練習方法などについて紹介していきます。
ジャイロボールとは
ジャイロボールとは、「空気抵抗をほとんど受けないストレート」のことです。
通常のストレートは手首のスナップを使って、リリース時にボールに強烈なバックスピンをかけます。
これによって、マグヌス効果という空気の流れによる揚力を発生させ、ノビのある直球になるのです。
対してジャイロボールは、回転の軸が違います。
ジャイロボールは直進方向に対して風車のように回転しながら、進んでいきます。
ピストルから発射された弾丸のような回転方向で、回転の軸が直進方向に向いているわけです。
通常のバックスピンのストレートの場合は、揚力が発生しますが縫い目の回転により空気抵抗も受けます。
一方でジャイロボールは進行方向に対してボールの面が一定なので、ボールに加わる空気抵抗が少ないわけです。
そのため、ピッチャーの手から離れた直後の「初速」とキャッチャーミットに届く「終速」の差がほとんど無いことが特徴です。
ただ、ジャイロボールの回転軸で投球するのはかなり難易度が高いため、狙ってジャイロボールを投げているピッチャーは少ないと言えます。
ジャイロボールの握り方
ジャイロボールの握り方は、実はストレートとほぼ同じです。
- ストレートと同じように握る
- 回転軸にしたい面に指をかける
- 人差し指も中指も、親指も縫い目にかける
- ボールを浅めに握る
基本的にはストレートと同じように握ります。
ジャイロボールの握りにコツがあるとすれば、回転軸としたい面に指をかけるということです。
フォーシームジャイロにして、とにかくノビや球威のあるボールにしたい場合は、縫い目が狭くなっているところに人差し指と中指をかけます。
ツーシームジャイロにして、ノビと下方向への落ちる変化を両立させたいという方は、縫い目が広くなっている部分に人差し指と中指をかけます。
さらに、親指も縫い目にかけられると、リリースの時にジャイロ回転をかけやすいです。
このままではただのストレートと同じになってしまいますが、ジャイロボールになる秘密はそのリリースの仕方や投げ方にあります。
ジャイロボールの投げ方
ジャイロボールの最も理想的な投げ方は、「ダブルスピン投法」と呼ばれている投げ方です。
- 足を上げたときに、軸足から腰を捻って力を溜める
- 軸足の捻りが逃げないように、足を前に踏み出す
- 踏み出した足が着く瞬間に、利き腕が前に動き出す
- 軸足から腰の捻りによって、勝手に腕が前に出てくるイメージ
- 腕の振りを強く
- 中指、人差し指の順番でボールに回転を与えていく
文章にすると少し難しいかもしれませんが、「腰と軸足のスピン」「腕の振りによるスピン」という二つのスピンによってボールを放つ投球フォームです。
普通のストレートは腰の回転だけでなく、重心が前方に移動する力によって投げられます。
ジャイロボールを投げる場合は重心の前方移動だけでなく、そこに身体の回転が加わるのです。
軸足から腰の回転によって、勝手に腕に回転が加わるようなイメージでしょうか。
正直言って、難しいです。
ジャイロボールをリリースする瞬間には、中指から人差し指という順番でボールから離れつつ強い回転を与えます。
スライダーを投げるリリースに近い状態ですね。
かなり練習が必要なので、ジャイロボールに近づくように投げ込みやシャドーピッチングを取り入れていきましょう。
ジャイロボールを投げやすいフォーム
前述のように、ジャイロボールで重要なのは握り方よりも投げ方です。
そのため、ジャイロボールを投げやすい投球フォームというものが存在しています。
- サイドスロー
- アンダースロー
ジャイロボールを投げるためにはダブルスピン投法だとご紹介しました。
身体全体に捻りを加えるようなフォームが適しているわけです。
そのポイントからいくと、サイドスローやアンダースローは、そもそも腰の捻りによってボールに勢いをプラスする投球フォームになります。
通常のオーバースローやスリークォーターと比べると、ジャイロボールも投げやすいわけです。
特にアンダースローの場合、シュートのつもりで投げたボールがジャイロボールになることもあります。
このジャイロボールの回転をしっかり意図的に投げられれば、下から浮き上がる軌道でかなりノビのあるジャイロボールが投げられるでしょう。
ジャイロボールの練習方法
ジャイロボールはかなり特殊な変化球になるので、練習方法にも工夫が必要です。
- ボールに色を付ける
- 足を上げて静止する
ジャイロボールが実際に行っているかどうかは、投げた本人や横から見ていてもなかなかわかりにくいものです。
そこで、ボールに色を付けて回転を把握しやすくすると良いでしょう。
ペンを使い、縫い目に目立つ色を塗るか、ボールの半分を別の色で塗りつぶすのがわかりやすいです。
思い切ってボールの半分をペンで塗ってしまえば、しっかりジャイロボールが投げられたときには一色しか見えなくなります。
それを基準にして、ジャイロボールの投げ方にどこまで近づけているのか確認することができますよね。
また、投球フォームの中で、軸足の安定が非常に重要になります。
足を上げても軸がブレないようにすることで、回転をかけやすくするのです。
そこで有効なのが、足を上げたところで何秒か静止する投球練習方法になります。
一連の投球をそのまま流して行うのではなく、あえて足を最も高く上げた状態で、5秒程度静止してからリリースまでの動作に入るのです。
足を上げた状態で身体を安定させて立つことが出来れば、軸足から腰の回転が使いやすくなります。
そうすることでダブルスピン投法も再現しやすくなり、ジャイロボールを投げられる確率も高まるのです。
野球初心者の方がジャイロボールを投げられる!?
実は、野球を始めたばかりの小学生の方が、ジャイロボールを投げられるという事実があります。
成長して中学生、高校生と野球を続けていくうちに、ボールの投げ方を理論的に教わるようになり、みんなキレイな回転のバックスピンのストレートを投げるようになるからです。
野球を始めたばかりの小学生は、ダブルスピン投法なんて呼ばずに、無意識のうちに身体の回転を使って遠くに速いボールを投げようとしています。
その投げ方が実はジャイロボールにとって最も理想的なフォームであり、理にかなっているのです。
ですから、肘や肩の故障リスクが高い投げ方でなければ、大人が矯正さえしなければ自然とジャイロボーラーになってゆく可能性はあります。
大人になってからジャイロボールの回転を習得するのはとても難しいですが、子供のころからの投げやすい投げ方でケガのリスクが無ければ、そのまま大きくなった方が良いという見方も出来ますね。
これは同時に、ジャイロボールを投げることが決して不可能な動作ではないということの証明にもなります。
ジャイロボールの投げ方をしっかり練習して、ボールの回転軸を操れるようになりましょう!
ジャイロボールの種類
ジャイロボールは単なるストレートとは質が少し違い、いくつか種類が存在しています。
簡単なストレートとは違い、微妙に変化しながら進んでいくジャイロボールもあるのです。
フォーシームジャイロ
フォーシームジャイロは、ジャイロ回転の軸となる面が、縫い目が狭くなっている部分です。
ボールの縫い目が狭くなっている面を正面にしながらジャイロ回転して進んでいくと、最も空気抵抗が少ない状態になります。
空気抵抗が少ないので、初速と終速の球速差が最も小さくなり、体感速度は早くなるのです。
重力があるので若干落ちていきますが、非常に伸びのある球となるでしょう。
通常のストレートに目が慣れているバッターばかりなので、フォーシームジャイロを目にしたときには、加速しながら向かってくるように見えるかもしれません。
ツーシームジャイロ
ツーシームジャイロは、ジャイロ回転の面となる部分が、縫い目の広くなっている部分となります。
ジャイロ回転なので普通のストレートより空気抵抗が少ないですが、フォーシームジャイロほどではありません。
フォーシームジャイロの方が重力に引っ張られて沈む力が弱く、ツーシームジャイロの方が落ちる幅が大きくなります。
そのため、ツーシームジャイロは、ストレートよりノビのあるボールでありながら縦方向に落ちる変化も併せ持っていると言えるでしょう。
ジャイロフォーク
ジャイロフォークは、通常のフォークボールの握りでジャイロ回転を与えたボールになります。
通常のフォークは若干ですがシュート方向に滑りながら落ちることが多いです。
しかしジャイロフォークの場合は、ほぼ真下に落ちる形となります。
フォークは通常回転数を抑えて空気抵抗をあえて受けさせることによって落ちるわけですが、ジャイロフォークの場合も同様です。
フォーシームやツーシームほどの回転数は与えず、なおかつフォークボールの握り方で投げるので、よりストレートに近い軌道から急激に真下に落とすことが出来ます。
まとめ:ジャイロボールの投げ方とフォームに挑戦してみよう
ジャイロボールを意識的に投げることが出来れば、時に「魔球」と称されるくらい強力なボールになります。
空気抵抗が少ない分球威も上がりますし、回転軸を変えれば急激なフォークも投げられるようになるのです。
漫画や一部の超一流選手だけのものだと思われていたジャイロボールが、練習によって覚えられる可能性があるわけですね。
投球フォームそのものから変えなければならないので時間がかかりますが、その分投げられたときの見返りは大きいので、ぜひジャイロボール習得にチャレンジしてみてくださいね。
ジャイロボールが投げられれば、その他にも回転の仕方が近い、スライダーなど他の球種も投げやすくなります。
ぜひ下の記事も参考にして、投げ方や握り方を確認してみてください。